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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」⑤ 前へ 戻る 次へ 590 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/13(木) 22 17 56.05 ID HwrfW5Sjo 「お、お邪魔します……」 「うん……」 時間は、夜。ちょっと長居すればすぐに日付をまたぐような時間帯だった。 だいたいの学生が部屋に収まり食事なり風呂なりしている頃に、 上条はそっと女子寮に忍び込んでいた。場所はもちろん、吹寄の部屋。 早々に空いたドアから体を滑り込ませ、人目を避ける。 「その、こんな時間の呼び出しでごめんなさい」 「それはまあ、いいんだけど」 なんとなく落ち着かない。 そりゃそうだ。恋愛関係にある男女が、こんな夜に、ベッドのある一室で二人っきりなのだ。 しかも訪いの目的が、彼女の胸を吸うためだともなればそりゃあ緊張だってするのである。 「メールでも言ったけど、やっぱ明日の朝まではもたない気がして」 「そ、そうか」 昼に学校でしてから、夕方にもう一度吸っていたのだが、どうやら今日は多い日らしかった。 夕方に交換したばかりのアドレスから、また吸って欲しいとメールが来たときは、 だんだん慣れてきた上条でも思わずどきりとしたものだった。 「あのさ、と、当麻」 「ん?」 「お茶とか、飲まない?」 「あ、ああ。よかったらもらうけど」 「わかった。じゃあ淹れるわね」 変に呼びなれない感じで、吹寄が名前を呼んだ。 お茶はそりゃいただけるのならいただくが、 一体どういう風の吹き回しなのだろうか。 「制理?」 「え?」 「なんかぎごちないけど、どうかしたのか?」 「……えっと」 目を天井の方に泳がせながら、吹寄がやかんを手にする。 おもてなし用なのだろうか、あまり減っていない紅茶のティーバッグを一つ取り出した。 「あのさ、何度も貴方に付き合ってもらってるけど」 「うん」 「ゆっくり話すような時間、とったことなかったなって」 「そういやそうだな」 毎度、胸を吸うのがまずありきで、それ以外の時間なんてとったことなかった。 「ちょっとそれを不満に思ったんだけど、あたしからお願いしたことだから、 貴方に文句を言うのも筋違いかなって思って」 591 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/13(木) 22 18 22.40 ID HwrfW5Sjo つまりこのお茶の時間は、胸を吸うこと以外に取りたい、二人の時間だということらしかった。 考えてみれば、こんなに可愛い女の子を彼女にしたというのに、デートのひとつもしたことがなかった。 まあ、まだ付き合って二日目だが。 「ごめんな、そういう気遣い、できなくて」 「べ、別にいいわよ。バタバタしてたし」 「落ち着いたら、デートしようぜ」 「えっ?」 なぜか、驚かれた。 「……彼氏彼女なら、当然のことだと思うんですが」 「そ、それはそうだけど。貴方の口からそんなこと聞いたから驚いただけ」 一体自分はどのような男だと思われていたのだろうか。 視線での追求を避けるように吹寄は台所へ逃げて、やかんに水を汲んだ。 静寂が、部屋に広がる。鈍い冷蔵庫の駆動音が耳についた。 「不思議ね。二人っきりで、こんなことになるって」 「まあ、そうだよな。制理と話すっていったら、大概怒られてた気がするし」 「あ、貴方が悪いんでしょう。学校に来なかったり、女子と変なことになったり!」 「最後のは否定するぞ! そんなことあったわけねぇ」 「嘘!」 「変なことになってたら、制理とこんなことになる前に上条さんに彼女がいたことになるんですが」 「……私がはじめての彼女?」 「うん」 「本当に?」 「嘘ついてどうするんだ、そんなの」 「そっか」 カップ二つぶんの水だから、あっという間にシュシュと音を立て始めた。 さっとカップを温めて、沸かしたてのお湯を注ぎ入れる。 「簡単なのでごめんね」 「いや、自分じゃ紅茶なんて淹れないし」 「実を言うとブレックファスト用のブレンドなんだけどね。うち、これしかなくて」 「コーヒーとか飲まないのか?」 「あるけど、夜にコーヒーは飲まないもの。それに普段は、買ってきた牛乳かジュースが多いしね」 「一人暮らしならそんなもんだよな」 ティーバッグの入ったマグを、吹寄がそっと机に置いた。 そして自然な感じで、上条の隣に腰掛けた。 二人で、ベッドにもたれかかりながら、肩をくっつけ合う。 592 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/13(木) 22 19 13.01 ID HwrfW5Sjo 「ティーバッグだから一分もあればできるから」 「ああ」 「出すぎで渋いのが嫌なら、早めに出してね」 「わかった」 「砂糖とミルクは、いるならこれ使って。気の利いたお茶菓子はないけど」 「いいって。ありがとな、気を使ってくれて」 「うん。こんな時間に来てくれてるのに、お礼としてはささやかすぎるけど」 「なんだよ、水臭いぞそういうの」 「そうかな」 「……まあでも、実はスゲー嬉しい」 「本当?」 「ああ。なんか、気遣ってもらえるっていいよな」 「うん。あたしもそう思ってる。ありがとね、すぐ来てくれて」 そっと吹寄が上条の腕に自分の頭をあずけた。 一分だけの短い待ち時間を、そうやって過ごす。 「静かだなー」 「そうね。やっぱり、朝や昼とは違うわね」 「学校でって、なんだかんだで落ち着かないよな」 「そりゃ当たり前でしょう。しちゃいけないことをしているんだもの」 砂糖とミルクポーションを持って吹寄が入れるかと尋ねた。 ミルクだけと答えると、上条のぶんまで茶葉を取り除いてミルクを注いでくれた。 セットでいくつか持っているだけなのだろうが、ふたりでお揃いのマグにお茶をいれ、 静かに飲むこの時間がなんだか嬉しかった。 ふうふうと、吹寄がカップの表面を吹く音がする。 「制理がこんなに、可愛いって知らなかった。」 「も、もう。恥ずかしいでしょうが。今はもうちょっと落ち着いた話をしなさいよ」 「わかった。じゃあ、キスしよう」 「ちょっと。全然落ち着かない話じゃない」 「そうじゃなくて、落ち着いたキスしようぜ」 「え?」 不意打ちはしない。急ぎもしない。そういう気分だった。 吹寄を待たせたまま、紅茶を口に含む。 ちょうどいい加減の風合いだった。 朝用だからかどこかスパイシーな香りが鼻に抜けるのを感じながら、 上条は吹寄の髪を撫でた。 そして、見つめ合う。ちゃんと、吹寄の準備はできていた。 「ん……」 音も立てず、かるく唇の触れ合うキスをした。 「どう?」 「うん。その、こういうのは嫌じゃない、わね」 ふう、と軽く息をついて吹寄が体に入っていた力を抜いた。 自分の前では肩肘を貼らずに羽を伸ばしてくれるのだと解って、嬉しくなる。 「俺といて、そうやって体を楽にしてくれるの、嬉しいよ」 「え? もう、そういうエッチなこと考えるのやめなさいよね」 「そういう変な意味じゃないって。好きな女の子が、自分と居る時に自然体で居てくれるのが嬉しいって話」 「当麻は、あたしといて肩肘張らない?」 「張ってるように見えるか?」 「ううん。いつもどおり」 「そういうこった」 目線を交わしあって、二人でクスリと笑った。 上条がそっと手を握ると、自然な感じで吹寄も握り返してくれた。 「紅茶、どうかな?」 「美味いよ」 「ありがとう」 それだけ言って吹寄は言葉を重ねるのをやめた。 嫌な沈黙じゃ、なかった。 632 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/12(土) 00 56 52.18 ID YXjYWgT/o カップ一杯の紅茶がお腹の中に収まるまで、たわいもない話を二人で交わす。 「……まだ、あの宿題やってないの?」 「ごめんなさい」 「宿題なんて貯めておくほどやりたくなくなるの、わかってるでしょう」 「いやほんと、そのとおりなんですけどね。上条さんにも、 できない理由というか突発的自体というのがありまして」 「……」 「制理?」 急に黙り込んだ吹寄を怪訝に思って、上条はその表情をのぞき込む。 「ごめん。可愛くないね」 「はい?」 「自分でもわかってるんだけどさ」 「急になんだよ」 「あたしって説教臭いな、って」 「……あー」 言われてみれば、今のは付き合う前の同じノリだった。 「まあ、これがあたしの性分だし。これでいいと思ってるところもあるんだけど。 やっぱり、貴方の前でもずっとこうっていうのはね」 「嫌なのか?」 「当麻こそ、彼女がこんなじゃ嫌でしょ?」 「んー、でもこれが普通の制理だからなあ」 「そう思われるのが嫌なの」 「なんで?」 「なんで、って」 吹寄が言いよどんで、咎めるように上条を見た。 すっと体を離し、自分と上条の分のマグを手にとって、立ち上がった。 そして振り向きざまに、一言こぼした。 「貴方にくらい可愛いって思われたい、って思っちゃ駄目?」 その拗ねたような響きが、上条をクラっとさせた。 こんな可愛いところが、吹寄にあったのか。 「制理」 「……なによ。付いてこなくていいわよ」 台所の流しに立った吹寄の後ろに、そっと立つ。 633 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/12(土) 00 57 38.37 ID YXjYWgT/o 「今の、めちゃくちゃ可愛かった」 「えっ?」 「ツンデレ委員長ってのは、悪くないもんだな」 「っ?! バ、バカ! 変なステレオタイプで呼ばないで!」 「ごめん。そういうつもりじゃなかったんだけど。 とにかく、今の吹寄はすんげえ可愛かった」 「……本当に?」 「嘘なんてついてないって。ほら」 「あっ」 マグを洗う腕を邪魔しないように、吹寄の胴に上条は腕を回した。 そしてぎゅっと、後ろから抱きしめる。 「もう。変なところ触らないでよ」 「こう抱きしめたら当たるのは仕方ないだろ。それに、初めて触ったわけじゃないし」 「それはそうだけど」 「時々素直になる制理が、可愛いよ」 「……どこでそういう褒め方、覚えたの?」 「お、覚えたって。本音で言ってるだけだって。 それとも何か。もっと馬鹿にするようなこと言った方が嬉しいか?」 「それは、やっぱり褒めてもらえたほうが嬉しいけれど」 きゅっと、水道のコックをひねって吹寄が水を止めた。 洗ったマグを近くのかごに置いて、手をタオルで拭いた。 その吹寄の肩を押して、上条は自分の方を振り向かせた。 「制理」 「……当麻。そ、その」 「ん?」 「大好き」 上条は返事をしなかった。 頑張って素直になろうとした吹寄が可愛すぎて、 言葉で褒めるよりキスを早くしたかった。 「んっ……! ん、ん」 「制理。俺も好きだよ」 「うん。嬉しい。その、二人の時は、できるだけ可愛くなる、から」 「ありがとな、制理。俺もできるだけ優しくする」 「うん……!」 今に戻る時間も惜しんで、上条は、吹寄に口付けを続けていく。 きゅっと上条に回された吹寄の腕が、刺激を与える度にぴくんと反応するのが楽しかった。 634 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/12(土) 00 59 05.37 ID YXjYWgT/o 「ん、ふ、はぁ……」 「制理」 「え……?」 キスをしながら移動して、ベッドの傍に二人で立つ。 吹寄の目は、もうとろんとしていた。 「このまま、するか?」 「あ、うん。えっと……」 自然に誘えたつもりだったのだが、吹寄が、戸惑ったような顔をした。 ちょっと自信があっただけに上条は心中がっくりとなった。 「ごめん。嫌ならちゃんと待つ」 「あっ、ごめんなさい。そういうつもりじゃなかったんだけれど」 吹寄は、慰撫するように上条の胸に顔をうずめた。 「いつも、そういう流れでしちゃうでしょう?」 「そういう、って?」 「もう。その、エッチな流れっていうか」 「そうかな」 「そうよ。いっつもあたし、流されるみたいで」 「嫌だったか?」 「違う。そういうのじゃないの。だけど、こんな夜に二人でそういうことになったらって」 言われてみれば、確かに危険なシチュエーションだ。 歯止めが効かない場合、行き着くところまで行ってしまう。 特に女の子の吹寄からしたら、不安かもしれない。 「じゃあ一回、落ち着いてからにするか?」 「うん。ごめんね。それでもいい?」 「制理が安心できる方法でいこうぜ。それが一番いい」 「ありがとう。……彼氏になってもらうまで知らなかったけど、優しくしてくれて、嬉しい」 「可愛い彼女にだからな」 「あは」 照れながら、吹寄は嬉しそうに笑った。 「しかし、どうやって落ち着くか」 「手を出さなかったら、大丈夫よ」 「え?」 「その。当麻があたしに変なことをしなければいいだけなの」 「……要は悪いのは俺だと」 「そ、そうでしょ。ほら、横になって」 「……え?」 635 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/12(土) 01 00 21.37 ID YXjYWgT/o 吹寄が指さしたのはベッドだった。 どう考えても、そこは落ち着く場所ではない。 「あ、貴方が変なことしなければいいの。 手であたしに触っちゃだめ。吸うときも、変な吸い方はだめ」 「変な吸い方ってどんなのですか吹寄先生」 「そ、その。噛んだりとか、舌で舐めたりとか」 「純粋に吸えと」 「だからそう言っているの! ほら、さっさと寝る!」 「お、おう」 いわゆる吹寄らしい手つきで、子犬の首でもつまむように上条の頭をベッドに押し付けた。 そのベッドから吹寄の匂いがして、ひどく上条はドキドキした。 「な、なによ。静かになって」 「いやだって、これ、制理のいつも寝てるベッドだろ」 「っ?! ちょ、ちょっと匂い嗅がないで」 「いい匂いがする」 「そんなわけないでしょう! その、もう一週間以上はシーツ洗ってないから……」 「いや、それくらいは普通だろ。もう寒いし」 「でも」 「制理の匂い、好きだよ」 「……」 黙ったまま、吹寄が上条の頭のそばに腰掛けた。 ぽんぽんと太ももを叩いたので、上条は体全体をベッドに乗せて、吹寄の太ももを枕にした。 「あたしも」 「ん?」 「当麻の匂い嗅ぐと、落ち着くから」 「お、おう」 「恥ずかしいから電気消すけど、変なことはしないでね」 「制理が嫌なことは絶対しない。約束する」 「うん」 部屋の真ん中の証明を吹寄は落として、ベッドサイドのライトをつけた。 それだけで、場が一気に夜めいた雰囲気になる。 「あんまり見ないで」 「脱いでるところ、見たいんだよ」 「駄目」 「駄目っていっても見るからな」 「嫌なことはしないっていったじゃない」 「見られるの、制理は嫌じゃないだろ?」 「なんでそう思うのよ」 「だって、死ぬほど綺麗な体だから」 「馬鹿! そんなわけないのに」 だが、吹寄はそれ以上抗議をしなかった。 部屋着のトレーナーから腕を引き抜き、そっと頭から脱いでいく。 上条は、その光景を不思議な高揚感とともに見守った。 服の下は、ブラだけだった。豊かな胸のラインを電灯が照らしている。 吹寄が、脱いで乱れた髪をなおした。 そして、上条のすぐ目の前、ブラのカップの部分に両手を当てて、縦にずらすように動かした。 ぷつんと軽い音がしてすぐ、拘束を解かれた乳房が重たげに揺れた。 「すげえ……」 「本当に、エッチなんだから」 怒るような目をしながら、吹寄はカップに当てていた手を外し、 肩からそっと、ブラを外した。 見慣れたはずではあるけれど、上条は見とれてしまった。 ツンと尖った胸の先端と、そして胸全体が描くその曲線に。 646 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 01 09.77 ID 3R8WP1Kmo 「制理。それじゃ」 「あ、待って」 手を伸ばそうとしたら、吹寄に止められた。 「え、なんで?」 「そ、その。触ったらまたいつもみたいに暴走するんじゃないかと思って」 「暴走って。したことないだろ?」 「どの口でそんなこと言うのよ」 吹寄が、膝上から自分を見つめる上条の髪を撫でた。 怒っているのかと思ったら、表情は柔らかかった。 「制理」 「なあに?」 普段よりずっと柔らかいその声に内心で驚きながら、 上条は吹寄に可愛がられるままになる。 吹寄は、自分の子供でも可愛がるかのように、上条の髪を撫でたり、 頬や耳に触れて、形を指でなぞった。 「なんか変な気分だ」」 「うん。実はあたしも、変に落ち着いてて不思議」 「吸わせてくれよ」 「うん。いいよ」 吹寄が柔らかく笑った。そして、ぐっと自分の体をかがめて、 体全体で膝上の上条の頭を包み込むようにした。 必然と、吹寄の乳房が上条の顔のすぐ上にあてがわれることになる。 上条は口を大きく開けて、その乳首を、たっぷりと口に含んだ。 「ん――」 咳ととれなくないような、かすかな声を吹寄が漏らした。 口の中に入ってきた吹寄のあたたかみを感じて、上条は唾液を分泌させる。 それを乳首の周りに塗りたくるように舌を動かしてから、 自分の口の内側と吹寄の乳房の間に空気が入らないように、しっかりと吸い付いた。 「あ、は――」 吹寄の声は、今までより静かで、ずっと深い感じがした。 そっと吸い付いたせいか、唇に吹寄の胸の柔らかさを感じる。 よく母乳の出る吸い方というのにも慣れてきたので、 上手く唇で甘噛みすると、口の中に吹寄の味が広がった。 「……ふふ」 「んー?」 647 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 01 41.54 ID 3R8WP1Kmo 吹寄が、自分を見下ろして笑っていた。 クスクスという感じの笑いで、活動的な吹寄には珍しい。 そして自分が笑われている理由がなんとなくわかるのが気恥ずかしかった。 「当麻が赤ちゃんみたい。気づいてるのかしら。すっごい甘えた表情、してるの」 「んー」 自覚はないでもない。 女の子にこうやって撫でてもらっておっぱいを与えられると、 記憶にすら残っていないようなずっと昔の条件反射がよみがえるのだ。 言い訳をするのも面倒に思いながら、ゆるゆると絶え間なく口の中に溢れてくる母乳を嚥下する。 そんな上条を、吹寄は幸せそうに見つめる。 「こういう幸せは、ほんとは貴方じゃなくて、二人で赤ちゃん授かってからなのにね」 「……」 黙って、上条は吹寄を見つめた。吹寄はまた、なあにと首をかしげて微笑んだ。 ものすごく際どいことを言ったのに、吹寄には自覚がないらしかった。 上条に母乳を上げるのが幸せなのかとか、二人で赤ちゃんを授かるとか。 突っ込めばきっと赤くなってうろたえるだろう。 でもこの雰囲気を壊したくなくて、上条は追求しなかった。 黙って、吹寄のお腹に触った。 「ちょっと。変なところ触らないの」 「ん」 触っても、子宮の場所はわからなかった。当然だが。 いつか、吹寄を孕ませることがあるのだろうか。 好きな女の子に家族になって欲しいという気持ちを、上条は不意に抱いた。 「そろそろ、出なくなってきた?」 「ん。ああ」 「そっか。今日もありがとね」 「礼なんていいって。なあ、制理」 「ん?」 「好きだ」 「うん。あたしも」 「結婚してくれ」 「……いいよ。あたしは今年度中に結婚できるようになるから」 「あー」 冗談を真剣に返されると、困る。上条は結婚できる年までまだ間があった。 それに、働いてもいないのに結婚なんて、という感覚を上条は持っていた。 「大学、吹寄は行くのか?」 「え? うん。今のところはそうしようかなって。当麻は?」 「まだ高校一年で実感ないからなあ」 「そういうこと言ってると、すぐに慌てる時期が来ちゃうわよ」 「そりゃそうだけど」 648 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 02 12.63 ID 3R8WP1Kmo 真剣に考えなきゃな、と上条は思った。 吹寄とずっと一緒にいたいなら、結婚したいなら。 遊んでるだけじゃダメで、ちゃんと、社会の中で仕事をしなければならない。 ヴィジョンのない今のままをずっと続けることはできない。 「制理に愛想つかされないようにしないとな」 「そんなにあたし、薄情に見えるの?」 「そういう事を言ってるんじゃないって。 やっぱり、好きな子に結婚してくれって言うんだったら、ちゃんとしないと」 「そうね。でも、当麻はなんとかしちゃう気がする」 「え?」 「土御門とかと一緒にいるときは馬鹿ばっかりやってるけど、 大事なところとか、何とかしなきゃいけないことっていうのは、 当麻はわかってるような気がするから」 「買いかぶりすぎだろ」 「そうかな。頼もしく思ってちゃいけない?」 「過剰な欲求をされても答えられませんのことよ?」 「過剰かな」 「……頼ってもらえるくらいには、頑張るさ」 上条は体を起こして、吹寄にキスをした。 吹寄の腕が、首に絡まる。その腕を手でつかんで、上条は吹寄を押し倒した。 「制理」 「当麻」 見つめ合う。吹寄の瞳に不安の色はなかった。 「どこまでなら、していい?」 「最後までは、だめ」 「耳噛んでもいいか?」 「……一つ一つ聞くのも、だめ」 「なんで?」 「恥ずかしいから……」 「じゃあ、して欲しくないことやれたら、やめてって言ってくれ」 「うん」 「だめ、じゃやめないからな?」 「え?」 「制理はもっとして欲しいときにだめって言うだろ?」 「そ、そんなことない……!」 上条の視線を避けるように、吹寄がうつむく。 その顔をのぞき込むようにして上条はまたキスをした。 「ん……」 「愛してる。制理」 「あたしも、大好き」 「名前読んでくれよ」 「当麻……あ、ん。当麻ぁ」 649 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 02 41.70 ID 3R8WP1Kmo 名前を呼んでくれと言っておきながら、上条はそれを遮るようにキスをする。 その合間に切れ切れに名前を囁く吹寄の色っぽさを、耳で堪能する。 「……当麻?」 「ちょっと待ってな」 不意に体を離した上条を、寂しさを感じながら吹寄は見上げた。 薄手のセーターを、脱いでいるらしかった。 「ベッドで制理とくっつくと、ちょっと暑くてさ」 「……」 もぞもぞとセーターを脱ぎ捨て、おざなりにたたんで床に投げる。 下はTシャツらしかった。 上条は、吹寄が意味ありげな瞳で自分を見つめているのに気づいた。 言うのをためらっているような、そんな感じ。 「どうかしたか?」 「あの、さ……」 「制理?」 吹寄がシーツを引き寄せた。胸元が、それで隠れる。 口元位までを隠すようにしながら、おずおずと口を開いた。 「あたしだけ裸なの、恥ずかしい」 「……いつものことだろ?」 「い、いつもはたくしあげるだけで脱いでないじゃない」 「まあ、そうだけど。どうしたらいいんだ?」 服を着たいという意味なのだろうか、と内心で残念に思いながら上条は確認する。 しかし、吹寄が言いたいのはそういうことではなかった。 もっと、恥ずかしくて、大胆なこと。 「ねえ。当麻も、上、脱いで」 「――制理」 「だ、だって。あたしだけって、恥ずかしいじゃない」 「わかった」 上条は、シャツに手をかけて唐突に吹寄の気持ちに共感できた。 年頃の男子として、たしかに女子の前で半身を晒すというのは、気恥ずかしかった。 男の自分でこれなんだから、吹寄はもっとだろう。 意を決して、さっと上条はシャツを首から引き抜いた。 「あ……」 「な、なんだよ。あんま見るなよ」 「なんでよ。あたしの体、いっぱい見てるんだからあたしだって当麻の体、見てもいいでしょ」 「いやでも、なんか小っ恥ずかしいじゃん」 「あたしがどれだけ恥ずかしい思いしてると思ってるのよ」 「制理のは、綺麗だからいいんだ」 「理由になってないわよ。それに」 「え?」 「当麻だって、なんか、かっこいい」 「はい?」 650 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 03 44.04 ID 3R8WP1Kmo 特別鍛えているわけでもない体だ。 腹筋が割れてることもないし、胸板が厚いこともない。 貧乏食のおかげかすらっとしてはいるが、それは貧相という言葉とも相性が良かった。 「男の子なんだな、って」 「俺が女の子に見えたことがあったのか?」 「そうじゃなくて。やっぱり女子の体とは全然違うじゃない」 「当然だろ」 「……もう。茶化さないでよ」 「ごめん」 言いたいことはわからないでもなかった。 何度見ても、吹寄の体には惹きつけられる。 自分と違うからだろうか、その体のラインを見ただけで、落ち着かない気分になるのだ。 そういう気持ちと、一緒なのかもしれない。 「抱きしめていいか?」 「うん。来て……」 恥ずかしそうなのに、どこか期待しているのを感じさせる声だった。 上条の肩に吹寄の手が触れられる。その感触だけで頭がクラクラしてきた。 吹寄の手が首に回されるのと同時に、上条は、吹寄に覆いかぶさるようにして体全体をくっつけた。 「はあぁぁぁん!」 切なそうな吹寄の声が、部屋に響いた。 上条だって、その声が意味しているのと同じ気持ちで、心の中がいっぱいだった。 気持ちよくて、嬉しい。 「すげ……」 「当麻ぁ……ああ」 肌がひんやりしているのに、暖かい。 そして、腕だとか腰だとか、思ったよりも骨張ったところがあたって硬い感じがするのに、柔らかい。 不思議な二律背反。 体全体で女の子を抱く感覚というのは、とても不思議で、とても気持ちがいい。 手のひらを大きく広げて、吹寄の頭を撫で、背中をさする。 「はぁぁ、ああ」 ひどく安心したような、深い呼吸。 とろけるような目で、吹寄が上条を見上げた。 「凄いな」 「うん。……どうしよう、あたし、おかしくなりそう」 「なってもいいよ。ずっと抱きしめてるから」 「うん。お願い。離さないで……」 そのまま口付けをする。吹寄に積極さはなかった。舌もおざなりにしか差し出してくれない。 だけど、その理由もわかるから上条は気にならなかった。 体のどこかをなでる度に、吹寄が喘ぐように深い呼吸をするから。 上条の与える感触に、陶然としているのがありありとわかる仕草だった。 651 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 04 17.39 ID 3R8WP1Kmo 「どこを触って欲しい?」 「……ぇ?」 「どこを、触って欲しい?」 答えを、吹寄に強要する。 耳元で囁く声も快感のもとになるのか、吹寄が悶えるように首をうねらせた。 そして、目をつぶったまま恥ずかしそうに笑う。 「当麻の、好きなところに触って」 「どこでもいいのか?」 「だめなところは、だめっていうから」 「だめ、じゃ止まらないって行っただろ?」 「……でも」 「ん?」 「やめて、って言えないわよ」 「なんで?」 「怖いから、だめな場所はあるけど、やめてって言えない」 言葉が強すぎるのだ。やめてというのは。 それが吹寄の正直な気持ちだった。 だめ、なら言える。だけど、上条に止めてとは言えなかった。 触っていいかどうかは、上条に全部察して欲しかった。 それに、きっと、上条ならひどいことはしないと思う。 「あたしが嫌なことは、しない?」 「当たり前だ」 「じゃあ、何してもやめてって言わないから。優しく、して」 「……わかった」 「ありがと。とうま……あっ、あっ」 吹寄が言い終わるより先に、耳を甘噛みしてやった。 反応は顕著だ。体をくねらせるようにして、吹寄がはねた。 耳の複雑な形をなぞるように舌を這わせると、ぎゅっと吹寄が目をつぶった。 「はぁん!」 「気持ちいいか?」 「き、聞かないで」 「声、出てる」 「……わかってる、から。言わないでよ」 分かってたって、止められないのだ。 上条が耳を攻めるのをやめた。それが寂しくて、吹寄は上条を探す。 もちろん体はべったりくっついているのに、おかしなことだった。 「当麻……」 「制理?」 「あ、な、なんでもない」 「おねだりか?」 かあっと顔に血が登るのを吹寄は感じた。 完全に上条に見透かされていた。 652 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 00 04 54.31 ID 3R8WP1Kmo 「もっとしてください、は?」 「え……?」 「してほしいんだったら、ほら、おねだり」 「……できない、わよ」 「なんで?」 「だって」 「じゃあ、抱きしめるのも終わりな?」 「あっ、だめ、だめ」 すっと体を離しかけた上条を引き止めるように、腕をつかむ。 にっと笑った上条がとても意地悪く見えて、吹寄は切なくなった。 すぐに、もう一度抱きしめられた。だけどそれ以上のことを、上条はしてくれなくて。 「もっとしてください、は?」 「……馬鹿」 吹寄の、負けだった。もしかしたら、これからもずっと負け続けるのかもしれない。 上条と目が合う。だけど恥ずかしくて、目を見ては言えなかった。 「もっと、してください」 「ん。いい子だ」 同級生なのに。同い年の自分をお子様扱いするなんて。 だけど、嫌な気持ちは全然なかった。 こういう扱いをされることの恥ずかしさと倒錯感、そしてそれを受け入れそうな自分が怖いだけだった。 一度、受け入れてしまえばそれは全て、会快感館に変わる。 上条が、耳の裏を舐め上げた。 「ふぅん、んんん」 泣きそうなくらいの切ない声を聞いて、上条は自身の興奮を抑えきれなくなりそうだった。 このまま、全てを自分のものにしてしまいたい。 それに、こうやって時間をかけて吹寄の心と体を崩していけば、手に入れられるかもしれない。 抱きしめるという行為が、守ってあげるという意味合いだけじゃなくて、 征服してしまいたいという意味合いを含むものに、変わりつつあった。 「ん、あっ……!」 背中を撫でていた手を、上条は、そっと前に伸ばした。 ついさっきまで吸っていた豊かな胸に、上条は手のひらを押し当てた。 666 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 23 05 20.42 ID 3R8WP1Kmo 「ふあぁ、あっ、あ」 吹寄の胸は、大きい。手のひらには収まりきらない。 仰向けになった吹寄の胴の上で広がった乳房を、 手でまとめるように、あるいはすくい上げるように揉みしだく。 乳房に沈み込んだ指を一本ずつ別々に動かすと、 わずかに勃ち始めた乳首が、あちこちを向いた。 「制理のおっぱい、可愛いよな」 「んっ、へ、変なこと言わないの」 「舐めていいか?」 「……知らない」 上条は、わざとゆっくり吹寄の乳房に顔を近づけた。 吹寄の表情を見ると、眉をきゅっと引き寄せて、何かに耐えるような顔をしていた。 「すげえエッチな顔してる」 「馬鹿ぁ……。見ないで、お願い」 「それは無理な相談だな。感じてる顔、めちゃくちゃ可愛いから」 「やぁぁ……だめ。おかしくなる」 「なってくれよ」 ふう、と生暖かい息を乳房に吹きかけた。 むしゃぶりついてしまいたい衝動を抑えるのに、上条も必死だった。 「ひぁぁぁぁん!」 掠れるような声で、吹寄が鳴いた。 それに気をよくして上条は、固くなりきっていない乳首をちろりと舐める。 「ひゃん!」 ぴん、と吹寄の体がのけぞるように跳ねた。 上条はそのまま吸い付きたくなる気持ちを抑えて、じっと待つ。 「と、当麻……」 「舐めて欲しいか?」 「……」 吹寄がそっぽをむいた。だが、その直前にすこしだけ頷いた気がする。 とりあえずは、それで合格ということにする。 上条はもう一度乳房に顔を近づけた。 「あ、あ……」 「まだ舐めてないけど?」 「っ!!」 意地悪な上条の顔を見て、吹寄が信じられないという顔をした。 そして羞恥に唇をわななかせ、上条から顔を見られないように必死にどこか別のところに顔を向けた。 死ぬほど、恥ずかしかった。 しかし吹寄は、そう思いながら嫌ではないと思う自分の心に戸惑っていた。 意地悪されるのは、普通に考えたら嫌なことのはずなのに。 自分は今、ひどく期待をしている。 上条がどこかのタイミングで、たくさんの快感を与えてくれることを。 そして、それまでずっと、こうして焦らし続けてくれることを。 667 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 23 05 48.72 ID 3R8WP1Kmo 「ねえ、当麻」 理性と乖離した体が、自然と上条の名前を呼んだ。 それに反応するように上条の手が胸を這う。慎重に、乳首を避けて。 「あ……あ」 ほとんど声にならない声を、漏らしてしまう。 ほんの何センチか上条の指が先端に近づいただけで、体が期待をこめて反応してしまう。 「して、ほしいか?」 「……あ、う」 素直に、従順に答えてしまいそうな自分がいる。 だけどそんな自分をさらけ出すのははずかしい。 ……葛藤のはずなのに。葛藤していること自体が、もう快感だった。 「乳首を舐めてくださいって、言ってくれよ」 「……だめ」 「駄目じゃないだろ? 言わなきゃ、やめるぞ?」 「だめ……!」 「あれもこれも駄目か」 「……」 「じゃあもう、やめちまうか?」 「あ、だ、だめ!」 上条が体をすっと離そうとした。寂しい。 それだけで、条件反射で吹寄は上条の首に腕を絡めて、抱きとめた。 「舐めてください、は?」 「あ……なめ、て」 吹寄は、負けてしまった自分を自覚した。 耐えるのをやめて、今この瞬間、上条に溺れてしまった。 聞こえる最小限の声で、ちいさく、つぶやく。 「乳首を、舐めて、くだ、さ、っ?! はぁぁぁぁん! あっ! あぁぁ」 突然だった。不意打ちだった。完全に、この間を狙われていた。 従順になって、おねだりをしてしまったその瞬間。 吹寄が全てを言い終わる直前に、上条が乳首に吸い付いた。 「はぁん、はぁ、ん! ん! ん!」 上条が、乳首に吸い付いて、舌で乳首を転がしている。 だが吹寄にはもう細かいことはわからない。 どかんと、あるいはじゅわりと、体の奥から快感が吹き上げていて、 もう何がなんだかわからなかった。 もう五感が用をなさなくて、うねるような快感が体を痺れさせている。 その愛らしい吹寄の反応に、上条はひどく満足感を覚えていた。 まんまと成功した、という感じだった。 吹寄の体が急にぐにゃりとなって、ベッドの上で波打ちだした。 手が上条を求めるように動き、時折シーツの縒れをみつけてはぎゅっとつまむ。 そして太ももが、ぎゅっとこすり合わされるように動いた。 それは吹寄が、お腹のすぐ下に、何かを感じている証左のように思える。 668 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 23 06 35.39 ID 3R8WP1Kmo 「気持ちよかったか?」 舌が疲れてきたので、上条はそっと口を乳首から離した。 攻撃が止んだのを感じ取って、吹寄が荒い息を付きながら酸素を求めた。 上条の問いかけに、コクコクと首肯を返した。 「エッチなところも、可愛いな」 「エッチじゃ、ない」 「そんなことないだろ」 「当麻が……全部悪いの」 「俺のせいかよ」 「だって」 涙がでてきそうだった。理由は分からないけれど。 ひとりじゃ、絶対にこんなことになんてならないから。 「なあ制理」 「え?」 「太もも、こすり合わせてるけどさ」 「えっ?!」 あわてて吹寄は足の緊張を解いた。 まるでそれが、何かを暗示していたと認めるように。 「制理って、自分でするのか?」 「な、何、を?」 「自分の指で、気持ちよくなったりするのか?」 「そ、そんなこと聞かないで」 「認めてる?」 「ち、違う……! 一般論として、だめだってこと」 「なあ制理」 上条が、覆いかぶさるのをやめて吹寄の横に寝転がった。 そして背中の方から吹寄を抱きしめて、その手を握った。 「いつもどうやってるのか、教えてくれよ」 「知らない……知らない!」 吹寄はこれ以上追求されるのが怖かった。 だって、どんなリアクションをとっても、自分で慰めていることを認めたように受け取られそうだから。 エッチな女の子だとは、思われたくない。 「どの指?」 「してない……!」 669 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/15(火) 23 07 19.89 ID 3R8WP1Kmo やや強めの力で、上条がつかんだ吹寄の手を下半身へと持っていこうとする。 必死にそれに、抵抗する。 万が一にも触ってしまえば、自分の体がどうなっているか分かってしまう。 もう薄々気づいているけれど、それでも今は気づかないふりをしていたかった。 「もしかして指じゃない?」 「え?」 「道具持ってるとか」 「いくらなんでも、そんなわけないでしょ」 「でも制理、通販好きだろ?」 「っ! だ、だから何よ」 声が上ずらないように、必死に吹寄はトーンを平常通りに保つ。 だが、何かを隠そうとしているのは、上条にはバレバレだった。 不意に、部屋に通るような大きめの声で、上条が吹寄に尋ねた。 「なあ。あの電動マッサージ器、何に使うの?」 「えっ?!」 上条がむいた方向を、吹寄は思わず探った。 だって、あれは。見えるようなところに置いていないはず。 ちゃんとしまって、あるはずだから。 「……適当に言っただけなんだけど」 「あ、あ」 「持ってるんだな」 「それは、その」 「胸が大きい子は肩が凝るって言うから、制理が持ってても変じゃないと思うけど」 「あ、う……」 言葉が出なかった。完全に、上条のハッタリに騙された。 「マッサージ器、どこにあるんだ?」 「さ、さあ。忘れたわよ」 「そっか。じゃあ次までに見つけてくれよ」 「ど、どうして……?」 「肩凝り、ほぐすの手伝うからさ」 「う、うん……」 それで終わらない気がしてならない。 「マッサージ器に、制理の匂いついてるかな?」 「えっ、だ、だめ!」 つい条件反射で言ってハッとなる。 「だめって、なんで?」 「それは……」 吹寄が首を振って言い淀む。だが、上条は追求をやめるつもりはなかった。 沈黙で、先を促しながら、見上げる吹寄の顔に微笑んだ。 682 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/16(水) 22 43 17.36 ID gXenleSHo 「制理?」 「……」 「黙ってると、わからないぞ」 「……でも」 「制理?」 吹寄の表情が陰ったのに気づいて、上条は慌てた。 いじめると言っても、本気で相手を傷つけるようなことをしたいわけじゃない。 「ごめん、言いすぎた」 「……当麻」 「制理?」 「嫌いに、ならない?」 「え?」 その確認は唐突で、あまり要領を得なかった。どういう類の心配なのかがわからない。 だけど、答えにはそれなりに自信があった。 「制理のことを、嫌いにならない自信はある。どういう心配なのかわかんないんだけど」 「その。……自分で、エッチなことしてる女の子って、嫌?」 「つまり、自分の指で体に触ったりしてる女の子のことか?」 認めたくないように、上条からそっぽをむいて、小さく頷いた。 その体を後ろから抱きしめる。そうして、小さな言葉も聞き漏らさないように、吹寄の頬にキスをした。 「そういう女の子って、嫌かな?」 「いや別に、そんなことは思わないけど」 「そっか」 ほうっと、吹寄が息をついた。 そして、上条の手を握って、とぎれとぎれに呟いた。 「ちょっとだけ、したこと、あるの」 「マッサージ器で?」 「ち、ちがう……!」 「じゃあ、指で?」 コクンと、吹寄が頷いた。 「友達がそういうののやり方の書いてある雑誌持ってきたことがあって、それ読んで。 ほ、ほんとに何回かだけだけど、ちょっと興味で、やったことがあって」 「そうなんだ。言っとくけど、別に嫌なことは何にもないし、それで吹寄の見方が変わるとかはないから」 「うん。……余計な心配だったかな」 「だな。ほら、キスしようぜ」 「うん」 683 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/16(水) 22 44 00.33 ID gXenleSHo ちゅ、と唾液ですこしベタつくキスをした。 肩の荷を降ろしたように、吹寄が笑った。 それでつい、上条はまた意地悪なことを考えてしまう。 「それでさ、制理」 「え?」 「電動マッサージ器に過剰反応したのはなんで?」 「えっ?!」 吹寄の体が硬直した。 そして弁解するように、言葉を重ねる。 「あ、あれはほんとにただのマッサージの目的で買ったのよ。それだけ。 だけど後で通販サイトの評価コメント見て、そういう使い方もあるって、知っただけ」 「ああ、そういうことなのか」 「ええ。嘘じゃないからね」 「そういう念の押し方は嘘つきのすることだと思うんだけど」 「違うわよ。だって、貴方があたしのこと犯人扱いするから。 どんなふうに言っても、あなたの都合にいいように受け取られそうで」 恨みがましい視線だった。あわててキスで機嫌を取りに行く。 「そういう当麻は、どうなの」 「へっ?」 「むしろ男子は、するのが普通くらいって聞いたし。その当麻は……?」 吹寄が言いよどんだ気持ちを、上条ははっきり理解した。これは恥ずかしい。 「し、しちゃ悪いかよ」 「……誰も悪いなんて言ってないでしょ。ほら、当麻だって聞かれたら困ってる」 「う、悪かったよ」 「それで、してるの?」 「……ああ」 「どれくらい?」 「どれくらい、って」 「雑誌には毎日って書いてた」 「ま、毎日はしねーよ」 「じゃあ週に一回?」 「……それよりは、多いです」 「そうなんだ」 恥ずかしくて死にたくなった。 その様子をみて、吹寄は幾分か溜飲を下げたらしい。 「ねえ、男子ってさ。そういうこと、する時ってさ、その、本とか見たりするんでしょう?」 「……ええ、一般的に言って、そうでございます」 「当麻も、そういうの持ってるの?」 684 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/16(水) 22 44 48.57 ID gXenleSHo 心の中でもうやめてくれ!と上条は叫んだ。 男の尊厳を踏みにじる行為だと思う。 だけど先にいじめた関係で、強く出られなかった。 「普通の男子だし、まあ、持ってる」 「ふうん……」 つまらなさそうな顔を、吹寄がした。 「制理?」 「……別に、写真に写ってる子のこと好きなわけじゃないのよね」 「ま、まあ。そりゃな」 「アイドルとか、そういうのの写真? まさか、クラスメイトのとか、ないわよね?」 「自分の知り合いの写真なんてねーよ。それは、さすがに」 「なら、許すべきなのかもしれないけど……」 口の先を尖らせて、吹寄が不満げだった。 もしかして、焼餅を妬いてくれているのだろうか。 「制理?」 「……あたし以外の女の人の写真とか、ホントはもってて欲しくない」 「えっと」 「今日も帰って、そういう写真を見るつもりなの?」 そんなの、全然面白くない。四六時中とは言わない。 だけど、今日の夜くらい、ずっと自分のことを考えていて欲しい。 それが吹寄の本音だった。 「制理。それは大丈夫だ」 「えっ?」 「今から、死ぬほど恥ずかしい思いして、本当のこと言うから」 「う、うん……」 「き……昨日からずっと、そういうのするときは制理のことしか考えてない」 「……そ、そうなんだ」 上条としては、ドン引きされるのも覚悟して言った内容だった。 だが意に反して、吹寄はどこか、まんざらでもないような顔をしていた。 「あたしのこと、考えててくれたんだ」 「……そういうことしてないときも、ずっと考えてた」 「そうなんだ」 「制理はどうなんだよ」 吹寄が、体を上条の方に向けた。 軽く誘導すると、すっぽりと、胸の中に収まった。 そして見上げるようにして、囁いた。 「あたしも……ずっと当麻のこと考えてた」 「具体的にはどんな?」 「キスしてもらった時の感触、思い出したり」 「おんなじだな。俺も、そういうの思い出してた。あと、次はどんなキスをしようかって」 「嬉しい」 「好きだよ」 「あたしも。大好き。……ねえ、当麻」 「ん?」 「その、これからもそういうことするときは、あたしのこと、考えてくれる?」 695 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/17(木) 23 11 23.91 ID 2lTAc6mJo そのお願いをした吹寄の顔は、ちょっと怒った感じがした。 もちろん、可愛い彼女の頼みだから二つ返事で返事をしたいのだが。 「お、おう」 「……歯切れ、悪い」 今この瞬間から、二度と自分の集めたエロ本を見るなと言われたら、 それなりの割合で男子は抵抗を感じるものだと思う。 彼女は彼女、それとこれとは全く別のことだと思うのだが。 「……やっぱ、そういう写真に写ってる女の人の方が綺麗なんだ」 「そ、そんなことはねえよ」 「どうだか。だって、あたしは別にモデルでもなんでもないし」 「いやでも、俺が生でそういう人達の裸は見ることはねーし」 「……あたし以外の女の人の裸を直接見て楽しむなんて、絶対に駄目なんだから、」 「あ、当たり前だ」 際どかった。上条は嘘はついていない。 うっかり女の子の素っ裸を見たことはあっても、見て楽しんだことはない。 たぶん。だってあれとかあれとかあれはアクシデントだったわけだし。 「やっぱ、あたしじゃ魅力ないかな」 「制理」 キスをしようとしたら、阻まれることはなかったが受け止めてくれるそぶりもなかった。 誤魔化そうとしていると思われたのだろう。実際、そういう意味合いはなくもない。 「めちゃくちゃ、制理は綺麗だよ」 「……じゃあ、もうそういうエッチな本は捨てる?」 「えー、借りたり買ったりはしない方向で。 てか、そういうところはあまり追求しないのが男女のお約束では」 「そんな卑怯なの許さないわよ。あたしは、当麻のこと以外なんて絶対考えないもの」 「う」 嬉しい言葉だった。それだけに自分の理性がわりと下半身の欲望に忠実なのが申し訳ない。 「もっと何か強烈な思い出とかがあれば、いいのかしら」 「え……?」 「そ、その! ヘンな意味じゃなくて。 もっとあたしのこと、好きになってもらえば大丈夫なのかなって」 恥ずかしいことを言ってる自覚はあるらしい。 みるみるうちに、上条の顔を直視できなくなって、悶え出した。 「制理」 「何?」 「男のわがままで悪いけど、ずっとってのは、なかなか難しい」 「どうして?」 「あのさ、ものすごく、男の勝手な言い分を言うぞ」 「うん、どうぞ。あたしもそういうの、分かっておきたいし」 「毎回同じ写真とか動画だと、飽きる」 「……要するに、男の人は毎回別の女の人がいいってこと?」 「現実にそういうことするわけじゃないぞ。 ただ、ほらなんだ。自分でするときくらい、いいだろ?」 696 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/17(木) 23 12 17.57 ID 2lTAc6mJo まあ、わからないとも言わない。 毎度同じシチュエーションを再現するのでは昂らないという理屈は吹寄にも共感できた。 もちろんそういう感想を上条には絶対に知らせないが。 「それで、どうしたいの?」 何か、提案があるような顔を上条がしていた。 よくわからないが、自分の方をちゃんとみてくれる案であれば、飲まないでもない。 「制理。今日は、下、脱いでくれよ」 「え……えっ?!」 予想外だった。てっきり、何か許してくれというお願いがくるものと思っていた。 こっちから、何かをするなんて。 「その、どうして?」 率直な疑問だった。ブラどころか胸まで晒しておいてなんだが、 下はあんまりこれまで見せたことはなかった。 もしかしたら気づかないうちに見られたり触られたりはしたかもしれない。 でも、こんなにはっきりと、お願いされるなんて。 「なにか制理が新しくエッチなことしてくれたら、それで我慢する」 「そ、そんなの。……だめ、恥ずかしい」 「じゃあ、俺もエロ本見るの我慢しない」 「それは……もう。なんでこんなおかしな取引になるのよ」 上条がエロ本を見るのを許すか、今ここで下着を見せるか。 割に合わない気がする。なんといっても、 禁止し続けるには定期的にさらに過激なことをし続けないといけないのだから。 「で、どうする?」 「……当麻が、こんなに意地悪だって知らなかった」 「男はみんなこんなもんだ」 「そうかしら」 「なあ制理。そのジャージ、下ろしてくれよ。 そしたらずっと、吹寄のことだけ考えることにする。 写真とかであっても、他の女の子は見ない」 「……」 「約束する」 「約束されても。あたし、確認できないじゃない」 「そう言われましても」 「……本当に、あたしのことだけ考えて、その、してくれるの?」 「ああ」 別に下着を見せるくらいいいかな、と吹寄は考え始めていた。 夜にシャワーを浴びてからお気に入りのを履いているし、上下でちゃんとおそろいだ。 「すっごく恥ずかしい思いしてるの、分かってよね」 「ん。ありがとな、制理」 「当麻にだから、許してるんだからね」 「ほかの男子にされるのは、嫌だ」 「しないわよ。当麻にだけ」 697 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/17(木) 23 13 08.15 ID 2lTAc6mJo 吹寄は、目をつぶって上条にキスをねだった。 期待通りに上条は答えてくれた。ぎゅっと抱きしめて、優しいキスをしてくれる。 そして髪を撫でながら軽く舌を絡め合わせた。 「制理。脱がして、いいか?」 「ジャージだけだから、ね?」 「わかってる」 許可を与えてくれたものの、不安があるのか吹寄がゴムの当たりに自分の手を添えた。 明確な拒絶はないので、上条はその手を軽く握ってから、ジャージのゴムに手をかけた。 骨張った腰の当たりまで下ろすと、吹寄が腰を浮かせてくれた。 その間に、お尻の下をくぐって、ジャージをずらす。 そのあとはもう簡単だ。するすると、吹寄の前も、あらわになる。 「あ……」 恥ずかしさに、吹寄が息をのんだ。上条も、そのあらわになった下半身の美しさに見とれていた。 可愛らしい、ブラとお揃いの下着。そしてそこから広がる、白い太もも。 肉付きの加減が、たまらなく魅力的だった。むしゃぶりつきたくなるような、そんな感じ。 そして濃密な吹寄の匂いが広がる。いくらか汗ばんだ感じがするそれを、上条は嫌だと思わなかった。 ただ、頭がクラクラするような妖艶さがあって、自制が効かなくなるのが怖かった。 「こ、これでいい? ねえ、当麻」 死にそうだった。恥ずかしさで、頭がおかしくなりそうだ。 上条の視線がひどく真剣なのが、恥ずかしさを助長する。 素肌を、そして最後に一枚残った布をこんなにまじまじとみられるなんて。 せめて、綺麗だと思っていて欲しい。 「綺麗だ」 「ほ、本当に?」 「嘘じゃない」 「そ、それはよかった、けど。あっ!」 上条が、なんの断りもなく太ももに触った。その手のひらは熱かった。 膝のすぐ上から足の付け根の方に向かって、内ももを撫で上げた。 「ひぁん! ちょ、ちょっと。触るなんて聞いてないよ」 「触っちゃだめなんて聞いてない」 「でもだめ。今日は触るのなし」 慌てて、邪険にならないようにそっと手を払った。 あんまり大放出大売出しをしてしまうと、あとのエスカレートが恐ろしい。 「じゃあ、じっくり見せてもらうな?」 「……本当はそれも駄目って言いたいけど」 「これはしてもいい約束だろ?」 「当麻に、都合が良すぎるわよ」 698 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/17(木) 23 14 40.43 ID 2lTAc6mJo そう口で言うが、吹寄は抗わなかった。 「足、開いてくれよ」 「それはまた、今度」 「えー」 「だ、だって。あれもこれもしたら、次がすごいことになるもの」 「それは、否か?」 「……あんまり急なのは、怖いよ」 「悪い。今ちょっと焦ってるな、俺」 「うん……」 上条が自制してくれたのに、ホッとする。 やっぱり男の上条の方が力は強いだろうから、 上条が暴走してしまったら、吹寄にはもうどうしようもないから。 顔を上げると、上条が微笑んでくれた。嬉しかった。 好きな人が優しく笑ってくれると、それだけで胸が一杯になる。 吹寄はきゅっとガードしていた太ももの力を抜いて、軽く体勢を整えた。 ……それが、油断だった。 「あ……」 「どうしたの? 当麻……もう、あんまり見ないでよね」 やっぱり当麻も女の子の下着に興味あるんだな、なんて事を思っていると、 なんだか、上条の顔が真剣で、じっと注視していた。 「当麻?」 「制理の……濡れてる」 「えっ?!」 そんな、嘘だ。 吹寄は慌てて隠すように体を縮めた。 「嘘」 「嘘じゃないって。だって、濡れた色してるし」 「だ、だけど。あたしそんなこと、なったことない」 それはまあそうだろう。 こんなに、感じた経験なんて今まで無かった。 こんなに、はしたない声をあげたことなんてなかった。 710 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/19(土) 08 03 57.60 ID KNabhg7po 「じゃあ、触って確かめてみろよ」 「……やだ」 「俺がやろうか?」 「だ、だめ! 絶対だめ!」 「なんでだよ」 「だ、だって今日はそこまでしない約束じゃない」 たしかにそう、上条は吹寄に約束してくれた。だからこれを理由に拒むのは嘘ではない。 だが、触らなくてもわかるのだ。自分の下着が、濡れていることくらい。 じっとりとした感触に自分の下半身が包まれている自覚はあるし、 何より、さっき上条に可愛がってもらったときに、自分の指で以前そうなったときよりも、 何倍も強い感覚で体の奥がとろりとなる感じがしたから。 「気持ちよかったのか?」 「……知らない」 「なんで制理の体、こんなことになったんだろうな?」 「し、知らないわよ。あたしだってこんなの初めてで」 上条が、意地悪そうに笑った。 「なんだ、濡れてるって自分でもわかってるんだな」 「あっ……!」 「なあ制理。そういうのって、触らなくてもわかるもんなのか?」 「馬鹿、馬鹿ぁ……聞かないでよ」 「制理も結構エッチなとこあるな」 「違う……。当麻が悪いの」 「俺?」 「当麻の手が、いやらしいから」 「いやらしいほうがいいんじゃないのか?」 「別に優しいだけで、いいもの」 「こんなに制理の体は悦んでるんだけどな」 「そんなこと、そんなことない」 「ほんとに?」 「だって」 「じゃあ、もっと体、触っていいか?」 「えっ?」 「嫌だって言われたら、しない」 「……」 「制理」 上条の目が、さっきみたいに獰猛な感じになっていた。 あたし触られちゃうんだな、と吹寄はすぐにそれを受け入れてしまっていた。 嫌な気持ちは、これっぽっちもない。 ただ、受け入れる姿勢をはっきりとは示さない。それは、はしたないから。 はっきりとは自覚していないが、少し拒みながらの方が、より吹寄も燃え上がるのだった。 「ん……」 ちゅ、ちゅ、と水っぽい音を立てながら、上条が吹寄に口づけする。 やめてという意思表示なのか、離れないでという意思表示なのか、 どちらとも取れるような手つきで、吹寄が上条の手に自分の手を添えた。 724 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 32 24.84 ID 9eq0pQaso 吹寄の横に寝そべって、髪に手をかけながら吹寄の頭を自分の胸元に抱き込む。 まだ、いくらは気恥しさはあるようだが、素直に寄り添ってくれた吹寄の顔は穏やかだった。 上条はさっきの吹寄の反応を思い出しながら、手のひらを優しくというか、大きく使って撫でる。 首筋に近いところから、時間をかけて滑らせて、腰の当たりまで撫でる。 そしてそのまま止めずに再び首元へと撫で上げ、円を描く。 時折、肩甲骨のあたりの複雑なラインや、腰のあたりの背骨の輪郭を指でなぞり確かめるようにして、 変化を付けながら吹寄の肌の滑らかさを手のひらで堪能する。 「はぁぁ……。あぁぁ、ぁ」 吹寄の喘ぎ声が、たちまち始まった。 しかもさっきのような甲高く鋭いものではなくて、深い、ため息のような感じ。 そういう吹寄の変化が楽しく、また、行為のはじめとしてはそうしたやり方が正しい気がして、 上条は背中や、頭や、太ももや、時折乳房を、夢中で撫で続けた。 「はぁぁぁぁん……」 吹寄は、いつしか自分の声すら遠くに聞こえるような、まどろみの中にいた。 意識の懸濁した感じは、休みの日の朝寝に似ている。 何度も二度寝を繰り返して、ぼうっとしながら、寝るとも寝ないともつかないような世界にいる感じ。 ただ、寝起きとは大きな違いもある。 とびきりの安心感があることと、そしてなにより、上条が与えてくれる快感があることだった。 「あ、ん……当麻、当麻」 「好きだよ、制理」 「あたしも、愛して、る」 薄く目を開くと、優しく笑う上条が目の前にいる。 それだけで胸がいっぱいになる。嬉しくて、上条の懐に顔をうずめて、深く息を吸う。 上条の匂いがする。それだけで、またとても、落ち着いた気持ちになった。 「すげー制理が甘えてる」 「うん……好き」 上条は、流行る自分の気持ちを必死にこらえながら、撫でるのを続ける。 吹寄は今隙だらけだ。だから何も策を練らずとも、吹寄の一番大事なところに触れると思う。 それどころか、下着だって脱がせるかもしれない。 そういう、吹寄が望まないことを、やってしまいたいという欲望が確実に上条の中にはあった。 撫でているだけでは、自分の欲望は満たされない。 「お尻、撫でていいか?」 「え……? うん、いいよ」 あっさりと、吹寄が承諾を出した。それは今日の許容範囲外だったはずなのだが。 豊かなバストと同様にふっくらと肉のついた、そのお尻にまで上条は手を伸ばす。 もちろん下着越しだったが、その丸みのある感触に、やっぱり上条は感動を覚えてしまった。 女の子の体というのは、こんなにも男と違って、柔かくて丸い。 725 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 33 03.53 ID 9eq0pQaso 「エッチなところは、だめ」 「……どこのことだ?」 「知らない、わよ」 吹寄は触ってもらえるのが嬉しくて、ついお尻を許可したのを少し後悔していた。 だって、濡れていると指摘されたさっきよりも、もっと自分の体の中から溢れてきている自覚があった。 上条が、自分の体のことを分かってき始めているのが、わかる。 快感が明確に周期を持ち始めていることに、吹寄は自覚はないものの、気づいていた。 「はぁ、ん……! あ、あ、あぁ……」 よくわからないが、押し寄せる波のような快感が、自制できるより強くなりつつある。 そんなつもりはないのに、体がうねってしまう。 一箇所にじっとしていられなくて、上条に抱かれたまま吹寄は手足をくねらせた。 のろのろと暴れる吹寄を、笑って上条は自分の手元に引き寄せる。 そして手や足で吹寄の四肢を絡めとり、時にはキスで首や耳を愛撫した。 「はぁ、あ」 快感の波が静まる。その度に吹寄は上条を見上げ、そして上条の匂いに包まれて吐息をつく。 昂ったときには視界や嗅覚があやふやになって上条の手のことしか考えられなくなるので、 落ち着いたときに感じられる上条の笑顔や、自分とは違う男らしい匂いに陶然となるのだった。 「制理」 「え……? あ」 それは不意打ちだった。というか、上条の真剣というか、ちょっと必死な感じのする顔を見たら、 上条がなんだか何かを我慢しきれなくなったような感じに見えた。 太ももの間に手を差し込まれて、大きく開かされた。 そしてその間に、上条の下半身が滑り込んだ。 「当麻……?」 つい不安げに、問い返してしまった。ちょっと悪いことをしたような気持ちになる。 上条を、疑ったみたいで。 撫でられているときには、赤子のように上条のことを完全に信頼していたのに。 726 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 33 34.49 ID 9eq0pQaso 「脱がせたりは、しないから」 上条はジーンズを履いているし、自分だって下着を着けている。 だけど二人の下半身は、布越しにぴったりと接触していた。 布がなければなんの言い訳もできないような、完全に男女が交わる時の体位だった。 ――当麻がこうしたいんだったら、いいかな。 吹寄は内心で、そんな風に考え始めていた。 一線を越えるのはもちろん怖いし、今日はそこまでは行って欲しくない。 だけど、これくらいなら。上条は優しいし、そして何より、気持ちいいから。 「制理。愛してる」 「あたしも……。当麻」 「ん?」 「これ以上は、怖いから」 「わかってる。脱がせたりとかは、しないから」 「うん。あと、指で触るのも……」 「今日は、しない。約束する」 「うん。わがままでごめんね……?」 「無理言ってるのは俺の方だろ。なあ制理」 「え……?」 「気持ちよくしてください、って。言ってくれよ」 恥ずかしかった。それを言うのは。 だってそれは紛れもない自分の本音だから。 もうほとんど溺れかかっている自分がそれをいえば、 引き返せないくらい、ひどく快楽に溺れてしまいそうだった。 だけど、それでも。 「気持ちよく、してください。撫でてください……」 「わかった。いっぱいしてやるから」 「うん……あぁ、はぁ、ん! は、あっ!」 上条が、太ももの間に押し込んだ自分の下半身を押し付けてくる。 自分の指とは違う、圧迫感。だがそれは強い快感を伴っていた。 「はぁぁんっ!」 二人きりの室内に、吹寄の甘い声が響いた。 自分で、その声の大きさにハッとなった。 「あ、あたし」 「すごく可愛い声だったな」 「えっ……」 「もっと鳴いてくれよ」 「や、だめ。隣に聞こえちゃ……あっ、はぁん! あぁ、あ!」 上条の攻めが、激化した。 さっきよりも「手」がひとつ多いのだ。 片手で髪を撫でられ、そしてもう片方の手で胸を弄ばれる。 口が首筋から耳にかけてを舐め上げていて、そしてさらに、下半身で吹寄の陰処を愛撫していた。 快感に、翻弄されてしまう。どこかへ流れていきそうな理性をつなぎ止めるように、吹寄は上条にすがりついた。 727 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 36 34.49 ID 9eq0pQaso 「んっ! んっ! あ、とう、ま……はぁ」 「気持ちいいか?」 「うん。あっ、気持ち、いいよ」 「もっとして欲しい?」 「してほしい。離れちゃ嫌」 「放すわけねえよ」 「んんぅ!」 上条が体重をかけるようにして、吹寄にぎゅっと密着した。 その重みすら、快感に変わる。 少し息苦しくなったところに、上条がキスをかぶせてきた。 「気持ち良さそうな顔してる」 「み、見ないで……。恥ずかしい。恥ずかしいから」 「断る。制理の可愛い顔が見たくて、こういうことしてるんだ」 「いやぁぁぁ……」 上条から顔をそらしたくて、首を左右にふっていやいやをする。 そんな吹寄の頬に手を添えて、上条は強引に吹寄を自分の方に向かせる。 息を止めるようにキスで口を塞ぐと、鼻から苦しそうに吹寄が息をついた。 「んんっ、ん! ん!」 その口の中に、唾液を流し込む。 あっという間に、吹寄自身と上条の唾液で口の中があふれ、それが少し口元から溢れた。 それを上条はまた、ぺろりと舐めとる。 「はぅん、はぁん、あぁぁ……!」 もう、快感で頭の中がぐちゃぐちゃだった。 上条のことしか、考えられない。 上条が与えてくれる快感しか、感じられない。 密着した下半身がすごいことになっている自覚がある。 まだしないと約束はしたけれど。体は完全に、上条の体と繋がる準備ができていた。 そしてそれどころか、さらに。 「とう、ま……怖い」 「制理? 怖いって」 「あたし、どっか行っちゃいそう」 「え……?」 快感の波のうねりが、留まることを知らず高まっていく。 押しては引き、押しては引きを繰り返す中で、一番の高波が防波堤を越えそうな、 そんな予感を吹寄は覚えていた。 自分でしたときにはこんなことになったことなんてなかった。 その果ての向こうがどうなっているのか分からなくて、吹寄は漠然とした恐怖を覚えていた。 728 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 37 44.55 ID 9eq0pQaso 「イっちまえよ」 「えっ……?」 「俺はずっと制理の隣で、制理のこと抱いてるから」 「あ……」 また、体の奥がじゅわりとなった。 だんだんと、嬉しさや、気持ちよさが、吹寄の体が持つ女らしい機能とリンクしていく。 上条によって体が開発されていくその過程を、吹寄はいま経験していた。 「ずっと、一緒にいてね」 「当たり前だ。結婚してくれっていっただろ」 「うん。うん……!」 「愛してる。制理」 「あたしも、んっ! はぁぁぁん! 愛して、る! とうま、とうまぁ……!」 上条が、さらに力を込めて下半身を突き出した。吹寄は足を曲げて、上条を抱き込む。 離れて欲しくないから。その温かみを分け与えて欲しいから。 脳が過熱していく。さながら暴走するエンジンのように、吹寄の頭は理性を失い、 快楽ばかりを貪って、酸素を求めて荒い息をつく。 「当麻……っっ。はぁん、はぁん、あたし、あたし」 「見てるから。ほら」 「うん。あっ、あ、あ、あ、あぁぁぁぁぁ……」 瞬間。快楽の波が停止した。 そして、突如としてそれは、噴火するように吹寄の体を襲った。 「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんんん!!!!!」 噴火するような、イメージだった。 自分が火山で、自分の中から再現なく何かがあふれ、流れ出していくイメージ。 細々と四肢が伝えてくる情報から、吹寄は自分が上条にしがみついて、痙攣しているらしいと何となく感じた。 声が自分の口から漏れているのもわかる。 だけどそんなことは些細なことでしかなくて。 信じられない量の快感が、焼き尽くすほどに脳から背筋を通り、 体全体に広がっていることが何よりもリアルで、吹寄の全てを支配していた。 「すげ……」 それが一般に、どういう名称で呼ばれる現象なのかを上条はようやく実感しつつあった。 ぎゅっときつく目をつぶり、何かに耐えるように喘ぐ吹寄を見て、上条もなにか満たされた気持ちになっていた。 「あ、っ。は、はぁ、は、ぁ……」 二三度、呼吸の仕方を忘れたみたいに無茶苦茶な息をついて、吹寄がようやく、体を弛緩させた。 多分10秒にも満たない時間だったと思う。 だけど、二人共のどちらにとっても、もっと長く感じられる瞬間だった。 729 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 38 22.96 ID 9eq0pQaso 「制理」 「当麻……あたし」 「イったか」 「……たぶん」 吹寄も、知識としては自分の身に起こったことがなんなのか、知っている。 だけどその達するという現象と自分の身に起こったそれが同じものなのか自信が持てなかった。 「気持ちよかったか?」 「……うん」 「どれくらい」 「わかんない」 「わなんないって、なんで」 「言いようがないの……。今までで、一番」 吹寄が、もたれかかるように上条の胸に頭をあずけた。 本当は体全体で上条にしがみつきたくらいだった。 体が、うまく動かなかったのでそれは出来なかったけれど。 「嬉しい……嬉しい」 「嬉しい? なんで?」 「わからない。だけど、貴方にこんなふうにしてもらえて、なんでか、嬉しいの」 吹寄の顔を見ると、疲れた顔で、せつなげに、だけどひどく嬉しそうに微笑んでいた。 そのなんとも言えない表情が、とても美しかった。 色気を放つというのとは少し違う。快感の極みを体験した爽快感のようなものが、浮かんでいた。 それは上条が惚れ直すのに充分なくらい、綺麗だった。 だからつい、茶化したようなことを言ってしまう。 「でも、約束破ってあきらかにやりまくっちまったけどな」 「それは。……うん。当麻は反省してね」 「なんだよ。俺が悪いのか」 「うん。全部、当麻のせいだから」 「ひでえ」 「だから。また、して」 いたずらっぽく、吹寄が笑った。 「じゃあ今からもう一回するか」 「あ、だめ……だめっ」 割と本気で拒まれた。少なからず、ショックを受ける。 730 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 39 26.90 ID 9eq0pQaso 「い、今はだめ」 「なんでだよ」 「体がなんか過敏になってて。……気持ちいいって思えなくて」 「そうなんだ。悪い」 「当麻はわからなくて当然だもの。……そうよね?」 「なんで聞き返すんだよ。女の子の体、こんなに触ったの初めてだ」 「あは」 上条も緊張を解いて、吹寄の隣でだらりとした。 髪を撫でてやると、吹寄は嬉しそうに笑った。 不意に時間が知りたくなって、時計を見た。 「当麻……」 吹寄もその行為の意味に、すぐに気がついたらしかった。 時計は、ここに来た時より二時間遅い時刻を指していた。 日付だってもう変わってしまった。 「朝まで一緒……はだめ、かな」 「明るくなってからここを出るのは、まずいな」 「うん……。そうよね」 「まあ、もうちょっとしたら帰るしかない、な」 「そっかぁ……」 ありありと、吹寄が落胆の顔を見せた。 だって、こんなに幸せな時間があったというのに、ほんの数十分後にはまた独りになるなんて。 その落差が、あまりに切ない。 思わず涙ぐみそうになって、あわてて吹寄は自分のいつもの調子を取り戻すよう、心を奮い立たせた。 こんなのは、さすがに自分らしくなさすぎる。 「また、しよう」 「うん……」 「別に毎日会えるわけだしさ、寂しがらなくても大丈夫だって」 「うん」 「今日の制理は、世界で一番可愛かった」 「……褒めないで」 「なんで?」 「優しくされると、寂しくて泣きそうになるのよ」 拗ねるように見上げられて、上条は困ってしまった。 冷たくなんて、出来る訳がない。こんなに愛しい彼女なのに。 そしてその彼女にこんな顔をされたら、優しくする以外に何もできやしなかった。 吹寄のお願いを無視して、髪をなでる。 「寝ちゃうまで、撫でてやろうか」 「え?」 「制理が寝たら、こっそり戻るから」 「でも、そんなの。悪いわよ。呼んでおいて見送りもしないなんて」 「気にするなよ。今日は制理のために、出来ること全部してやりたいんだ」 731 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 39 57.23 ID 9eq0pQaso その提案は、悪くない。 どうせ別離の瞬間が寂しいのはどうやっても変わらないのだ。 せめて、眠りにつく瞬間が穏やかなのは、嬉しいことだった。 「いいの……?」 「そりゃもちろん。それで制理が、よく眠れるんだったら」 「うん。撫でてもらってたら、すごく眠れる気がする」 「じゃあ、そうしてやるから」 「ありがとう」 おやすみのかわりに、二人はキスを交わした。 ゆっくりと、だけど深く。 吹寄が体勢を楽にして目をつぶると、上条がすぐ髪を撫で始めてくれた。 まず激しく動いて散らかった髪を整えてくれて、あとはそれと何度も何度も、梳くように。 とてもそれは、気持ちが良かった。 髪を撫でてもらえるのがこんなに気持ちいいのかと、驚いてしまうくらいに。 疲れているのもあって、吹寄が意識を落とすのにそう時間は掛からなかった。 「……おやすみ」 何度か上条自身も意識を手放しかけたが、既のところで保って、そっと、吹寄を起こさないように部屋を出た。 732 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/11/22(火) 03 41 37.91 ID 9eq0pQaso 「ん……」 まだ夜と呼べる時間帯。 ふと、吹寄は目を覚ました。 「当麻……あ」 喪失間。隣に、さっきまでいてくれた人がいなかった。 「あ、そうだ、当麻は戻っていって……」 愕然となる。このまま明るくなるまで、眠り続けられるものと思っていたのに。 よく考えてみれば下着一枚を除いて裸なのだ。エアコンをつけていても薄寒かった。 「パジャマ、着なきゃ……」 中途半端に起きたせいで、意識と体が乖離したような気だるさがあった。 もしかしたら上条とした行為のせいかもしれない。 「よ、っと」 少し乱暴に体を起こして、ベッドに腰掛けた状態になる。 とりあえずジャージを、と思ったところで、それに気づいた。 「あ……」 下着の感触が、ものすごく、気持ち悪い。 ごわごわとしているし、じっとり湿った感じがする。 「……いますぐじゃないと、駄目か」 真新しくて、お気に入りの下着だった。 このまま脱いで朝まで放置したら、きっと汚れが落ちにくくなるだろう。 勤勉な吹寄とて、お気に入りでなければほったらかしたかもしれないが、 もしこの下着をまた見たいと上条に言われたときに、 上条に見せられないような染みが残っていたらと考えると、 やっぱり洗わざるを得ないという結論に達するのだった。 「はぁ……。なんでこんな時間に」 寂しさがジクジクと心を責める。 上条が居ないのが普通だというのを知らしめるように、日常が吹寄に襲いかかる。 バスルームで、するすると下着を脱いで落とした。 ついでに素っ裸のまま、鼻を首元に近づけて、臭いを確かめる。 さすがにそれで判断はつかなかったが、どう考えても、登校前にシャワーを浴びざるを得ない。 「今、のほうがいいわね」 朝にまた早起きしてシャワーを浴びて洗濯するのは大変だ。 起きてしまった以上は、シャワーは今のほうがいいだろう。 吹寄は裸のまま、洗面台の前に立った。 首元を中心に、鏡で自分の肌を確かめる。幸い、キスマークはなかった。 それを確認してから、赤いコックをひねって、タブに浅くお湯を貼る。 下着を裏返してクロッチの部分を見ると、いつもよりかなり大変なことになっていた。 「うわ……」 棚から小さなボトルを取り出し、中身のジェルをクロッチの部分に落とした。 お湯を救ってジェルを伸ばし、下着によく揉み込む。 使ったのはいわゆるランジェリー専用の洗剤だった。 手洗いでしっかりと揉んだ後、お湯に漬け洗いすることで汚れはきれいに落ちる。 お気に入りの下着を綺麗に保つ努力のひとつだった。 「あたし、こんなことになったんだ……」 数時間前の出来事は、もう夢の中の出来事みたいだった。 上条の手に、そして口付けにあんなに翻弄されて。 嫌ではなかったけれど、反省はしてもいい気がする。 ……また迫られたら、拒めない気もしたけれど。 「あ、そういえばメール」 もしかしたら、上条から何かが来ているかもしれない。 処理を済ませた下着を置いてリビングに戻り、ケータイを確かめると。 ――今日の制理は死ぬほど可愛かった。愛してる、制理。 「あたしも……大好きだよ。当麻」 ぎゅっと携帯を胸に抱いて、吹寄は微笑んだ。 前へ 戻る 次へ
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━━━━━━━━━━━━━ 吹寄制理 ━━━━━━━━━━━━━ | | | | ..- ニ 二 -.、 | | / / ヽ \ | | / / / /| l ヽ ヽ | | / / / / ! 、 l l | | l l l __´ ! !\ _; } ! | | l l レィzミ、 彡zミ V | | | | ! |` ヒソ` ヒソ ' rヘ ! | | | ! | " i " , } | | | ! l ハ r 、 /イ ! | r, l V ゝ ー┘ ィ / ! | } l , V ヘ ー l / ハ | r {} }}, / / ィ′ V / / l | | l/ ! / /ノ ∧__ノ} ∧`ヾ、 | │ゝ ! 〃l `ヾ 、 ハー--‐ 7| /´´ ll | l ト、 / ! /, / 丶 / / / 、 / ll | ヽ j ヽ、 》 / 〃 ヽ /´ハ ハ \ 》__ | |l ∨ } \ ll / 〃 ∨ { V ハ ヽ_fl ´. ヘ | |\ ノ \ 《 ,′ {l r'┤ `l} ,/1 営、 | | ゝ \_/ 、 {{ `┘ }} }え車 / | | `ヽ_ \ ヽ ゝ ll 八 l} 人  ̄/ ヾ | | \ ヽ /`iー ll-- < >--〃 イ└へ \ | | \ / ! ll ll 〈 /─-- 〉────────────────────────────────────── 新たに就任したコメッツのコンディショニングコーチ。やる夫とトシは余り変わらないらしい。--------------------------------------------------------------------------- 面倒見がよく、仕切り屋。--------------------------------------------------------------------------- 何がとは言わないが得盛りである。────────────────────────────────────── 新たに就任した1軍のコンディショニングコーチ。 新シーズンまでやる夫の専属コーチを務め、ウィンターリーグへの海外留学の引率も務めた。 やる夫の球で記憶を取り戻したり、また失ったりと割と波瀾万丈 好感度★★★で会得できるスキルは回復◎(回復○より一段階上のスキル) ただし回復◎の経験値がMaxでないと会得できない。 好感度☆☆☆の場合は”教養”を会得できる。 2周目好感度★★★で”勝手に改造”取得
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ヽ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . ヘ . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .< > . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .> < . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . .、 . . . . . . . . . . . . . . . . . . / > . . . . . . . . / . . . . / . / . . ./ . . . . /ヽ . . . . . . . . . . . . . . . .ヽ < . . . . . . . . . /. . . . . . /. . . / . / . . . . . ./ . .' . . . . . . . . . . . . . . . . . . > >. . . . . /. . . . . . .i / . . ./ . /. . . . . . . .ハ . . i . . . . i . . . . . . . ヽ . . . \ ∠ イ . . ./ i .i. . . . . ヒ . ∠| ./ハ . . , . / _ ハ . .z' . . . . . . . . . .\ ̄. / . . ./ rjノ . . . ./七_i/`ヽ| / /´ 七__j/jハ . . . /j . ハ ̄ /_. . / . i ヘ . ./'´弋ソ`ヽ j/j/ ´弋 ソ`ヽ }ハ/jイ . . . .\ |/|/、( iⅥ `ー一 ー一 ′j/ノノ . .ヽ ̄ jハ ヽリ | /' イ . .厂 /\_∧ |! /ー'´ . i{ j/ i. .ハ ` ` / .i .ハ . ハ j/ i .ヘ -― ―- .イ . .j/ j/ jハ个 、  ̄ /i/ . 八 / j/! > < |ヽ厂ヽ / . |  ̄ | .i \ / | 、 | / ヽ _... -―/ 厂ヽ 厂 ヽ i / ヾ /\ i`丶、_ . '" / { ∧ 丶 ! ′ ∧i i | `"''‐ 、 -- 上条当麻(出展:とある魔術の禁書目録 原作:ランス・ハーン) □プロフィール(暫定) ハーレム鈍感男。過去に何人もの女を泣かせてきたすごい男(鈍感すぎて) しかし、痺れを切らしたある二人から告白されそのままゴールイン 不幸男から一転、現在は『モンゴル』の王 □キャラ情報 元 国王 現在、日本海軍提督 当麻は武力行使は嫌い(11スレ849) 当麻には戦争しかけるつもりがない(11スレ850) 完全に羽入の手のひらで踊らされてた模様。 当麻はナナリーのような王になりたいと思った。(13スレ785) すべての責任をとり死ぬつもりだったが、生きて責任をとることに 神裂火織&吹寄制理を部下化、彼女達のエロは不可能になりました。 美琴、当麻、火織の能力は羽生の血らしい(14スレ991) 名前 指揮 戦力 武力 政力 指揮能力 特能1 特能2 特能3 特能4 01 上条当麻 580 24 22 12 全+15 幻想殺し 聖人-弱- 名称 発動 内容 幻想殺し 戦闘時 同エリアの敵の特殊能力うち、タイミング【戦闘時】の効果を打ち消す 聖人-弱- 常時 自身の攻撃力と防御力+20%
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大覇星祭三日目―――。上条当麻、土御門元春、ステイル=マグヌス、インデックス、青髪ピアスの5人は学園都市第七学区の表通りを歩いていた。 「うだー、疲れたー!」 「もう昼だし、今日は種目もたくさんあったしにゃー」 「しかもそのすべての競技にボクらは出なあかんかったしなー」 「僕としては君たちの慌てる姿が見れて楽しかったけどね」 「それよりとうまー、おなかへった」 ちなみにステイルは事後処理ついでに上条たちの競技を見ているらしい。まあ、上条としてもインデックスのお守りが必要だったので助かっている。 「ちょっと待て、昼飯はさっき食ったばかりだし、俺らの競技を観ながらステイルのおごりでポップコーンとかバクバク食ってたってのに何でまだ減る腹がある?」 「さ、さっきのはお菓子だから別腹だもん!」 「そういう問題じゃないと思うぜい・・・・・・」 「まあ、お腹が空いたというのなら、どこかに食べにいこうか?」 それじゃまるで人攫いだぞ・・・・・・。 と、上条はステイルをあきれた目で見つめる。 「まあ、連れて行ってくれるなら頼むよ、俺らは次の競技の時間がヤバイから・・・・・・」 「いや、ついていこうぜカミやん。次の競技は『クラス対抗サバイバルマラソン』だ、へたすりゃ死ぬぜい。それにたくさんの人数が入り乱れるから二、三人ぐらいなくて大丈夫だろうし」 「そうやそうや。いまなら女の子と食事できるってサブイベントまでついてるし」 そっちが本命か、つーかお前はインデックスと一回会ってるはずだが。 と上条は心の中でつぶやく。ちなみにクラス対抗サバイバルマラソンとは、つまり名前のとおりである。 能力者がお互いを妨害しながらマラソンをするだけである。マラソンとついてはいるものの、どちらかといえば妨害がメインになるため戦争に近い。 「んー、まあいっか。『へたすりゃ死ぬ』なら俺は確実に死にそうだし・・・・・・」 「それはないやろ」 「それはないぜい」 「それはないな」 「それはないよ」 「何で全否定!?」 3人から突っ込みを入れられ、上条は「不幸だー!」と叫ぶ。 しかし、その声に負けないぐらいに響いた声があった。 「見つけたわよ上条当麻!」 5人はいっせいに声のしたほうを振り向く。 「ヤバイ・・・・・・吹寄だぜい」 そこには鬼の形相をした大覇星祭実行委員の吹寄制理がいた。だが、いつもの吹寄とは少し違う気がした。 「吹・・・・・・寄?」 しかしそれに答えず、吹寄は大股でこっちに向かって来ながらまくしたてる。 「次の協議まで時間がないというのに!貴様ら、こんなところで長々と何をしている?」 吹寄の違いは一歩を踏み出すごとに大きくなっていく。体が大きく、肌の色は黒く、髪の毛が青く長くなり縮れていく、まるでわかめのように。そしてその声は・・・・・・ 「鼠のように逃げおおせるか、この場で死ぬか、どちらか選べぃ!」 女の子とは思えないような渋い声になりました(体も)。そのうえいつの間にか手にはゴツイ斧が握られていた。 近くにいた人が悲鳴を上げて逃げ出す。それほどまでに今の吹寄?の姿は恐ろしかった。 『ふ、吹寄ぇ!?』 すっかり変わってしまったクラスメイトに驚く一同。 「あれはもしかして穴子堕とし(バルバトスフォール)!?」 「なんやねん!その語呂の悪さは!」 「そんなこと言ってる場合じゃない、なんか危なそうだからとりあえずあれを止めるよ!」 ステイルはそう言うと、ルーンのカード(マジックアイテム)を取り出して炎剣を生み出す。その瞬間、 「アイテムなぞ・・・・・・、使ってんじゃねええええええええええええええ!!!!!」 吹寄?の怒号とともに、ステイルの足元から黒い刃が飛び出す。 ドズッ! と鈍い音が響く。そしてさらに、 「微塵に砕けろぉ!」 ステイルに突き刺さった刃が十字型になり、さらにステイルの体を切り刻んで後ろに吹き飛ばす。 「ステイル!」 上条はステイルのほうへ行こうとするが、 「大丈夫!あの人もまだ意識があるから、私が知ってる回復魔術を教えれば・・・・・・!」 インデックスがどこから取り出したのか救急箱を抱えてステイルの元へ行こうとするが、 「回復魔術だと?貧弱すぎるわ!」 吹寄?がそう言い放った後、口の中で小さく何かを唱え、 「断罪のエクスキューション!」 インデックスの足元と、頭上から不可視の圧力のようなものがかかる 「きゃあああっ!」 インデックスが倒れて動かなくなる。 「インデックス!てめぇ、吹よ「イノケンティウス!」」 上条は驚いてステイルのほうを見る。倒れたステイルの隣に、3000度を越す炎でできた人の化身が現れていた。 「彼のクラスメイトだか何だか知らないが、あの子を傷つけるなら「いつまで術に頼るか!」」 ステイルの声をさえぎって吹寄?が叫ぶと、ステイルの体が重力に押しつぶされるように地面へとめり込んでいく。 「がああああ!」 「くそっ!やめろ、吹寄ぇ!」 上条は叫びながら吹寄?のほうを向く。しかし吹寄?はそれを無視するように高速で後ろに走り出す。その先には『ここは第七学区三番通り』とカラフルな文字で書かれた大きな看板がある。 「俺の背後に・・・・・・」 吹寄?は手に持った斧を看板に突き刺すと、 「立つんじゃねえ!」 吹寄?が斧を力任せに振り上げると看板は木っ端微塵に砕かれ、看板の後ろに隠れていた土御門が宙に舞う。 「くっ!?」 斧に突かれたダメージは浅いようで、土御門は空中で体勢を立て直そうとする。しかしその前に吹寄?がひび割れた斧をこちらに向ける。飛んでくる土御門と上条は一直線に並んでいる。 まずっ・・・・・・!? 上条は移動しようと横に動くが、 「皆殺しだ!ジェノサイドブレイバー!」 吹寄?の斧から避けきれないほどの大きさの衝撃波が飛んでくる。 「くそっ!」 とっさに上条は右手を前に出す。衝撃波は空中でガード姿勢をとっていた土御門を、簡単に弾き飛ばし上条へとせまるが、上条の右手に当たった時点で消えてゆく。 「よし、これなら防げる・・・・・・!」 しかし上条は衝撃波が荒れ狂う前で、変わり果てた吹寄の声を聞いた。 「縮こまってんじゃねえ!灼熱のバーンストライク!」 上条の頭上から、複数の火の玉が振ってきた。 「どうしろってんだぁー!」 上条は火の玉の直撃を受けて右手がずれ、それによって襲い掛かってくる衝撃波で吹っ飛んでいく。 「あかん、カミやんまでやられてしまうとは・・・・・・、ここは一時撤退やーっ!」 青髪ピアスが、カール・ルイスも真っ青の速さで逃げていく。しかし、それを見逃す吹寄?ではなかったようだ。走り去っていく青髪ピアスの方を向き、言い放つ。 「男に後退の二文字はねえ!絶望のシリングフォール!」 青髪ピアスに一抱えもある岩が雨あられと降り注ぐ。 「死んでまうわーっ!!」 岩の直撃を受けて青髪ピアスが倒れ付す。 「ぶるああああぁぁぁ!!!」 しかし吹寄?はそれだけでは飽き足らずに謎の奇声を上げながら、倒れた青髪ピアスに走りより、 「死ぬかぁ!消えるかぁ!土下座してでも生き延びるのかぁ!」 炎を纏った斧を叩きつけ、返す斧で斬り上げ、浮かんだ青髪ピアスをつかんで膝蹴りをかましてまた地面に叩きつける。そして青髪ピアスも動かなくなる。 「これぞ三連殺!」 吹寄?はなにやら技名のようなものを言う。 「ぐ、吹寄・・・・・・どうしたっていうんだ」 上条は体を起こして呟く。 「どうして、だと?」 吹寄?が聞き返してくる。吹寄?はこちらに歩み寄りながら、 「おまえは自分に原因があるとは考えないのか?おまえを恨んでる人間はいないか? おまえを馬鹿にしてる人間はいないか? おまえは本当に誰かに必要とされているのか? おまえを殺してやりたいと思っている人間は本当に誰もいないのかぁ!?」 吹寄?は上条が混乱している間に、早口でまくし立てて戦闘モードに入ると、 「それがわからないなら、今死ね!すぐ死ね!骨まで砕けろぉ!」 上条を斧で滅多打ちにする。 「貴様の死に場所は!ここだ!ここだ!ここだぁぁぁ!!」 斧と拳の乱れ打ちをした後、おもいっきりおでこで頭突きされて上条は近くのビルの壁にめりこむ。 「今日の俺は紳士的だ、運が良かったな」 どこが紳士的だ、途中変なの混ざってたし。 と思いつつ上条の意識は遠のいてゆく。 上条の意識が無くなると同時に吹寄も元に戻っていく。髪の毛は元の黒髪に、体も発育の良いいつもの体に戻っていく。そして周りを見渡して驚く。 「これは・・・・・・、何があったの?」 地面には大量の破壊跡、そして倒れ伏す3バカ+2人。 とにかく何があったのかと、吹寄は腕を組んで今までのことを思い出してみる。 (確か次の競技場に行く途中で3バカが居ないのに気付いて、前の競技場付近を捜していたら女の子と歩いてる上条当麻を見つけて、そうしたらなぜか知らないけど怒りがこみ上げて―――) 「それで・・・・・・」 吹寄は首をかしげる。 「それで・・・・・・、どうしたんだっけ?」 吹寄は、頭の上にたくさんのはてなマークを浮かべて首をかしげている。 遠巻きに見ている人の畏怖の顔にも気付かずに――― 「貴様らはぁ、俺の最高の玩具だったぜぇ!」 その後、上条ちゃんたちの行方を知るものは誰もいなかったのですー 吹寄ちゃん!暴力はだめですよー! とある穴子な吹寄制理 GAME OVER
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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」③ 前へ 戻る 次へ 347 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/11(木) 12 58 14.67 ID 4LyK3m2Mo 朝。昨日の夜が嘘のように、上条の日常が回っていく。 特筆すべきような不幸な出来事もなく、時間通りに学校へとたどり着いた。 開けっ放しの教室の扉をくぐると、まだ数の少ないクラスメイトの中に青髪がいた。 意図的に遅刻して小萌先生に叱ってもらうのが好きな男だが、 そういうのを狙わない日はかなり早めに登校するヤツだった。 「よう」 「あ、おはよ。カミやん。昨日あれからどしたん?」 「え?」 何気ない青髪の質問に、上条は思わず硬直しかけた。 「擦りむいただけとか言ってた割には戻ってこーへんし、いつの間にか帰ってたやん?」 「あ、あー」 その一言で合点がいった。同時にほっとする。 青髪に、吹寄の母乳を吸ったあげく手を繋いで婦人科に行き、 あまつさえ恋人同士になったことがばれたわけではなかった。 そういや昨日一件は、青髪たちと遊んでいた直後に起きたんだったか。 「保健室に行く途中で別のに掴まってさ」 「ふーん。……女の子?」 「な、なんでいきなり性別聞くんだよ」 「だってカミやんはカミやんやしね。で、新しい女の子にフラグ立てたん? それとも知り合いの子の高感度上げイベント?」 「ギャルゲーかっての!」 ったく、と呟いてペラペラの鞄から弁当を取り出し、机に入れて鞄を横にかける。 勉強道具なんてまともに持って帰らないので、上条の朝の準備はそれで終わりだった。 それを横目に、ジッと青髪が見つめる。 「今日はもう一言がないんやね」 「え?」 「いつものカミやんなら、『だいだい上条さんがモテるとかあるわけないだろ』的なことを言うのに」 「……だいだい上条さんがモテるとかあるわけないだろ?」 「怪しい!」 「言ってろ」 昨日、たしか吹寄とは下の名前で呼び合う仲になったはずなので、モテていることにはなるのだろう。 だけど、吹寄の顔を見ないとなんだか実感が湧かない上条なのだった。 トイレに行くかと、席を立ち上がる。 「なあカミやん」 「あん?」 「……今日のカミやん、ホンマに怪しいよ? なんか、まるで何か女の子ときわどいイベントをこなしたような――」 「なんでそんなことが判るんだよ」 「ほらそうやって誤魔化してトイレ行こうとするところとか!」 「違うって! 俺はトイレにも行けねーのかよ」 敗北者になるのかもしれないという不思議な焦りに押され執拗に問い詰める青髪に辟易しながら、 上条は教室の扉をくぐる。 「あ……」 「え?」 そういえば、今日は登校が遅いみたいで、まだ教室にいなかった。 吹寄が、いつもどおりのツンとした顔を驚いた顔に変えて、上条の正面に立っていた。 348 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/11(木) 12 59 10.91 ID 4LyK3m2Mo 「お、おはよう」 「え、ええ。おはよう。上条、ずいぶんと今日は早いのね」 「いや、いつもどおりだって。来れない日があるだけで」 「学生が学校に来られない日を抱えていること自体がおかしいのだけれど。 ねえ上条。あなた、暇よね。ちょっと手伝いなさい」 「え、何を?」 キッと睨みつける吹寄の言葉を反芻し、その意味を考える。 吹寄は一端覧祭の実行委員をしているはずだ。その件だろうか。 「書類運びとかか?」 「え? ……バカ、察しなさいよ。そういうことでいいから、ちょっとここで待っていて!」 「はい?」 はじめは何のことやら分からない上条だったが、焦った吹寄の態度を見て、ようやく気付いたのだった。 そうか、あれから時間も経ったし、また。 納得していると、鞄を置いた吹寄が教室から出てきた。 その背中越しに、青髪と視線が合う。愕然とした表情だった。完璧に怪しまれていた。 「なにをぼうっとしているの?」 「い、いやなんでもない」 「ほ、ほら。さっさと歩く!」 「おう、判ったから押すなって」 吹寄に連れられて、上条はクラスメイト達の視界からさっと消えた。 パタパタと、スニーカーのゴム底で廊下を叩く音を響かせる。 二人になってから顕著だったが、吹寄はどうも結構焦っているらしい。 「吹寄。大丈夫か?」 「……12時間は、結構長いわね」 母乳は3時間もあればそれなりの量が溜まる物だ。 12時間あれば、もしかしたら昨日の保健室みたいなことになっているのかもしれない。 「もしかして、漏れて」 「それ以上言うなぁっ! 馬鹿、そんなの、二人っきりになってから聞いてよ」 「わ、わるい」 吹寄は校舎の隅にある使われていない教室の鍵を開け、そこに上条を招いた。 普通の教室だから勿論ガラスがあって中が見えるのだが、 ダンボールの山や、大覇星祭で使ったらしい大道具などが山積していて視界は悪かった。 これなら、物陰もあるだろう。 後ろ手に、吹寄が部屋の鍵を閉めた。 「ここ、大覇星祭と一端覧祭の道具を押し込んだ倉庫代わりなのよ。 朝は、たぶん誰も来ないはずだから……」 「んっと、人に見えないように、ここでまた吸えば、いいのか?」 確認を取るように吹寄を見ると、返事をそっちのけでこちらをジト目で睨んでいた。 「吹寄?」 「呼び方が、違うでしょう。……と、と、当麻」 「お、おう。そっか、そうだったよな。制理」 秋の柔らかい日差しが差し込む窓際に吹寄を連れて行く。 外を見下ろすと学生が見えるが、カーテン越しのこちらを気にする相手はいないだろう。 廊下側からは完全に死角になる場所だった。 「結構、溜まってる?」 「もう、そういう言い方は私が淫乱みたいに聞こえるじゃない。母乳は、溜まっているけれど」 「じゃあ、飲ませてもらったらいいんだな?」 「うん」 吹寄が、きゅっと上条の袖を握った。 そして顔を見上げて、ポツリとこぼす。 「当麻。その……吸って、くれない?」 382 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/19(金) 23 58 56.60 ID hHNGkLRJo 上条は、吹寄のその言葉にゴクリと唾を飲みこむ。 やっぱり、女の子の胸をその目にはっきりと収めて、10分間くらい自分の口で吸うのだ。 それで興奮するなというほうが無理だった。 だが逸る気持ちを抑え、とりあえず、上条は吹寄を抱き寄せる。 「あっ……」 「制理」 「……当麻」 ぎゅっと抱きしめたい衝動に駆られるがこれまた理性で必死に押し留める。 12時間待って、たぶん母乳は今にもこぼれそうな状態だ。 抱きしめてしまえば、またブラを汚すことになる。 「昨日も怒られたけど、胸、吸う前にキスしていいか?」 「いいわよ。ただ、あんまりその、すごいのは駄目」 「注文が多いな」 「だって、仕方ないでしょう。胸がこんなことになっているのは、私だって望んだわけじゃないんだし」 「それはまあ、そうだけど」 上条は吹寄の顔をそっと覗き込み、唇を近づけた。 化粧っ気のほとんどない、素のままの優しい色の唇に自分の唇を重ねる。 ダンボールだらけの茶色いバックグラウンドと部屋の誇りっぽさは原点だが、 燦燦と窓から差し込む秋晴れの朝の光は、なんだか不思議な気持ちになる。 官能的というよりも、朝から恋人と一緒なのだという充足感というか。 「ん――」 「おはよう、制理」 「え? ええ、おはよう。何でまた挨拶をしたの?」 「朝から一緒で、なんか嬉しい」 「っ……!」 怒ったように吹寄が唇を尖らせる。頬が赤いので照れ隠しなのは一目瞭然だ。 その分かりやすさがまた、可愛かった。 「それじゃ、吸うな?」 「は、早くしなさいよ。始業までもう時間もないんだから」 「おう。……で、どうやってする?」 「え?」 ここにはベッドも椅子もない。 つまり、上条の口の高さに吹寄の乳房を持ってくることが、比較的難しかった。 二人で顔を見合わせ、思案する。 「あ、あなたがしゃがみ込めばそれでいいんじゃないの?」 「んー」 上条は賛意をあまり示さないまま、とりあえず吹寄の正面に跪く。 高さの位置関係としては、そこまで悪くなかった。 ただ、いろいろ不満があるらしい。 383 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/20(土) 00 00 16.26 ID CLtr4NeJo 「この姿勢で10分はしんどいな。制理もそうだろ?」 「え? 私は別に」 「吸われてるうちに、制理も結構没頭して姿勢崩すし」 「ないっ! そんなことないわよ!」 「えー」 吹寄に自覚がないのか、認めたくないだけだった。 上条ははっきりと昨日の吹寄の痴態を覚えている。 「やっぱ、膝枕のほうがいい」 「え?」 「座ってくれよ、制理。足伸ばしてさ」 「……こうすれば、いいの?」 また、むっと怒ったような顔をして吹寄が地面に腰を下ろした。 祭りが近く人の出入りがあるせいか、地面は掃かれてそれなりに綺麗だ。 上条は、スカートを気にしながら足を伸ばして座った吹寄の太ももの上に、 自分の頭が来るように調整しながら、床に寝そべった。 「ちょ、ちょっと?! その、当麻……?」 「やっぱこの方が安定していいだろ」 そして、男の浪漫でもある。彼女の膝枕というのは。 吹寄の太ももは柔らかかった。そしていい匂いがする。 見上げると吹寄と視線が合う。 なんだか困った顔をしていて、自然と上条は笑いがこみ上げてしまうのだった。 「な、何よ」 「可愛いよ」 「馬鹿」 「ほら、吸わせてくれるんだろ?」 「う、うん」 「ブラとキャミソール、脱ぐのか?」 「馬鹿! そんなわけないでしょう。脱いだら、もし誰かに見つかったとき、言い訳できないじゃない」 「えっと、じゃあ」 「その、肌着はたくし上げればいいし、ブラは、フロントホックのをしてきたから」 吹寄はそう言って、キャミソールを引っ張って胸より上まで上げ、両手でブラの正面を隠すようにした。 そしてしばし、ためらいを見せる。上条は目の先数センチで広げられるその光景に、見入っていた。 やがて、ぷつりという音が聞こえ、ブラの留め金が外れたのが分かった。 肩紐を通して支えられていた乳房が、重力にしたがってぷるんと震えた。 自信はないが、心なしか張ったような、そんな印象を受けるたわわさだった。 そっと、上条は手で外れたブラのカップを脇にやった。 昨日初めて見たばかりの、吹寄の胸、その乳首の先端までが露わになった。 そこに、上条はむしゃぶりつくように、吸い付いた。 「んっ!」 必死に我慢をするように、鼻から掠れるような声を、吹寄は漏らした。 たぶん、まだコレくらいなら、教室の外の誰かに悟られるようなことは無いレベルだった。 390 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/20(土) 16 37 36.38 ID CLtr4NeJo 「んっ……当麻、その、ちょっと優しく、吸って」 そう言われても、上条としては、そんなにがっついているつもりはない。 位置関係として上条の頭が吹寄の乳房より下にあり、吸いやすいだけだのようだった。 そのせいか、じゅわっと母乳が口の中に広がる。 昨日のより、コクがあって飲み応えのある味だった。 「今日も、美味い」 「ば、馬鹿。そういう報告はいらないのよ」 そう言いながら、吹寄は少しかがんで、上条の吸いやすいように乳首の位置を直してくれる。 そして、腕の中にすっぽり抱き込むように、両手で上条の頭を包み込んだ。 さわさわと、吹寄の吐息が髪に掛かる。その雰囲気に上条はある種の感動を感じていた。 このまま眠ってしまいそうなくらい、安心する。 「当麻」 「ん……」 上条は置き場の定まらない腕を吹寄の腕や腰に触れさせる。 なんだかその甘えた雰囲気が可愛くて、吹寄はつい微笑みを口元に浮かべた。 朝から母乳を吸ってもらうお願いをしなきゃいけないので、 学校に来る前まではあれこれと悩んでもいたし、上条に迷惑がられるかもと心配していたが、 こういう安心しきった顔を見ると、嫌だとは思われていなかったのかなとほっとする。 張った感じがしてしんどかった乳房の感じも、すぐにいつもどおりくらいの感じになってきた。 「こっちも、お願いね」 「ああ」 上条の口の中から、今まで含ませていたほうの乳首を放させる。 そしてもう片方の、まだ飲ませていないほうの乳首に吸い付かせた。 つんつんと、口の中にうまく乳首が収まるまでに二三度唇と乳首がぶつかった。 そしてうまく乳首を含むと同時に、上条が唾液で乳首を濡らしながら、ちゅ、と乳首に甘噛みをした。 「んっ……」 じゅわ、と自分の中から母乳が漏れ出していく感覚がする。 昨日、初めて感じたときには戸惑いしか覚えなかったのに、 すでに授乳するとなんとなくほっとする自分がいることに吹寄は気付いた。 上条が上手く吸い始めたのを確認して、吸われ終わったほうの乳首のケアをする。 ポケットからハンカチを取り出し、乳首に当てる。 早く拭かないと上条が吸ったときにつけた唾液がひんやりしてちょっと嫌なのだ。 かなり気を使って、そっと唾液を拭っていく。 乳首を拭くと、乳房の本体に対して折れるように、くにゅりと曲がる。 それでピリッと吹寄の背筋に電気が走った。 乳首が、完全にツンと立っているせいで拭くのも難しいのだった。 391 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/20(土) 16 38 18.91 ID CLtr4NeJo 「拭こうか?」 「えっ?」 「ほら、ハンカチ貸して」 「ちょ、ちょっと。自分で――んっ! 駄目、吸いながらそういうのは反則よ」 「いいだろ」 非難の目を上条に向けると、いたずらっぽく目が笑っていた。 口元は自分の乳房を吸っているので良く見えない。 上条が、吹寄から取り上げたハンカチを人差し指の先に巻きつけた。 ちょんと、それを吹寄の乳首の傍に押し当てる。 「当麻……手つきがいやらしいわよ」 「制理こそ、乳首立ってる」 「?! そ、そんなの! 吸われたんだから仕方ないでしょうが!」 「気持ちいいか?」 「馬鹿! そんなことない!」 「ふーん」 ちゅくちゅくと、ひときわ大きく上条が音を立てて吹寄の乳首を吸い上げた。 舌を乳首に絡み付けるようにしながら、ぬるりとした感触を吹寄の与える。 「ひゃんっ! あ、あ」 「可愛い声だな」 「馬鹿、馬鹿ぁ……」 そう言いながら、上条がハンカチ越しに、吸い終わったほうの乳首をもてあそぶ。 乳首の周りを円を描くようにハンカチで擦り、時折弾くように、乳首を攻める。 「んっ、ちょ、っと。駄目……」 「いいだろ? 俺、制理の胸、好きだし」 「……胸が、んっ、好きだって言われても、嬉しくない」 「胸だけって意味じゃないぞ」 「本当かしら」 「キスしたら信じてくれるか?」 「今は駄目。そういうのはちゃんと飲み終わってから――」 「キス、して欲しいんだな?」 ニヤッと、上条が笑った。それで自分が何を言ったのかに、吹寄は気付く。 「……そう思っちゃ、駄目なわけ?」 「いや、スゲー嬉しい。まあ、もうちょっと待ってくれ」 「もう……」 上条の手からハンカチを回収し、ため息をつく。 ぎゅっと抱きしめるように、もう一度吹寄は上条の頭を抱きしめた。 421 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/27(土) 11 55 59.12 ID wtqv7NWuo ちゅ、ちゅ、と時々上条が口元でそんな音を立てる。 「ん、ぁ……」 まさか外に聞こえるわけもないが、吹寄は自分の口から時々漏れるその声を必死に押し隠そうと、 抱きしめた上条の頭の近くで押し殺すように息を吐く。 それを聞かさせる上条はたまったものではない。 可愛すぎて、どうにかなりそうだった。 手が届くので、吹寄の髪をそっと撫でてやる。なんだか恨めしい顔で睨み返された。 「なんだよ」 「ずるい、わよ」 「え?」 「こっちは恥ずかしいのを必死に隠しているのに、あなたは気楽そうに吸ってるだけじゃない」 「いや、そう言われてもなあ。制理のおっぱい吸うの、楽しいし」 「……そ、そんなこと言われても別に嬉しくないわよ」 「喜ばせたいんじゃなくて、ただの本音だけど」 「……」 そんなことを言われてしまうので、吹寄は上条に勝てないのだった。 吹寄が拗ねてつい顔を逸らしたところに、すかさず上条はいたずらを仕掛ける。 乳首の周りを、なぞるように舌でつうっと舐める。 「はぁん!」 二人っきりの教室に、控えめ程度に吹寄の声が響く。 我に返った吹寄がハッと息を吸って、周囲をうかがう。 誰かに気付かれなかったかと、気が気ではなかった。 「大丈夫だって。今の位だったら教室の外には聞こえないだろ」 「馬鹿! そんなの分からないじゃない! もう、心臓が止まるかと思ったわよ……」 「ごめん。確かに母乳もそろそろ止まりそうだ」 「そっちは関係ない! もう、当麻。見つかったら二人とも怒られる程度じゃ済まないのよ?」 「……だな。ちゃんと学校に行ってる制理に迷惑かけるのは悪いな」 「あなたも、ちゃんと学校に来なさいよ」 「いや、上条さんも最大限の努力はしているんですよ?」 「それでこの体たらくって、どういうことよ」 どうせ上条はまた、赤点スレスレになるだろう。 恋人になったんだしちゃんと助けてあげなくちゃ、と吹寄は内心で心に決めているのだった。 やっぱりずっと先のことを考えれば、彼氏にはちゃんと頑張って欲しいし。 そこまで考えて吹寄は頭の中に湧いた未来像を慌てて打ち消した。 「制理?」 「なんでもない。ね、そろそろ止まった?」 「ん、勢いはもう全然ない。ちょっと噛んでも出なくなったし」 上条が唇を使って痛みを与えないように乳房に噛み付いているのには気付いていた。 それでも出ないということは、朝はこんなところだということだろう。 「そっか。それじゃあ、朝はこれで終わりね」 「ん」 ちょっと名残惜しい顔をした上条が可愛かった。 だから、撫でる代わりに上条のおでこにキスをした。 「せ、制理」 「ふふ。当麻も、照れることあるんだ」 「なんだよ」 「可愛い」 そう言って吹寄が笑いかけると、照れくさそうにしながら上条がハンカチをひったくった。 そして膝枕の体勢から体を起こして、自分が吸ったばかりの乳房を、やさしく拭いてくれた。 422 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/08/27(土) 11 57 04.56 ID wtqv7NWuo 「ありがとう」 「こっちこそ、飲ませてくれて、ありがとな」 「……やっぱり、吸いたいの?」 「そういうの聞かれると正直に答えるのが恥ずかしいだろ」 「ね、当麻。教えてよ」 「……笑いたきゃ笑えよ。制理の胸を吸うと、安心する」 「……」 ストレートな物言いはヤバイ。上条は恥ずかしくて死にそうだった。 同時に、吹寄も言葉が口をついて出てこなかった。 なんだか恥ずかしいけど、嬉しくて。 「そろそろ、いいか?」 「え?」 「母乳の味も口からなくなったと思うし、キスしていいか?」 「あ、うん……」 上条が、隣に腰掛けた。 そして吹寄の腰と肩に手を当てて、そっと吹寄の唇を自分の方に引き寄せた。 「ん……」 触れるだけのキス。 おもわず瞑ってしまった眼を開くと、上条が優しい顔をしていた。 「好きだ、制理」 「ん、私も」 すごく、自然にそう言えた気がする。上条に、ごく自然にそう言ってもらえた気がする。 それが嬉しかった。 もう一度、惹かれあうようにキスをした。 今度はさっきよりも深く、舌を絡めて。 「ん、ん……」 セーラーの下に上条が手を滑り込ませて、まだブラを付け直していない胸に触れた。 くにゅ、と手のひらに包まれて乳房が形を変える。 上条の手のひらの温かみのせいで、じんわりとした快感が吹寄の脳裏に広がった。 「はぁ」 ふと、上条がキスを止めてどこかを見た。教卓の上、時計のあるところだ。 つられて吹寄も見ると、もう、チャイムが鳴るまで五分もなかった。 「あ。もう、行かなくちゃ」 「だな。嫌だけど、仕方ないか」 「うん……」 「ほら、ブラつけてやるから」 「う、うん」 もう一度キスをしてから、上条はブラの両カップを手に取り、ぐっと真ん中に引き寄せた。 先ほど外すところをみていたから、付け方は分かる。 「あ、ちょっと待って」 吹寄が、開いた両手で乳房の位置を整える。 すっぽりとカップの中に乳房をしまいこんだのを確認して、上条はパチンと留め金を留めた。 二人で、はぁ、とため息をつく。吹寄が制服を軽く調えると、もう、それで日常が戻ってきてしまった。 「当麻。ねえ、お願いがあるんだけど」 「なんだ?」 「お昼も……その、して欲しいの」 「ん。放課後より昼のほうがいいんだな?」 「放課後は、あたしも忙しいから。絶対に時間が取れるとは分からないし、 家に帰って夜になることにはまた困ったことになっちゃうから」 「じゃあ、昼にまた」 「うん。ごめんね」 「謝るなって」 「ありがとう。それじゃ、教室に戻りましょ」 「ああ」 二人がいたのは、もとより人通りの少ない一角にある教室だ。 大した問題にぶつかることもなく、二人は教室に戻った。 朝の授乳を無難にこなせたことに、二人は安堵していた。 440 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/03(土) 12 56 36.44 ID n8P+J+uno 始業前のあの蜜月もはるか遠く、余韻に浸るうちにあっという間に昼前になっていた。 目の前で熱心に喋る小萌先生も、あと15分位したら上条たちに昼食を取る権利をくれることだろう。 要は、四時間目の終了間際なのだった。 「ふぁ……」 うつむいて、欠伸をかみ殺す。 教師にしてみれば学生の欠伸など日常茶飯事だ。それくらいで咎められたりはしない。 だが、それに反応したのか、青髪がこちらを振り向いた。 朝からなぜか、時折こちらを見てくるのだ。 普段は授業中に上条に興味を持つ男ではないし、色々後ろ暗いところのある上条としては落ち着かない。 その黒髪を眺めながら、自分の彼女になってくれた女の子の綺麗さにドキドキする。 だが遠くに座る吹寄は何処からどう見ても完全にいつも通りで、不審な点など欠片もなかった。 その平静さがちょっと寂しいというか、もうちょっとドキマギしてくれてもいいのになと思わないでもない上条だった。 「ふぅ、説明はここまでで、残り時間はプリントをやってもらおうと思ったですけど…… 今日はお疲れの子が多いですね。普段は真面目な子も、ちょっと上の空ですし」 教卓の上で頬に手を当て、小萌先生がそうぼやいた。視線はたぶん、吹寄のほうを向いているように思う。 指摘された自覚があったのか、吹寄が僅かに慌てたのが分かった。 まあ、ずっと吹寄を見つめている上条以外に気付いた学生がいたかは分からないが。 「上条ちゃんが黒板に集中してくれないのは良くあることですけど、 授業中ずっとだとさすがに先生は悲しいです」 「へ?」 突然、名指しで怒られた。 「まあいいです。さてそれじゃ、眠たくて目を擦ってる学生さんたちに、刺激的な話をしましょうか。 先生はこのクラスの、つい昨日出来立ての新婚カップルさんを知ってしまったです」 「「「「?!?!?!?!」」」」 ざわ、ざわ。 しゃっきりと起きていたクラスメイトが騒然となる。 一体誰と誰だよ、という感じを装って、上条は辺りを見渡した。なんとか第三者に成りすますためだった。 異端審問官の如く、周囲の男子がギラギラとした視線を部屋中に飛ばしまくっていた。 なんとなく、青髪と視線が合うと不味い気がしたので、あたりを見渡す振りをしながらも、そちらに目は向けなかった。 ……が、視界の端っこで青髪がずっとこちらを見ているらしいのは、なんとなく見えた。 吹寄は、たぶんいつも通りの態度なのだろう。 基本的に興味がない、という感じで筆箱をかき回して、シャーペンの芯の追加を行っていた。 「せんせー! それって誰と誰ぜよ?」 土御門が手を上げて小萌先生に問いかける。クラスメイト達も一様に頷きながら、教卓の前に注目する。 だが小萌先生はうふふと笑って、ほっぺたに手を当てるだけなのだった。 「それはプライバシーですから言えないのですよ。でもとってもいい男の子と女の子のカップルなのです」 小萌先生は心からそう思っているように、嬉しそうにそう言う。上条がなんだかそれがむずがゆかった。 だがクラスメイトとしてはまるで役に立たない情報だった。 なにせ、小萌先生はクラスの男子女子全てを、とってもいい子だと思っているのだ。 カップルの特定情報にはこれっぽっちもなりえない。 上条は小萌先生がそれくらいのネタ晴らしで満足してくれることを、第三者を装った表情の下で願った。 だが、小萌先生の顔は依然として、幸せそうで。 441 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/03(土) 12 57 15.38 ID n8P+J+uno 「彼女さんのほうはお付き合いをはじめたと聞いてちょっとびっくりしたです。 彼氏さんのほうは、とってもやんちゃでしたけどようやく落ち着くかも知れないですね」 まあこれくらいじゃわからないですよね、という感じで、 ようやく満足したらしく小萌先生が一息ついて、手に持ったプリントをトントンと整えた。 「さ、それじゃプリント配るですよー」 小萌先生が、この警戒感のある空気からいち早く抜けて、日常に戻る。 だが学生達はそれに追随する気配がなかった。 授業に興味のない学生も、皆が顔を上げてクラスのどこかを眺めている。 上条の席までプリントが回ってきたのでそれを手に取る。 プリントが来たんだからそりゃ問題解いたって不自然じゃないよな、と思いながら視線を手元に落とす。 クラス全体にプリントが行き渡ったらしく、静かになってきた。 追及の手がそれでやんだかと、ほっと一息つく。そして何気なく、上条は顔を上げた。 「……?」 クラスの、大半がじっとこちらを見ている。 プリントなんてそっちのけだった。 誰を見ているのか確認するため、一応上条は自分も後ろを振り返った。 「何処見てるん、カミやん?」 「え……?」 すっとぼけたふりをしながら、上条は周囲を見渡し、視線の集中している点を計算する。 どうみても自分だった。 「ちょ、ちょっと皆、先生も悪かったですけどプリントはやってくれなくちゃ困るです」 「先生」 「なんですか?」 青髪に呼びかけられた小萌先生が、首をかしげる。 「先生は今まで、このクラスの男子で誰のことを『やんちゃ』って言ったことがあるか、覚えてるんですか?」 「えっ?! そ、それは……どうでしょう。男の子はやんちゃなくらいがいいですし、 そういう子は何人かいると思いますけど」 思い当たる節が、小萌先生にもあったのだろう。戸惑う表情に焦りが見えた。 それを聞いてクラスメイトの大半が、確信した。 「なあカミやん」 「……授業中だぞ」 「小萌先生が『やんちゃ』って言うとき、大概誰のことを指してるか、カミやん知ってる?」 「お前か? 青髪」 「それやったら嬉しいんやけどねえ」 青髪は小萌先生に怒られるのが好きらしい。嬉しいというのは本音は本音だろう。 だが、今の台詞にはそういう羨ましさ以外に、何か黒いものが混じっていた。 「カミやん。小萌先生の『やんちゃ』と言えば、それはカミやん以外の男子は指さへんよ?」 442 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/03(土) 12 58 07.06 ID n8P+J+uno クラスメイトみんなが、コクリと頷いた。 「お、おいおい。いきなり何言い出すんだよ。上条さんがもてたためしなんかありませんのことよ?」 その上条の言葉に真正面から反論する人間はいなかった。確かに、今日まで恋人を作ったと言う噂はないからだ。 だが、ざわざわと囁きあう言葉の一つ一つを拾ってみると、 不良に絡まれてるところを助けてあげただとか、 階段で転んで怪我しそうになった女の子を助けてあげただとか、 ○○さんは上条君のこと格好良いかもって言ってただとか、そういう話がひしめいていた。 小萌先生の言うやんちゃというのは、困っている人は放っておかないところだとか、女泣かせなところとか、 そういういろいろある上条の武勇伝をまとめての評価だった。 上条は、そのクラスの雰囲気にいたたまれなくなって、つい、味方を探した。 遠くで吹寄が、ちょっとムスッとした顔で、こちらを見ていた。 「カミやん何処見てるん? 誰と視線を合わせた?」 「っ?!」 上条の視線の方向を、一斉にクラスが追った。上条のいるところから教室の対岸方向だ。 あわあわとしてる小萌先生を尻目に、次は上条の相手探しらしい。授業なんてお構いなしだった。 そちらのほうにいる女子が、自分ではないと言う感じに手を振りながら、正解は誰かと視線を工作させた。 青髪が、その中でも際立って不審な一人の女の子に、視線を向けた。 吟味するように、じっと眺める。 黒髪の綺麗なその女の子は、その視線から逃れるように居住まいを正した。 「なあ姫神さん。まさか、カミやんと姫神さんって」 「……違う。私じゃ。ない」 「で、でも。たしか姫神さんって転校前からカミやんと知り合いって聞いたよ?」 「それとこれとが。全然関係ない」 困ったように姫神が首を振ると、さらさらと髪がウェーブを描く。 クラスメイトが再びざわめきだした。 曰く。 「上条君を追いかけてこの学校に来たって事だよね?」「じゃなきゃこの学校選ばないよね?」 「大覇星祭のとき二人で一緒にいるところ見かけたって!」「え、じゃやっぱりあの頃から?」 「っていうかどう見ても姫神さんは上条君のこと好きじゃん」「えー、それはあんたの目がおかしい」 「姫神さん隣のクラスの男子にコクられた時、他に好きな人がいるって言ったらしい!」 「その噂、告白自体ガセって聞いたぞ」「俺も。ってか姫神って男に興味あるか?」 「俺喋ったことない」「俺も」「俺も」「俺もだ」「上条はこないだ一緒に弁当食ってたぞ」 「上条……クソッ」「なんかあの時、姫神慌ててたよな?」 「あれ上条がブラのホック外したらしいぞ」「ハァ? どこのラブコメだよ。ってかどうやったらそんなことに?」 「上条に常識が通用するわけねーだろ」「ま た 上 条 か」 一つ一つは上条には聞き取れないのだが、どういう悪意があるのかは良く分かるのだった。 特に男子の中で、上条に対する敵意が膨れ上がっていくのが分かる。 どうも、上条の相手が姫神らしい、という方向で推測が行われ、 しかも集団心理によってそれが事実かのように思われ始めているらしかった。 なんとかなだめようとは思うのだが、上条が何を言っても火に油を注ぐことにしかならない気がした。 「ちょっと! いい加減にしなさいよ!」 耐えかねた、という感じで吹寄がバンと机を叩いた。 それで、ピタリとヒソヒソ話が止む。 「まだ授業中でしょうが。集中しなさいよね」 「そ、そうです! プリントは宿題とは別ですから、皆が出来るまで授業は延長するですよ?」 冷淡な感じを装って、小萌先生がそう言った。 空腹で死ぬ、やめてくれといった声が生徒の間で上がる。 しかたなしに、のろのろと皆、プリントを解きに戻った。 上条は顔を上げて、吹寄を見る。 ゴメンと言うつもりで軽く頭を下げたら、ふんとすげなくそっぽを向かれてしまった。 事情を理解している小萌先生がその光景を見て、ニッコリと笑ったのだった。 前へ 戻る 次へ
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【種別】 人名 【初出】 九巻 【CV】 藤村 歩 【解説】 上条当麻のクラスメイト。 背は高い方で、スタイルの良い巨乳。が、別名「美人なのにちっとも色っぽくない鉄壁の女」。 アニメ『禁書目録Ⅱ』では原作より更におっぱいが特盛、且つ前髪が増量されておでこが狭めになっている。 やたらと健康志向で、通販番組の影響か、長袖の体操服の中に様々な健康飲料を仕込んでいた。 学校での昼食でも、基本的に通販で購入した健康食品を食べている。 あつあつシープさん 一日一〇〇回ニギニギするとα波が促進される健康ボール 脳を活性化させる十二の栄養素が入った能力上昇パン 等、通販の商品をつい買ってしまい、やはり役に立たず大損をするお茶目な所もある。 健康に気を使っているためか身体能力は高く、 大柄の青髪ピアスと筋肉質な土御門をそれぞれ一撃で沈め、タフな上条さえ頭突き一撃で吹き飛ばした。 結構仕切り屋かつノリがいいところもあり、鍋パーティーの際には吹寄おでこDXを展開してクラスをまとめたり、鍋奉行を務めたりしていた。 クラスメイト曰く「カミジョー属性完全ガード」を誇る凄い人。 ただし、これはあくまでも第三者による評価に過ぎず、本人は上条のことは好きでも嫌いでもない。 裏を返せば、私情を挟まずに上条と対峙出来る性格ということであり上条の起こす桃色な事故にも一切動じない姿勢を見せる。 本人の真面目な性格も幸いして、共通の目的が出来た時には肩を並べて行動を共にすることも多い。 【作中での行動】 九、十巻。皆が楽しむ為大覇星祭を成功させようと実行委員に立候補。 クラスにも気合を入れる為、発破をかけまくった。 しかし、競技の審判をしていたところ、玉入れの棒に付いていた『速記原典』に触れてしまい、 その自動迎撃機能により卒倒してカエル顔の医者の病院に運ばれる。 幸い命に別状は無かったが、一日目は競技に参加することができなくなった。 クラスの指令塔も勤めていたので、とある高校が順位で常盤台に大幅に差をつけられることに繋がってしまった。 漫画版『禁書目録』第八十五話では、上条と姫神のお見舞いに行った様子が描かれた。 SS一巻。仕切り屋な性格・ノリの良さを発揮し、鍋パーティーの際には吹寄おでこDXを展開してクラスをまとめたり、鍋奉行を務めたりしていた。 十四巻。上条・土御門・青髪ピアスのバニー趣味についての喧嘩を仲裁したが、結果親船先生に四人もろとも怒られることになった。 罰の草むしりに向かう途中で青髪ピアスと土御門は逃亡。 二人で草むしりをしている内にフォークボールの話になり、いつの間にか野球をすることに。 流れ弾が親船先生に当たり、二次被害を引き起こしてしまった。 十六巻。上条が質問をして授業が長引いたことで、クラス単位で学食に乗り遅れる。 土御門の情報を元に作戦立案を行い、 三バカと共に学校を抜け出し、実働部隊として昼食確保を行った。 十八巻。美琴がファミレスでハンバーグを食べている際、姫神と居る様子が描かれた。 新約二巻。一端覧祭にもやる気を見せており、準備期間に何をしているのかと上条に問い質した。 新約五巻。一端覧祭の実行委員に立候補。上条・土御門・青髪ピアスの三人を相変わらずどついている模様。 上条にクラスメイトの食べ物を買ってくるように指示している。 新約九巻。オティヌスによって作り変えられた世界の中で、「上条当麻が極悪人として認知されている世界」にて上条に遭遇。敵対心を露わにし、ガラスの破片で上条を刺した。 新約十三巻。防犯オリエンテーションの治安役として登場。けたたましい声を上げながら上条達を追いかけ回した。 新約十五巻。オティヌスのことをフィギュアだと思い、彼女を肩に乗せている上条にドン引きした。 新約十六巻。大熱波の中、とある高校でサバイバルをしていた。高所から落ちた上条を電気ショックで蘇生し、珍しく涙目を浮かべる様子を見せた。 『超電磁砲』第六話にてそれらしき人物の後ろ姿が登場した (紙パックの何かを飲み、前髪をかき上げてとある高校の夏服を着ている)。 第四十二話では台詞と顔出しで登場。 姫神と一緒に大通りで大覇星祭当日の動線を検討している姿が、初春と佐天に目撃された。 第四十四話では運営委員として食蜂のバッグを没収する様子もあった。 第七十九話。姫神の視点で登場。姫神が吹寄に憧れている様子が描かれた。 第八十二話。フレンダと猟虎の戦闘の最中にすれ違う。 鍋は食べたばかりという発言から『禁書目録』SS一巻の翌日以降ということが分かる。 第九十七話。「母性の象徴」の例として美琴の回想に登場した。 【口調】 言葉遣いはやや堅めだが、口調そのものは女性的(シェリーのように男言葉が混じったりはしない)。 小萌先生に対しては敬語で礼儀を尽くし、姫神にはさん付けで親切に接しているが、 上条に対してだけ二人称はフルネームか「貴様」。 基本的に上条が何を言っても説教に変換する傾向があり、彼との会話では常にどこかトゲトゲしい態度を取る。 例)「だらしがない。それは心因性ではなく朝食を抜いたことによる軽い貧血状態よ。 ほら水分とミネラルがあれば問題ないわスポーツドリンクで補給しろそして立ち上がるのよ上条当麻!」 「何よ。あたしの部屋がアイデア調理器具でいっぱいになってようが、 雑誌で見た時は便利そうだったんだけど、いざ手元に来ると大した事なくて、 結局二回か三回使ったまま後は放ったらかしにしてようが、貴様には何の関係もないじゃない!」 【余談】 アニメ『禁書目録Ⅱ』からCVは一貫して藤村歩氏が担当していたが、 同氏は2019年4月1日をもって無期限の活動休止に入った。 その後にサービスが始まった『幻想収束』では藤村氏が担当している(活動休止前の収録と思われる)。 以後に放送されたアニメ『超電磁砲T』での彼女の出番は固法美偉へ変更・またはカットされた。 今後のメディアミックスでのCVがどうなるのかは不明である。
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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」④ 前へ 戻る 次へ 456 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01 57 10.81 ID PL/4xJCfo 「それじゃ、チャイムも鳴ったしこれで終わりにします」 起立、礼と日直が号令をかけ、小萌先生の退室を見送る。 これで上条のクラスは昼休みに突入した。延長もほとんどなかったので、晴れて昼休みを取れることになったのだが。 「さ、さー昼飯昼飯っと」 シンと静まり返った教室に、白々しく上条の言葉が響く。 昼休みなのだ。もっと、普段ならみんなはしゃぎまわるし、煩くなるはずなのだが。 ……明らかに、そういう気配はなかった。 「なあカミやん。さっきは吹寄さんに邪魔されたけど」 トントンと静かな手つきで青髪がノートと教科書を整え、机に仕舞った。 周囲のクラスメイトも、青髪と心を同じくしているらしい。 「姫神さんとの関係について、ちゃんと喋ってもらおか」 コクリと、周囲が頷いて同調した。 遠めに姫神が戸惑っているのが分かった。 そりゃあそうだろう。たまたま知り合いである自分のいる学校に転校してきたからって、 まさかそれだけで好きな男の子を追っかけてきたとか、実は付き合ってるとか、 そういう噂を立てられたら迷惑に決まっている。 ちゃんと、否定するのも礼儀だとは思う。もちろん姫神に興味がない、というわけではないけれども。 ……まあ、つい昨日から、興味を持ってはいけなくなったのだった。 「ほらカミやん、黙秘も事実を認めないのも、誰のためにもならへんよ」 「待て。ちょっと落ち着いて話をしよう」 「誰が興奮してるように見えるん?」 「興奮って言うかお前完全に自分の妄想を事実認定してるじゃねーか」 「……まさか、カミやんシラ切るつもり?」 すっと青髪の声に冷たい響きが混じる。 彼女なんているわけねーよ、なんて嘯きながら影でこっそり付き合う男と言うのは、 およそ人として最低の部類に入る。友好的な関係など、結ぶ余地はない。 そんな風に青髪は暗に宣告していた。 「シラを切るっていうか、姫神と付き合ってるって事実は否定しないと、姫神に悪いだろ」 「……」 なっ?と姫神に話を振ると、姫神はつまらなさそうな顔をした。 「確かに私は。この学校を選ぶ時に上条君がいるなんて知らなかった」 「で? 知らなかったけど、同じクラスメイトにまでなっちゃって、 急激に意識し始めて二人の距離は見る見るうちに……ってことなん?」 「違うよ。別に。その。私は。上条君とはなんでもないし」 「そうだぞ! っていうかそういう変な気持ちなんかお互い持ってないっての! そういう邪推をするなよな、なあ姫神」 457 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01 57 46.87 ID PL/4xJCfo 否定する姫神に便乗して、上条は青髪に食って掛かる。 カップル認定された人間の両サイドから青髪を攻め立てるつもりだったので、 再び上条は姫神にアイコンタクトを送った……のだが。 なんだか、姫神の顔がひどくつまらなそうだった。 表情には乏しいほうだが、それに輪をかけて醒めた感じと言うか。 「……姫神さん?」 「君は。もうちょっと人の気持ちを察する能力を身につけたほうが良いと思う」 「へ?」 「別に。私と上条君とはなんでもないけれど」 「けど、何だよ?」 「なんでもない。それより。もう一度言うけど。上条君と私は。別に付き合っているわけじゃないから」 大きな声ではなかったが、姫神はそうクラス中に伝えるように宣告し、 そして周りの視線を一切無視してお弁当箱を取り出し、昼食の準備を始めた。 いつになく強い姫神の主張に皆はちょっと戸惑ったらしかった。 青髪の煽りに乗せられて騒ぎ始めたクラスメイトだったが、 どうもそれが早とちりらしいということになって、またざわつき始めた。 「またアイツの先走りか?」「青髪を信じるとかお前ゴシップを真に受けるタイプかよ」 「ってことは姫神はまだ相手ナシってこと?」「俺の春到来?」「それはねーわ」 「とりあえず声かけてみようかな」「俺こないだ二三言で会話打ち切られた」「俺も」「俺も」「皆一緒か」 「で、結局上条に彼女ができたって本当か?」「アイツは女子の気を引いといて放置する最悪なヤツだからなぁ」 「もしアイツが誰かと付き合えば空白を縫って俺が」「……止めろよ、そういう甘い期待をすると後が辛いぞ」 「まあ、上条に彼女が出来るとか、ねーだろ」「結局はそうだろうな」「発端は青髪だしな」 空腹は食事以外への興味を薄れさせるいいスパイスだ。 四時間目という時間帯は、むしろ上条に好都合に働いたらしかった。 「で、お前ら。お前昼飯は?」 「ボクはもう買かってあるよ」 「俺は弁当があるにゃー」 「ん、じゃあ俺パンでも買ってくるわ」 「……まさかカミやん、誰かと逢引?」 「っていうかお前はそういう迷惑な噂を撒き散らしておいて開き直るんじゃねーよ!」 きわどい反論をこなすのに冷や汗をかきつつ、上条は自然な素振りで教室を後にする。 姫神はもうそっぽを向いていて視線は会わなかったし、その近くに座る吹寄は、いつの間にかいなかった。 昼に会うことは、朝のうちに約束した事柄だ。 だからこの後上条はこっそりと吹寄と二人きりになりたいのだが、どうやって、それを成すか。 「もっかい教室に戻って、顔を合わせるのは危ないな……」 クラスメイトの視線のなくなった廊下で、上条はそう思案する。 メールか電話で確認しようと思ったところで、大切なことに、気がついた。 「俺……制理のアドレス、知らねーじゃん」 458 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01 58 53.23 ID PL/4xJCfo 由々しき問題だった。 学生カップルの癖に、互いのアドレスを知らないなんて、間抜けもいいところだ。 携帯が役に立たない以上、自分の足で吹寄を探すほかない、と言うことになる。 「見つかるか……?」 とりあえず、昼ごはんは用意するしかないので購買のパンを買いに行く。 そして腹が膨れる程度に見繕い、上条は吹寄を探してそのあたりをうろついた。 「あいつ、弁当派ではなかったよな」 そして購買にも学食にもいなかった。すでに昼食を買ったのだろうか。 準備のいい吹寄のことだから、その可能性は高かった。 となると吹寄がいるのは、どこだろうか。そのまま、二人であれやこれやをできる場所だろうか。 正直に言って、上条にはその心当たりはほとんどなかった。 無闇に変なところには行かない性分なのだ。何があるかわからないし。 心当たりというか、吹寄と二人きりで過ごした場所と言うと、 保健室か、あの倉庫代わりの教室くらいしかないのだった。 その二箇所をとりあえず当たってみるかと早足になったところで、横から声をかけられた。 「随分と挙動不審に見えるけど? 上条」 「え……先輩?」 廊下の窓際に背中を預け、豊かな胸元の下で腕を組んだ、上条の先輩。 雲川がニヤニヤと上条を見つめていた。 手には上条と同じパンの入った袋が下げられているので、あちらも昼食を買ったところなのだろう。 「先輩、購買のパン食べるんですね」 「珍しい行動なのは認めるけど。時々、この学校臭い垢抜けなさが恋しくなるんだ」 「普通の揚げきな粉パンをそこまで貶しますか」 「愛情の裏返しだよ。何もストレートだけが恋愛のアプローチじゃない」 「はあ」 なんというか、話がかみ合っているようでかみ合ってなかった。 というか常識的な上条の対応に取り合う気がないらしかった。 この聡明な先輩は、おそらくやろうと思えばそんなことは簡単に出来るのだろうが。 「それで、あちこちキョロキョロとしているのはどうしてなんだ?」 「え? いや、まあその」 「……どの女だ?」 「へ? てか先輩! どういう目で俺を見ているんですか」 「どうもこうも、極めて純正でフェアな目で見ているよ。時々悔しくなるがね」 「悔しいってなんでですか」 459 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 01 59 26.64 ID PL/4xJCfo この先輩は、基本的に上条をブンブン振り回して遊ぶタイプの人だった。 会った瞬間から、なんとなく不安を感じている。 だが、そんな不遜な雲川の態度が、一瞬だけ、揺らいだ。 上条にもなんとなくしか分からない隙だった。 「今日の夜、パーティがあるんだ」 「はあ」 「私には、エスコートしてくれる男性がいない」 「……先輩、もてるでしょ?」 「侍らせたい男にはもてないよ。私は高望みなほうだからな」 「はあ」 「上条。夜は、暇か?」 ニッと雲川が笑う。仮に吹寄がいなくても、断りの言葉は口にしただろう。 そう言う場所が似合う柄じゃないし、先輩のエスコートなど到底こなせないから。 だが、そういう事情に加えて、断らなければならない理由は、ちゃんとある。 「時間は、あります」 「そうか、それじゃ」 「でも、いけません」 「……どうして?」 「雲川先輩とは、なんでもない関係なので、そういうことは出来ないです」 「……」 雲川は、それ以上言い返さなかった。 聡明な人だから、もっと上条を困らせることは出来ただろうけれど。 「お前、落ち着いたな」 「へ?」 「台風に手を突っ込む立場の人間ではない、なんて気取っていたのが莫迦だったのかもしれないな」 「いや、言ってる意味全然分からないんですけど。どういうことですか?」 なんでもないよと雲川は手を振り、なにやら鈍重そうな体つきで、ふらふらと上条から距離をとった。 背中越しにポツリとこぼす。 「恋人のいるお前に、私はそれを言えないよ」 「えっ?」 「吹寄は保健室の前にいたぞ。じゃあな」 ひらひらと手を振る雲川を、上条は呆然と見送った。 吹寄との関係はせいぜい小萌先生くらいにしか、知られていないはずだったのだが。 ハッと我に帰って、吹寄を待たせるわけにも行かないからと上条は早足でそこを後にした。 478 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18 41 17.63 ID PL/4xJCfo 雲川先輩に言われたとおりに保健室に行くと、部屋の傍に吹寄がたたずんでいた。 こちらにはまだ気付かないらしく、落ち着かない様子で地面を軽く蹴っていた。 「吹寄」 「あ……」 一応人前なので、苗字で呼びかける。 それに気付いたのか、ほっとしたように吹寄の表情が和らいだ。 う、と上条は呼吸を乱した。普段はつっけんどんな顔をしているヤツなのに、 こうして時々見せる柔らかい表情は、なんだか悔しいくらいに可愛いのだ。 自分には勿体無い、と思う。人間、誰しも自分に対する自信というのは持ちきれないものだ。 こんなに可愛い吹寄の、立派な彼氏かと問われると頼りない気持ちになるのもまた事実だった。 「遅くなってごめんな」 「い、いいわよ。別に待ち合わせしたわけじゃないんだから。 むしろ思ったより早かったくらい。そ、その、どうしてここだと思ったの?」 「え?」 吹寄は、どういうつもりでここに来たんだろう? 怪我をしているわけでもなく、そして昼休みの保健室なんて千客万来もいいところだ。 こんなところで吹寄の胸を吸えるわけもない。 「いやその、さっき吹寄がここにいるって人に聞いたから」 「……」 なんだか、吹寄が期待はずれだと言う顔をした。 そりゃあそうなのだ。なんら待ち合わせ場所を指定していない相手と出会うために、 一番ありえそうな場所として吹寄が選んだのが、ここ、保健室前なのだ。 それは昨日、上条が付き合おうと言ってくれて、ファーストキスをした場所なのだ。 吹寄としては、むしろここ以外の何処で会うのだと言いたかったが、 肝心の上条はゆっくり購買でパンなんて買って、自分のことは二の次みたいだったのが気に入らなかった。 「上条は、やっぱり上条なのね」 「え?」 「なんでもない」 「あの、急かして悪いけどここにいると色々困るだろ? その」 「分かってる! ちょっと離れてついてきて。三階にいくから」 ぷいと上条に背を向けて、吹寄は早足で歩き始めた。 その機嫌の悪さに上条は困惑する。 吹寄以外の女の子と親しくしたとか、そういう理由で怒られるのならわかるが、 一体自分は、何か悪いことをしただろうか。 不自然にならないように、上条は吹寄の後を追いかけた。 479 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18 41 53.38 ID PL/4xJCfo 階段を上り、吹寄の姿を探す。 音楽室や理科室の集まる一角の一部、三年生向けの部屋を、吹寄は鍵を使って空けた。 吹寄と上条は、まだお世話になったことのない部屋。進路指導室だった。 特殊教室からはとっくに生徒はいなくなっていて人通りは少ない。 軽く目をしのんで、上条はその部屋に入った。 「お、お邪魔します……」 部屋に入り扉を閉めると、正面に置かれたソファに吹寄が座っていた。 状況によっては保護者も入れるような、ちゃんとしたつくりの部屋だ。 「上条、鍵を閉めて」 「あ、ああ」 不機嫌そうに言いつけられ、上条はそれに従う。 扉も簡素な教室のそれと違い、閉めたら簡単には開きそうになかった。 「ここ、大丈夫なのか?」 「……ここも一応、一端覧祭の資料があるのよ。悪いことはしているけれど、 まったくあたしに関係ない場所の鍵を借りてるわけじゃないから、大丈夫」 吹寄はそう言って、スカートの裾を直した。 ちょっと座高が低くて、短いスカートなら中が見えてしまいそうなソファだった。 もちろん吹寄は真面目に膝下まであるスカートを履いているので、そういうアクシデントは期待できない。 「えっと、吹寄」 「……まだ苗字で呼ぶわけ?」 「あ、悪い。……制理」 「取って付けられても嬉しくないけれど、まあそれはいいわ」 「俺、何処に座ればいい?」 「勝手にすれば良いでしょ」 気を使って、尋ねたつもりだったのだ。 機嫌が悪いときに近づかれたくないなら、対面のソファに腰掛けてもいいと伝えたつもりだったのだが。 判断を丸投げされてしまった。 「じゃあ、隣に座るな」 「……うん」 不服な態度を崩してはくれなかったが、拒まれないからたぶんこれで正解だったのだと思う。 上条が腰掛けるとソファは沈み込んで、吹寄の体を少し上条のほうに近づけた。 「制理」 「何よ」 腕を組んでみると、軽く睨まれた。 「何でそんなに怒ってるんだよ」 「別に怒ってない」 「怒ってないって、いや、そうなのか?」 「知らない」 480 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18 42 45.25 ID PL/4xJCfo また、そっぽをむかれる。機嫌が悪いのは間違いなかった。 なんだか、胸の話を振ると怒られそうなので、無難な話題を頑張って探してみる。 「えっと、吹寄が授業終わって出てからさ、姫神との話を、ちゃんとクラスの連中に説明しといた」 「っ! ……なんて?」 「え?」 「どう、説明したわけ?」 真剣な表情で吹寄がこちらを見た。 それに若干うろたえながら、さっきのことを思い出して説明する。 「姫神とは付き合ってないって、言ったんだけど」 「……そう、なんだ」 「いや当たり前だろ? 今俺は制理と、付き合ってるんだし」 「付き合う相手は一人だけって、ちゃんと分かってるんでしょうね」 「当然だ! ってか制理は俺のことどう思ってるんだよ」 「だって! いっつも女子がらみで変な事件起こすでしょうが」 「なんだよその評価。んなことねーっての」 「どうだか。だってそうじゃない。あたしも噂で聞いたことしかなかったけど、 姫神とは、転校前からの知り合いなんじゃない」 「そうだけど、関係ないって」 「じゃあなんで、姫神はここを選んだのよ。別にウチくらいの学校なんて山ほどあるのに」 「知らないって。別に転校してきてからも特別仲良くしてるわけじゃないし」 姫神と、他のクラスの女子との間に差をつけた接し方はしていなかった。 だっておんなじ友達だし、普通にクラスメイトだし、むしろ変な特別扱いのほうが失礼だ。 「じゃあ、授業中に姫神を見ていたのはどうして?」 潤んだ瞳で、ツンと唇を尖らせて、吹寄は最後にそう尋ねた。 それで、ようやく上条もなんとなく、察せた気がした。吹寄の不機嫌の種を。 「制理」 「何よ」 「姫神と制理って、席近いだろ?」 「ええ」 「俺が眺めてたのは姫神じゃなくて、制理だよ」 「え?」 「いや、当たり前だろ?」 好きな女のことを追いかけてしまうなんて、ごく普通の男の性だと思うのだが。 急に吹寄は慌てて、髪を整えるように手で梳いた。 「も、もしかして授業中あたしのことを見ているわけ?!」 「ああ。やっぱ、綺麗だなって」 「っ!? バ、バカ。恥ずかしいでしょうが」 「じゃあ姫神でも見てればいいのか?」 「駄目!! あっ……」 481 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/10(土) 18 43 29.21 ID PL/4xJCfo 限りなく素直な本音を、吹寄がこぼした。 そしてそれに気付いて、あっという間に真っ赤になる。 とても、それがいとおしかった。 戸惑う吹寄を、抱き寄せる。 「授業中は、窓の外か、黒板か先生か、制理を見ることにする」 「……まあ、あたしだけを見られても困るけど。でも窓の外は余計でしょ」 「体育やってる女子を見るって意味じゃないぞ?」 「そういうつもりで言ったんじゃないんだけど、何、上条、そういうのを眺めているの?」 迂闊だった。そりゃ体育やってれば女子だろうが男子だろうが見えるので、 自分で言ったことは否定はしづらかった。 「制理の後姿に、今日は釘付けだった」 「な、なんでよ」 「だって、綺麗じゃん」 「……褒めても、何も出ないわよ」 「え?」 何気なく吹寄はそういったのだが、間違いなく、吹寄の胸から出る母乳を上条は吸いに来たわけで。 「……つまらないギャグを言いたいのなら、聞いてあげるわよ」 「いや、いいです」 「まったく、もう」 吹寄が仕方ないと言った風に嘆息した。 どうも、怒っていた態度はちょっと軟化してきたらしかった。 「なあ制理」 「なに?」 「その、昼飯は用意してあるのか?」 「ええ。貴方と一緒で、パンだけれど」 吹寄はスカートのポケットから小ぶりの惣菜パンを二つ取り出した。 「パン食べるのと、制理の胸を吸うのと、どっち先にすればいい?」 「え? べ、別にどちらが先でも良いけれど」 「昼飯食った口で吸われるのはやっぱ嫌だろうし、先に胸吸おうか」 「それは気にしなくていいわよ。別に、貴方に吸われるのを汚いとは全然思わないから」 「ん、まあそういってもらえるのは嬉しいんだけど、実は飲み物を買い忘れてさ。 食べ終わった後、あんまり口の中がスッキリしないまま吸うことになるし」 「ウェットテッッシュがあるから、それは本当に気にしなくていいんだけど」 なんだか吹寄の言葉が歯切れが悪かった。 そういえば、吹寄も飲み物がないらしかった。 ……そして、よくよく考えれば、吹寄の胸からこぼれるそれは、まぎれもなく液体なわけで。 「と、当麻。まさか」 「いやいやいやいや! さすがにそんなことは考えてない!」 胸を庇うようにした吹寄の仕草で、何を疑われたのかすぐに上条は理解した。 いくらなんでもそれは変態的すぎる。 「じゃ、じゃあどっちからするつもりなのよ」 「どっちでも俺は構わないけど……」 気の強い吹寄のために選択権を遺しているつもりの上条なのだが、 そういう気遣いは必ずしも必要ではないらしかった。 一瞬、無言の空白がさし挟まる。 先導して決めてやるかと、上条が心に決めて口を開こうとしたところで。 くうっと、吹寄のお腹が可愛らしく鳴った。 「あ」 「……昼飯にするか」 「……うん」 ちょっと恥ずかしそうな吹寄の髪を撫でてやって、上条はパンの入った袋の口を開いた。 520 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18 57 39.98 ID lC4lpcXqo ガサガサとビニール袋がムードのない音を立てる。 二人っきりの部屋で、無言で出来合いのパンを開ける時間は、なんだかちょっと居心地が悪かった。 「制理」 「え、何?」 上条が呼びかけると、吹寄が手を止めて振り向いた。 吹寄もなんだか自分と同じような表情をしているのを見て、上条はようやく何が腑に落ちないのか理解した。 「キスしよう」 「へっ?! ちょ、ちょっといきなりどうしたのよ」 上条がまさかそんなことを言うなんて、という顔を吹寄がした。ごもっともだ。 確かに自分も今しがたまで考えつかなかった。 「だって、二人っきりになれたんなら、やっぱそういうことしたいって思うんだけど、だめか?」 「嫌なんてことはないわよ。ただ、びっくりしただけで」 「制理」 「あっ……とう、ま」 二人並んで腰かけたソファの中で、絡まるようにして二人で抱き合う。 吹寄を初めて抱きしめたのは、まだ24時間前にもならない。だけど随分、慣れてきた自分がいた。 吹寄も上条に体を預けるのに慣れてきたらしく、すっと吹寄の体が上条の胸の中に納まった。 頬に、手を添える。 「あ……」 「好きだ」 「本当に?」 「こんなところで嘘つけるほど、器用じゃない」 「……うん。それは、信じてあげる」 「なんか色々信用されてないのが納得行かないけどな」 「だったら、もっと信用させてよね」 「お、おう」 「大好き」 拗ねたような吹寄の顔が、言葉を重ねるごとに柔らかくなるのが可愛らしかった。 顔を近づけると、吹寄が目をつぶった。 「ん……」 唇を重ねる直前で、上条は顔を近づけるのを止める。 いつまでたってもキスがこないで不安になった吹寄が、そっと目を開けた。 その顔に、ニッと笑いかける。 「ねだる顔、可愛いな」 「えっ?! ちょ、ちょっとやめてよ。もう、なんで」 「意地悪してごめんな」 不意打ち気味に上条はキスをした。 吹寄は警戒してか、今度は目をつむらなかった。 「んん」 鼻で、そっと息をする。 唇をわずかに擦らせながら、上条は吹寄の肩にかけた手を、撫でるように下におろしていく。 鎖骨に触れると、吹寄の体が震えた。 「ん、ぁ……」 521 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18 58 26.43 ID lC4lpcXqo たっぷりとしたボリュームの胸に、上条は手を伸ばす。 救い上げるように掌で包み込むと、しっかりとした重みと張りが手に伝わった。 ひととおりその感触を楽しんで、手を背中に伸ばす。 あんまり胸ばかりに集中すると、吹寄は不満な顔をするのだ。 「はぁ、ぅ」 吹寄が、心の中に残していた最後の緊張をほどいて、くたりとなった。 大きく背中をなでてやると、安心してそうなるらしかった。 四度目のこういう機会で、ようやく吹寄の体のことが、わかり始めていた。 吹寄の手が、安定を求めて上条の腕から肩を這う。 「制理。首に」 「……うん。ありがと」 キスをやめて、短くそう伝える。そしてすぐにまた唇を重ね合わせる。 ちゅ、ちゅ、と水音が狭い部屋に静かに響く。 昼休みを謳歌する学生達の喧騒が遠くなって、本の古くなったような匂いがするこの部屋で、 上条は吹寄の体と唇に、夢中になった。 ソファの軋む音と、二人の服が擦れ合う音と、そして吹寄の熱っぽい吐息。 舌を絡めると、吹寄の呼吸がリズムを見失って、不安定になった。 「可愛い」 「ふぁ、あ……」 吹寄は返事をしなかった。ただ、漏れる声に喜色が混じったのが分かる。 髪を撫でながら、しばらく上条は吹寄の口の中を堪能した。 「当麻……」 「昼飯前に、ちょっとやりすぎたか?」 「べ、別に、そんなことない」 ツンと尖った態度をすっかり軟化させて、切れ上がった目のすみが柔和になってしまった。 その吹寄の状態に、嬉しくなる。人前でさらけ出さないようなところを、見せてくれるのが嬉しい。 もう少し、可愛がりたいと上条が考えたところで、もう一度、吹寄のお腹が可愛くなった。 「あ……」 「ごめん」 「何で謝るのよ」 「恥かかせただろ。まあ、俺は気にしないけど」 「うん……雰囲気壊してごめん」 「そんなことないって。ほら、とりあえず食べよう」 「そうね」 吹寄に、袋からパンの頭を出して差し出してやる。 いつもからそうだったかは覚えていないが、小さく吹寄がパンにかじりついた。 上条も自分のパンにかぶりつく。二人して無言の時間が、生じた。 522 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18 58 59.69 ID lC4lpcXqo 「……」 「……」 「う、美味いか?」 「え? まあまあ、かしら」 なぜかは分からないが、上条も、そしてたぶん吹寄も緊張していた。 別段学食のパンなど飛び切り美味しいわけでもないが、それにしても今日は味がしなかった。 なんというか、食べにくい。理由を考えると、そういえば口の中がカサついていた。 唾液の出が悪いのは、緊張の証拠か。 「なあ制理」 「え?」 「なんか、変に緊張しないか?」 「あ……当麻、も?」 どうやら思いは同じらしい。そうと分かると、途端にほっとした。 上条は吹寄を抱き寄せる。 「えっ?」 「食べながらで行儀悪いけど、なんかこの方が落ち着ける気がする」 「あ……ぅ」 「やっぱ嫌か?」 「ううん。そんなことない。なんか、そう言われて納得した自分がちょっと悔しかっただけ」 吹寄も、口の中にちょっと味が戻ってきたのを実感していた。 変な話だ。全くもって。 普通にパンを食べているより、上条に撫でてもらいながらのほうが、美味しいなんて。 そうやって目を瞑って、油断していたのが悪かったのか、 ちょっと面白がったような声の上条に、声をかけられた。 「制理」 「え?」 「あーん」 「えっ? ちょ、ちょっと」 「いらないのか?」 目を開けると、上条が吹寄の口元に自分のパンを差し出していた。 気を使っていないからなのか、それとも狙ってなのか、 ちょうどそこは、上条が齧って歯型をつけたところそのまんまだ。 そりゃあ、直接キスをしているわけで、今更こんなことで戸惑う必要もないのだが。 「もしかして、恥ずかしい」 「っ! べ、別になんでもないわよ、こんなの」 ニヤッと笑う上条を睨み返して、吹寄はそのパンに、口をつけた。 歯を立てて噛み切ると、そこそこ柔らかいパンの触感と、フィリングの味が口に広がった。 523 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 18 59 42.16 ID lC4lpcXqo 「美味いか?」 「ま、まあ普通でしょ。購買のパンなんだし」 「そりゃそうだけど。ほら、制理」 「ん?」 「俺にはくれないのか?」 「……コレが狙いで、やったんでしょ。変態ね」 「べ、別に普通だろ。俺と制理は、恋人同士なんだし」 「う……」 なんだか、むずがゆい。 そういう関係を、上条に歓迎されていると実感できるのは、嬉しい。 だけど、恥ずかしい。ストレートに言われると、顔が火照ってしまう。 「俺にもくれよ、制理の」 「……うん」 吹寄は内心で、ちょっとした冒険に出ようかと逡巡していた。 これくらい、恋人同士なら、その、普通よね。 手に持ったパンを差し出すことくらい、わけはない。 だけど、もうちょっと、その、恋人らしいのも、ありかな。 ……いい、わよね。 「制理?」 吹寄は、手に持ったパンを、自分の口に持っていって、小さく齧った。 そして、無視されたのかと戸惑う上条に向かって、唇を差し出した。 「え?」 「ん」 「いやだから」 「ん!」 説明なんて、したくない。そんなの恥ずかしくて出来ない。 だから、分かって欲しかった。 手で食べさせてあげるんじゃなくて、口移しをしようとしているのだ、と。 すぐに上条も察したようだった。ゴクリと、唾を嚥下するように喉が動いたのが分かった。 「行くぞ」 「ん……」 舌の上にパンの欠片を乗せて待っていると、上条が唇を重ね、こじ開け、吹寄の口の中に進入してきた。 その生々しい感触に、ゾクリとなる。 そっと、上条にパンを渡すために、舌で口の中のパンを押した。 すぐに上条の口が、それを引き込むように、うごめく。 「ん、ん、んっ……!」 524 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 19 00 40.39 ID lC4lpcXqo 普段のキスとも違う感触に、戸惑いという名の快感を、吹寄は覚える。 この倒錯的な感じが癖になりそうで、怖い。 上条には問われても絶対に正直になんていえないけれど、 吹寄はこの行為が、嫌いではなかった。 「んっ?! んっ、あ、ふぁ」 突然、上条がパンを引き込んでさらに、吹寄の口の中を犯してきた。 まだ口の中には、吹寄の咀嚼したパンの欠片があちこちに残っている。 それを綺麗に舐め取るように、上条の舌が吹寄の歯や舌を這い回る。 「とう、ま……ぁ。汚いよ」 「どこが?」 「どこ、って……」 「制理の体に汚いところなんてねえよ」 「ふぁぁ、ん」 そんな報告を、耳でされたら、駄目になってしまう。 支えるのが苦しくなって、吹寄は上条にしなだれかかった。 もう、ぐちゃぐちゃなのは口の中だけじゃなかった。 体も絡まりあうような、そんな心持ち。 「ほら、また一口」 「うん……」 今度は上条も、口移しだった。 自分でほお張るには少し大きいくらいの欠片を、吹寄は口に突っ込まれた。 緊張して味が分からないなんて思ったのをすっかり忘れて、 吹寄は陶然となりながらそのパンを味わう。 どこか冷静な脳裏の片隅で、もう二度と、このパンを今まで見たいに何気なく食べることは出来ないかも、なんて考えていた。 「半分くれ」 「え? あ、ん」 上条がまた、吹寄の口の中からパンを奪い取った。 もう咀嚼しかけで、吹寄の唾液と混ざり合って原型のないものだ。 そんなものを分け与えることが、欲しがられることが、たまらなかった。 口から少し、濡れた破片がこぼれた。それを上条が、舐め取る。 「ん……」 「制理の顔、すげえ蕩けてる」 「馬鹿ぁ……! あなたが、変なことをするから」 「俺のせいか?」 「どう考えてもそうでしょ」 「じゃあ責任取らなきゃな」 「うん……取ってよね。あっ」 上条が、再びパンの交換を始めた。 どちらかが噛んで、どちらかに渡し、そしてまたそれを返してもらって。 そんな行為を繰り返す。酷く時間の掛かる昼食だった。 そして食事というのは食欲を満たすための行為なのに、いつの間にか、 それをしながら、上条に胸をやわやわと弄ばれていることに気がついた。 525 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/09/18(日) 19 01 28.68 ID lC4lpcXqo 「ん、ふ、はぁん」 食べながらのせいで口を開けないから、必然、鼻から息がこぼれることになる。 それを聞いて、上条はおかしくなりそうだった。 あまりに、色っぽい。このまま、もっと先に行きたくなる。 少し腹が満ちて、食欲より性欲に流されそうな自分を、上条は自覚していた。 「胸、触っていいか?」 「……いいよ」 「素直だな」 「だって。責任、取ってくれるんでしょう?」 「理由になってない気がするけど」 「もう。じゃあ、断って欲しいの?」 「いや。ごめんな、意地悪いって」 「本当に、意地悪すぎるわよ。それにこんな変態行為をして……」 「嫌がることは絶対に、しないから」 そう言うと吹寄はそっぽをむいた。 だって、今していることに異を唱えないのは、吹寄自身が嫌がっていない行為だと言うようなものだ。 制服とキャミソールをたくし上げ、上条は、ぷつんとブラのホックを外した。 先端が少し濡れていた。そしてそれ以上に。 「堅くなってる……」 「馬鹿。い、言わないでよ……」 「自覚はあったのか?」 「知らない!」 天邪鬼すぎる態度は、正直者と同義だった。 ブラに触れて、濡れ具合を確かめる。幸いこの後吹寄が不快になるようなことはなさそうだった。 だからつい、上条は、問いかけてしまった。 ……だから、という言葉にはたぶん論理的な整合性は全くない。 「吸っても、いいか……?」 「え?」 ぼんやりと、吹寄がテーブルを眺めた。 まだ、パンは残っている。 「それって、まさか」 「……さっきは、やらないって言ったけど」 「嘘」 「あ、嫌だったら、しない」 「……」 吹寄は、困った顔で上条を見つめた。現れたのは、明確な拒否とは、違う何か。 「ね、当麻」 「ん?」 「もう一口、当麻の、くれない?」 「あ、ああ……」 適当にパンを齧って、少し噛んで崩して、吹寄に与える。 小鳥のようにそれをせがんで、受け入れる吹寄が可愛い。 「貴方が、したいんなら」 「え?」 「し、しても別に怒らないわよ……」 「え? い、いいのか?」 「だ、だって! 恋人同士なんだもの。しょうがない、じゃない」 積極的にやりたいわけではない。だけど、いやと言うほどでもない。 上条が望むのなら受け入れてあげたい、そう言う感じの、表情だった。 目を見つめたまま、クリッと吹寄の乳首を捏ねる。 「んっ……馬鹿。恥ずかしい」 「じゃあ、飲ませてもらうな?」 「うん……」 吹寄が、自分の制服を、上条のためにそっとたくし上げた。 569 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/05(水) 22 04 02.20 ID kQLeaVLRo 一応マナーかな、と思いながら上条は自分の口の中の食べかけをさらうように嚥下する。 水がないから完璧ではないが、ちょっときれいにしたその口で、 そろそろ見慣れつつある吹寄の乳首に吸い付く。 なんの因果か同年代や妙齢の女性の裸をうっかり見てしまうことがたまにある上条だが、 吹寄の乳房は、綺麗だと思えた。誰と比べてというほど、ほかの女の子のはあんまり覚えていないのだが。 たっぷりとした重みがあって、ちょっと張った感じがして、だけど手で包み込むと柔らかい。 乳首は、もしかしたら普通より大きめかもしれない。実際には普通というのを上条は知らないが。 色あいもヴァージンライクな、可愛らしい色だった。 そして口に含むと、優しいミルクの味がする。 「んっ……」 吹寄は上条の与えるその感触に、ずいぶんと素直に反応するようになった自分の体を、 受け入れ始めているところだった。 触れる直前の、上条の吐息でひんやりする感じ。 そして舌が触れた瞬間のぬるりとした感じ。 最後に、胸の先っぽを口でしっかりと包まれた、暖かい感じ。 そしておまけの、自分の体から母乳が染み出ていく感じ。 そういうのを感じると、無性に吹寄は上条の頭を抱きたくなる。 「美味い」 「もう、報告しなくていいの」 「制理。ほら、パンくれよ」 「え?」 上条に、パンを手渡される。口元に持っていけばいいのかと思って差し出したら、拒まれた。 「そうじゃなくて、パンは口移しで、さ」 「あ、うん……」 仕方がないので、上条の言うとおりにする。 ちょっとくらい噛んで崩したほうが喜んでくれるかなと思いながら、咀嚼する。 だが時々脳裏に走るピクンとした快感の波のせいで、味に集中できない。 執拗に、上条が乳首を責め立てるからだった。 「あ……」 無言で、上条が乳首からそっと口を離した。そしてニッと吹寄に笑いかける。 そっと、そのまま唇が吹寄の唇に重ねられた。 「んん……」 とろとろと、温かいものが口に流れ込んできた。味が付いていて、唾液じゃないとすぐに気づいた。 「んぅ?! ん、ん!」 素早く、上条が吹寄の口の中でそれをかき回し、パンに含ませた。 食べ合わせは、悪くない。悪くないのだが、さすがにこれは背徳的もいいところだろう。 女の子に、自分の母乳とパンを合わせたものを、食べさせるなんて。 「んー!」 「制理はいらないか?」 「ん!」 避難を込めて鼻声を出したら、軽く笑いながら上条が吹寄の口の中からパンを吸い上げ、平らげた。 「スゲー美味い昼飯だよな」 「馬鹿、馬鹿じゃないの。さすがにあたしもこんなの、喜べないわよ……」 というか彼氏がドの付く変態だと悟って付き合いを考え直してもいいレベルだと思う。 「嫌、だったか?」 「……大丈夫。吸ってもらっているんだし、別に怒るほどのことじゃなかったし」 「なら、いいんだけど」 「でも、その、ごめん。やっぱり自分のはあんまり味わいたくないっていうのが本音なのよ」 「そっか。ごめんな。それじゃ最後のやつみたいなのは、しないから」 「うん。だからその」 「続きをすれば、いいよな?」 「お願い、します」 なんでかわからないけれど、すごく従順な感じで、吹寄はそう上条にねだってしまった。 579 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/10(月) 10 26 40.60 ID GlGOmDEHo ぐっと、上条が強めの力で吹寄の肩を引き寄せた。その強さに、ドキリとする。 「まだ、パン食べられるか?」 「え? うん、なんだかかなりお腹いっぱいになっちゃったけれど、まだ大丈夫」 「そっか。じゃあ、ちょっと俺にもくれよ」 「うん……」 言われるままに、パンの残りのかけらを口に入れて、噛んでいく。 上条に食べてもらうために、自分の唾液をパンに含ませながら、形を崩していく。 「ん、ん……」 ピリッと背筋に暖かい電気が走る。上条が、乳首を舐めたせいだ。 吸うのは吹寄からパンをもらってから、ということだろう。 「ほら、くれよ」 「ん……ちゅ」 舌で、口の中にあるものを、上条の口の中に運び入れる。 貪欲に吸い込むのを、吹寄は可愛らしいと思った。 機嫌を伺うように髪を撫で、上条が、すっかりツンとなった吹寄の乳首を、口に含む。 「ふあ、ん!」 「……声、可愛いな」 「?! ば、馬鹿」 「声の大きさには、気を付けないとな?」 「別にそんな、大きな声とか」 「ま、外がうるさいから大丈夫だろうけどな」 なんて、意地悪なんだろう。 上条のせいで、自分はこんなふうになってるのに。 悪いのは、全部上条なのに。 「可愛いよ。制理」 「うん」 優しくされると、なんだか強く言えないのだ。 コクコクと鳴る上条の喉を見ていると、なんだかまあいっかと思ってしまうのだ。 惚れた弱みっていうのは、こういうのを言うのかしらと思いながら、 吹寄は静かに、上条の為すがままに逆らわなかった。 581 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/10/10(月) 11 59 45.92 ID GlGOmDEHo 「……り、制理」 「え……?」 ふと、呼びかけられる声で、吹寄は意識を浮上させた。 それで気づく。いつの間にかうつらうつらしまっていたことに。 たぶん、上条が髪を撫でてくれたせいだった。 「何時?」 「ん? あと5分で昼休み終わり」 「えっ?!」 「どうかしたか?」 「あ……」 たぶん、10分くらい寝ていたのだろうと思う。 好きな人に撫でてもらって眠るというのは悪くないことだが、 限られた時間を無駄にしてしまったようで、やけに寂しかった。 「ごめん、ちょっと寝ぼけちゃって」 「寝顔見逃したな。寝てるって気づかなくて」 「そうなの?」 「ずっと撫でてくれてたからな」 ありがとう、という感じで上条が微笑んでくれた。 その笑みに、心がきゅっとなるのを吹寄は感じた。 なんだか、嬉しい。自分の行いで、好きな人に喜んでもらえるのが。 「さて、そろそろ教室に戻らなきゃいけないな」 「そっか。昼からも授業があるものね」 「サボるか?」 「バカ。学生が本分を投げ捨ててどうするのよ」 「真面目だな。……で、どっちが先に戻る? できれば制理に先に行って欲しい。 土御門たちにパン買うって言って出てきたからさ、追求されないようにギリギリで戻るわ」 「うん……」 「制理?」 なんていうか、こういうことを校内でやっているのを見られるのは、困る。 だけど、こんなことをしたあとなのに、まるでなんでもない他人みたいに別れて、 教室でも知らんぷりし合うことになるのが寂しかった。 「一緒に帰ると、怪しまれるよね」 「……そりゃな」 「うん。じゃあ、あたしが先に戻るわね」 「ああ、よろしくな」 すっと、吹寄は名残惜しいような気持ちを断ち切るように、 上条にあずけていた重みを自分に取り戻した。 それだけで、なんだかもう淋しい。 「制理、好きだよ」 「うん。あたしも、好きだよ。当麻」 ごく自然と、二人はくちづけを交わした。 キスをやめないまま、上条が髪を手で梳いて整えてくれた。 はだけたブラも胸へと引き寄せてくれた。パチンと、ホックを自分で止める。 収まりが悪いのはこのあとトイレで直そう。 ぷつんぷつんと上条がボタンを止めてくれるのにドキドキする。 「……」 「……」 二人で、見つめあった。理由ははっきりしなかったけど、タイミングがばっちりとあったのが嬉しかった。 「寂しいな。なんか」 「え?」 「……貴方とこうするのをやめるのが、寂しいって言っただけ。 聞き返さないでよね。柄じゃないって、私もわかってるんだから」 上条の肩に触れながら、吹寄はソファから立ち上がった。 「それじゃ、戻るね」 「また夜に」 「うん」 そう約束を交わして、昼の逢瀬を二人は終えた。 前へ 戻る 次へ
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吹寄「上条。その……吸って、くれない?」① 戻る 次へ 1 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 12 07.11 ID gKHRPC680 ――――どうして? なんで、こんなの。 誰もいない学校の保健室で、吹寄制理は完全に取り乱していた。 自分の体に、何が起こったのかわからない。こうなった原因も、一体なんなのか特定できなかった。 セーラー服の胸元の白いリボンをしゅるりと解き、鎖骨の近くにあるボタンを外す。 濡れた感じのするブラが気持ち悪い。セーラーの上着を脱いで、近くのベッドに無造作に置く。 畳んでおくような、そういう心の余裕が今は無かった。 大きすぎて邪魔で形も全然綺麗じゃない、色々と不満のある自分のバストを吹寄は掴んだ。 その感触に、唇がわなないた。だって、こんなの、おかしい。 背中に手を回して、ブラのホックを外す。正直に言って、それは怖かった。 不安を感じているその問題を、直視することになるから。 ブラは何の引っ掛かりもなくぷつりと外れ、肩紐が吹寄の肩を滑る。 吹寄が見つめる鏡の中では、年頃の女の子の平均を軽く凌駕するバストがそのボリュームを主張していた。 大きさだけなら、いつもどおりなのだが。 「なん、で……。どうしよう」 呆然と、吹寄は呟く。 オレンジの地にブルーのチェックが入った可愛らしいブラが、ぱさりと地面に落ちた。 4 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 17 42.03 ID gKHRPC68o 「っつー……あいつら、無茶やりやがって」 上条当麻は、保健室を目指していた。 ついさっきまで土御門たち、クラスの男子連中で遊んでいたのだが、 勢い余って上条は友達の一人と接触して盛大にこけたのだった。 膝のところの生地が傷んでいる。制服で遊ぶんじゃなかった。 買い直すお金はなくはないが想像するだに憂鬱なので、当分はこの服を着ることになるだろう。 服の内側で皮膚が擦り剥けているから、消毒と絆創膏をもらいに、保健室へと向かっているのだった 怪我は大したことないが、ジクジクと染み出る血が制服に着いては面倒だ。 「失礼しまーす」 コンコンと軽いノックをしつつ、上条は勢いよく保健室の扉を開けた。 仮病や体調不良でここに来たことはないが、怪我でなら結構ある。 勝手知ったる保健室だった。そのはずだった。 きっと中にはいつもどおり、定年間近のおばあちゃんである保健の先生がいるはずだった。 ……まあ、上条当麻の日常というのは全く唐突に非日常に切り替わるのだが。 カラリとすべりのいい音を立てて横に開いた扉の先には。 ――――上半身に下着すら身につけていない、クラスメイトの女の子がいた。 自然な感じのする黒髪を、ちょうど胸元くらいまで伸ばしている。 肌は、どきりとするような白色。普段見えている二の腕より先などは普通に焼けているのだろうが、 今、上条の目に映るのは、普段は服で隠しているであろう、おなかの辺りだった。 くるんと丸まった可愛らしいへそが陰影をつけていて、肌の白さを際立たせている。 触れればきっと、柔らかくて、さらさらだろう。 そのクラスメイトの名前は、吹寄制理という。 「……へ?」 「かみ、じょう……?」 二人で、見詰め合った。なんとも間の抜けた視線の交錯だった。 上条は必死で自分の落ち度を検索する。 保健室に来ることは悪いことか? 否。 保健室の扉に鍵は掛かっていたか? 否。 でもまあ、謝らない訳にもいかななった。 こういうことになった場合、男は無条件に頭を下げないとならないのだった。 「ご、ごめん! 悪気は無かった。てか、鍵開いてた! で謝ったけど一応上条さんに落ち度が無いことは強調させてもらいます!」 「……」 「だいたいお前、鍵もかけずにその格好はどうかと思うぞ。ちゃんと注意しろよ」 そう言いながら、上条は扉をぴしゃんと閉めた。だって他の誰かに裸を見られたら不味いだろうし。 あっけにとられたままの、吹寄と視線が合う。両手で胸を掴んで、いわゆる手ブラの状態だった。 どうやら、上条が入ってくる前からその姿勢だったらしい。 この年頃の女の子なんて隠そうとすれば完璧に隠せるサイズが普通のところ、 吹寄といったら、しっかり手で覆っているのにその横からこぼれんばかりだった。 そんな吹寄の肢体を、本能レベルで目が記録し脳が保存していく。 我に返った吹寄が、キッと上条を睨んだ。 「どうして、貴様はそこで開き直れるのかしら」 「へ?」 「……もういい。用が無いなら、出て行きなさいよ」 「許してくれるの?」 「知らないわよ、もう。こっちは困ってるって言うのに……」 5 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 19 28.41 ID gKHRPC68o その吹寄に、上条は違和感を覚える。 少し前のことだ。大覇星祭で、教室で着替えをする吹寄の裸を見てしまった事があった。 あの時も今と同じで、逸し纏わぬ上半身を視界に納めたのだった。 今回は下にスカートを履いているが、それは大した差ではないだろう。 あの時はたしか吹寄は、パイプ椅子で上条の頭をカチ割ろうとした。 だというのに、今日の吹寄はこちらをしかりつけることも無かった。 「吹寄、調子悪いのか?」 「なんでもない」 「馬鹿野郎、なんでもないやつがそんな顔するわけないだろ」 上条がそう問い詰めると、吹寄が瞳を揺らした。 見上げるようなその視線が、不安を抱えているのだと訴えていた。 ついさっき不機嫌そうに追い払おうとしたばっかりだったのに、その目は、上条にすがるようだった。 吹寄の仕草に、上条は浮ついた気持ちを全て吹き飛ばした。 「吹寄? どうかしたのか?」 「……」 「お前、変だぞ。なんか力になれることあるか?」 吹寄がそんな気弱になるなんて、絶対に変だ。 上条はクラスメイトの異変を、放っておくほど薄情ではなかった。 その真剣さに、絆されたのだろうか。内心の苦悩を漏らすように、ぽつんと吹寄が呟いた。 「……どうしよう、上条」 どうしたもこうしたもない。保健室にいるということは、体調が悪いということだ。 だが外見で、パッと判るような不調は見当たらない。 そして当麻が逡巡したその一瞬で、吹寄は自分の弱気を恥じたらしかった。 「……ごめん。なんでもない」 「なんでもないって。今お前どうしようって言っただろ」 「うん。でも、ごめん。やっぱいい」 「いいって……」 「上条には、話しにくい。つかジロジロ見るな」 「わ、悪い!」 慌てて横を向いた。視線を外して、上条は思案する。 保健室で裸になるような必要があるのだ。考えてみれば、確かに男の上条では色々と差し障りがあるかもしれない。 「先生、いないのか?」 「ええ。書置きがあって、怪我をした生徒に付き添って病院に行ってるって」 「そうか。じゃ、じゃあ、クラスの女子とか呼んだほうがいいか?」 「駄目!」 6 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 20 37.58 ID gKHRPC68o 姫神辺りの顔を思い浮かべながらそう尋ねた上条に、吹寄が強く反対した。 その理由は上条には判らなかったが、単純だった。 こんな、恥ずかしい体の異変を、同年代の同性の友達に聞かれたくない。 「えっと、じゃあどうしたらいいんだ。お前、一人で平気なのか?」 吹寄は、その上条の問いかけに返事をしなかった。 だがかすかに聞こえる肌がこすれる音と、苛立ちとも不安ともつかない不安定な吐息が、吹寄の心境を代弁していた。 「出て行ったほうが良かったら、すぐ出て行く。話せることがあったらなんでも聞くし、誰にも話したりしない」 「……本当に?」 「信じろ。俺はそんな不安そうなヤツをほっぽりだしたり、笑ったりなんて絶対しない」 当たり前のことを、上条は吹寄に伝えた。 吹寄は、その言葉を信じていいか、迷った。 だって上条は男子だ。女子の悩みを、わからないかもしれない。 同性に打ち明けるのと違って、どう反応するのかわからない。 ただ、声の響きは真摯で、上条という人を疑う気持ちにはならなかった。 「こっち、見ないでね」 「あ、ああ」 吹寄がそう呟くのを、そっぽを向いたまま聞いた。 上条の視界の外で、吹寄は床に落ちたブラを拾い上げ、脱いだセーラーの上着のあるベッドへと進む。 そしてほどなく、シャッとカーテンが引かれる音が聞こえた。 「もういいわよ、上条」 「ん」 「鍵、閉めて」 「俺、出て行かなくていいのか?」 「いいから……。早く」 「わかった」 振り返ると、吹寄はカーテンの向こうのベッドにいた。腰掛けているらしいのはシルエットでわかった。 その肩のラインと、豊かに主張するバストのラインがはっきりと映し出されていて、上条はドキリとなった。 いけない、と思う。不安がっている女友達に興奮するなんて、最低だ。 後ろ手に鍵をカシャンと言わせ、密室に二人きりになることに背徳感を覚えながら、上条は吹寄に声をかけた。 「閉めたぞ」 「……ありがと」 返事はそれだけだった。一瞬の沈黙が二人の間に走る。 いつもならパンチの一発はあってもおかしくない。 もう、下着を着け終えて上条を地べたに這いつくばらせるくらいの時間はあったはずだ。 だが吹寄は、一向にあちらからアクションを起こさない。 いつもと違うその態度が、吹寄が気弱になっていることを感じさせた。 上条は、自分から声をかけるのを躊躇った。聞き方を間違えれば、吹寄を傷つけるかもしれない。 だが、その躊躇いはきっと吹寄を困らせる気がする。上条は身長に言葉を選んだ。 7 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 22 31.25 ID gKHRPC68o 「吹寄。その、事情を聞いてもいいのか?」 「……」 「一応もう一回言っとくけど、誰にも喋ったりしないし、笑ったりもしない。 俺以外に呼んで欲しい人がいるなら探しに行く」 「……いい。別に、人を呼んでもらっても仕方ないし」 それだけ言って、吹寄はまた黙った。出て行くわけにも行かない上条は、吹寄の言葉を待つほかなかった。 吹寄は、心の中で上条を吟味する。 上条は、秘密を守ってくれる人だろうか。体の異変を笑ったりはしないだろうか。 信じられる、と吹寄は思った。 上条はバカだしスケベだし不幸だーなんて叫びまわるやる気のない男だが、 不思議と、人として信じられないと思ったことは無かった。 カーテン越しの、上条を見つめる。直立でこちらを伺っているようだ。 心配してくれているのだと、思う。ふう、と上条に悟られないよう、吹寄は息を吐いた。 上条のおかげだとは認めたくないが、少し、背負っていた重荷が、軽くなった気がした。 不安に押しつぶされそうなときに、居合わせてくれたのが上条だというのは悪くなかったのかもしれない。 「ごめん、上条。ちょっと動転していたわ。病院に、行けばいいだけなんだけれど」 「俺のことは気にするなよ」 「っていうか、人の裸、見たのよね」 「ごめんなさい」 「ったく……上条当麻はいつ何時でも上条当麻なのね」 「どういう意味だよそれ」 「貴様は不幸だ不幸だっていう割に、この手のアクシデントには愛されているのね、って思っただけよ。大覇星祭の時にも思ったけど」 カーテン越しに上条は、吹寄がふぅとため息をついたのを聞いた。 少しは、気持ちを楽にしてくれたのだろうか。 「調子、悪いのか」 上条は何度目かになるその問いかけを、もう一度してみた。 うん、と吹寄は生返事をして、打ち明けようかどうか迷ったらしかった。 「絶対に誰にも言わない?」 「ああ。約束する」 「絶対に?」 「絶対にだ。信用ないかも知れねーけどさ、お前が真剣に悩んでることを、馬鹿になんてしない」 「うん。ごめん、それじゃ、貴様に話しても仕方の無いことだけど、聞いて欲しい」 吹寄も、その不安を一人で溜め込むのは、限界だった。 正直、男子にこんな話をするのは、恥ずかしいしおかしいと思う。 だけどなまじ女じゃないだけに、打ち明けられるというところもある。 手元のブラを、ぎゅっと握る。 躊躇う気持ちを押さえつけて、吹寄はぽつりぽつりと、口を開いた。 「胸が。……その、ちょっとおかしくて」 「胸が、おかしい?」 8 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 23 38.89 ID gKHRPC68o 上条はその言葉を受けて、あらぬ想像をする。 吹寄の胸は、元からある意味おかしい。ちょっと高校生のレベルを超えていた。 制服越しならそうでもないのだが、体操服だとか、裸そのものだとかを見るとすさまじいことがわかる。 ただまあ、勿論そういう意味で言っているのではないだろう。 カーテン越しの陰影で、吹寄がまた自分の胸に手を当てたのが判った。 「三日前くらいから、なんか張った感じがしてたんだけど、今日のお昼食べてからなんか違和感があって。 それで、さっきトイレで確認したら、その」 そこで吹寄は言いよどんだ。急かしても吹寄の負担になりそうな気がして、上条はじっと耳を傾けたまま黙っていた。 動かない上条をカーテン越しに見つめながら、吹寄はシーツを弄ぶ。 言葉を続けるのが、苦しかった。事実を口にすると、さっきの不安がぶり返してくるから。 「上条、聞いてる?」 「ああ、ちゃんと聞いてる。無理はしなくていいけど、良かったら、悩みを教えてくれ」 「うん、あのさ、私」 はぁ、と溜め込んだ不安をもらすような、そんなため息が聞こえて、 吹寄が抱えた悩みを、ぽつりとこぼした。 「――――母乳が、出ちゃったのよ」 「……へっ?」 吹寄の言った言葉が、咄嗟にどういう意味なのか、上条には分からなかった。 だって上条と吹寄は、まだ高校生だ。母乳なんて言葉とは、全く無縁だ。 いや、生物的には出てもおかしい年齢ではない。吹寄の体が、母乳を出したということは。 「吹寄、お前。それって彼氏と――」 「違うわよ! あたしは誰かと付き合ったりなんてしてない! それに仮に付き合ってる相手がいたって、この歳でそんなことしない!」 裏切られたように、吹寄が怒鳴った。 上条はそれで、吹寄を傷つけたことを悟った。 「ごめん。今のは、俺が悪かった」 「……そういうこと言われるのが嫌で、誰にも相談しなかったのよ」 「そっか。本当にごめんな、吹寄」 「もう、いいわよ。結局、誰に打ち明けたって、どうせ初めの一言はそうなるわよね」 むしろ、笑ったり決め付けられたりしない分、まだ良かったほうだろうと思う。 謝罪の言葉に本当の謝意があったから、許すことにした。 「それで、どうしていいか、わかんなくなって」 「そっか。……男の俺には直接はわかんねえけど、そういう原因不明の体調不良って、苦しいよな」 「うん……」 9 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 24 49.75 ID gKHRPC68o もう一度、吹寄はため息をついた。 仕方ないのかもしれない。体調不良は、往々にして誰のせいでもなく不幸な偶然として起こる。 だけど、吹寄がそんな風に憂鬱そうなのは、嫌だった。このクラスメイトには、強気の顔が良く似合っているから。 「吹寄、なんか原因とか、わかるのか?」 「ん……いくつかあるのよね。最近、風邪で新しい薬飲んだのと、体調悪いのにちょっと無理して能力開発の授業受けたのと、あとは、変だなって思った日ってアレの終わりの日で」 「えっと……」 アレ、という響きがリアルで、恥ずかしくなって上条は顔を横に向けた。 それにしても吹寄はそんな話をして恥ずかしくないのか、と内心呟かずにはいられない。 「言っとくけど上条、あたしだって、恥ずかしいの我慢して言っているんだからね」 「お、おう」 「貴様はあたしの相談に乗るって言ったんだから全部話をちゃんと聞いて、誰にも言わないで」 「わかってる」 意外な感じを、上条は受けていた。吹寄はしっかりした性格の女の子だ。 問題を抱えればパパッと解決の方策くらいは立てるほうだと思っていたのに、 不謹慎なことだが、上条に言い募る吹寄の不安定さが、可愛かった。 「それで吹寄。病院とか、行くつもりなのか?」 「……やっぱり、行かないと駄目でしょう。何もないのにこんなこと、起こるはずがないもの」 「だよな」 「でも、どの科に行ったらいいのかとか、よくわからなくて。一番それらしい所には、あまり行きたくないし」 それらしい、というのはやはり産婦人科だろうか。たしかに、吹寄の歳でそこに行くのはためらいがあるのだろう。 「ねえ上条」 「なんだ?」 「貴様にあんまり迷惑をかけるのも、悪いとは思うんだけれど」 「水臭いぞ吹寄。今更なんだしさ、何でも言えよ」 「うん、ありがと。あのさ、あたしと一緒に、病院についてきてくれない……?」 おずおずと、吹寄がそうお願いをした。 付き添う時間くらいは取れる。二つ返事で了解しようとして、ふと、そのシーンを想像した。 産婦人科に、緊張した自分と、不安げな吹寄。 ――――これはもう、完璧に若気の至りでトンでもないことになった男女の図だった。 もちろん吹寄は、それを判って上条に頼んでいた。 一人で行ったって、きっと変な目で見られる。何も産婦人科の待合室まで来てくれなくていい。 総合病院までの道を共にして、総合受付まで着いてきてくれるだけでいい。 そう懇願する気持ちで、吹寄は上条に尋ねた。 「やっぱり、駄目かな」 上条は、その声に諦めの気持ちが含まれているように聞こえた。きっと、上条の躊躇を感じ取ったのだろうと思う。 そんな声が聞きたくなくて、上条は考え直した。 別に、本当に妊娠させたわけじゃない。誰かに知られたって、誤解だって事はすぐに証明できる。 自分が恥ずかしいかどうかなんて、吹寄が感じている心配に比べれば、軽いものだ。 10 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 25 53.08 ID gKHRPC68o 「いいぜ。一緒に、病院に行こう」 「えっ?」 吹寄は、その上条の返事に、驚いた。 引き受けてくれて、勿論嬉しい。だけど随分と迷惑なのは事実だろう。 「ちゃんと、お前の体がどうなってんのか、見てもらおう。 んで、ちゃんと直していつもどおりの吹寄に戻れよ。 なんつーかさ、気弱な感じがして、調子が狂っちまうんだよ」 「……貴様って、時々卑怯よね」 「へ?」 「そういうこと、真顔で言える辺り」 上条に見えないところで、吹寄は恥ずかしくなってそっぽを向いた。 「そんなにあたし、いつもと違うように見える?」 「見える。つーか保健室に俺が入った瞬間ぶん殴るくらいはやってこそ吹寄だな、うん」 「バカ言ってんじゃないわよ、上条当麻」 「そうそう、それだ」 ちょっとだけいつもの元気をだした吹寄に、上条は相槌を打ってやる。 吹寄がフンと鼻を鳴らした。 「じゃあ、病院行く準備、しようぜ」 「あ……」 「ん? まだ何かあるのか?」 「えっと、その。不安なだけだったら、病院に行けばいいだけなんだけど」 服を脱いで、ブラを外したのには理由があるのだ。 吹寄は、カーテン越しに体を上条のほうに向けた。 「……ここまできたんだから、今更何を相談しても一緒よね。ブラを、つけるとちょっと、ね」 「な、なんかまずいのか?」 ものすごく相槌の打ちにくい話題だった。 上条はドギマギしながら答える。 「つけると、気持ち悪いの」 「なんで?」 「……その、濡れてるし、ほっとくともっと濡れるから」 何故濡れるのかといえば、そりゃあ話の文脈からして、母乳で濡れるのだろう。 で、濡れるということは、つまりは搾ったりしなくても垂れるくらい、出ているということだろうか。 「そ、それは大変だな」 「うん……どうしよう。まだ、出そうな感じなのよ」 11 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 27 11.14 ID gKHRPC68o どうするもこうするも、出さなきゃいけないといわれれば、出す先なんて選択肢はそうそうない。 「手洗い場は、部屋の隅にあるけど」 「知ってるわよ。……やっぱり、そういう所に捨てなきゃ、駄目かな」 「嫌、か?」 吹寄の声の響きにはっきりと否定的なニュアンスを感じて、上条は聞き返した。 「正直に言うと、ちょっと。赤ちゃんは授かってないけど、でもこれは、赤ちゃんに飲ませるためのものなわけじゃない? それを排水溝に、って。やっぱり、ね……」 吹寄とて、女としてやっぱり授乳というものには、夢というか、そういうものを感じるのだ。 子供を授かって、その子の口に含ませるのが、やっぱりいい。 原因はなんであれ、初めて出した母乳を下水に流すなんていうのは、嫌だった。 「そっか。ごめん、またデリカシーのないこと、言っちまったな」 「いいわよ。それが普通なのは、判ってるし」 「同じ理由で、ティッシュに含ませるのも駄目だよな」 「駄目って言うか……仕方がないなら、そうするわよ」 「じゃあ、諦めてそうするか、我慢してこのまま病院に行くか、のどっちかになるのか」 このままブラを付け直して病院に行くという案は、吹寄には受け入れがたかった。 上条はおそらく理解していないのだろうが、そんな少しの量ではないのだ。 ブラどころか制服まで染み出して、変な濡れ方をするに決まっている。 「まあ、誰かが飲むって選択肢もあるにはあるけれど」 「え?」 その選択肢を選ぶには、近くから赤ちゃんを探してくる必要がある。 しかし、どんな理由で出たのかもよくわからない自分の母乳なんて、小さい子には飲ませられないだろう。 ……吹寄はそういうつもりで言ったのだが、上条には、別な意味で伝わっていた。 「その、吹寄は嫌じゃないのか?」 「嫌、って。むしろそれは相手に言うべきことじゃないかしら」 「……俺なら、嫌なことは、ないけど」 「俺……って? 上条、どうして貴様が嫌がる必要があるのよ?」 「え?」 「えっ?」 カーテン越しに、疑問のやり取り。 一瞬後に、吹寄は一体上条がどういう勘違いをしたのか、理解した。 「――?!?! ちょ、ちょっと上条! あたしはそんなつもりで言ったんじゃないわよ! た、ただ近くに小さい子がいて、その子に飲んでもらう的な、ああもう、何を言わせるのよ!」 「わ、悪かった。俺が悪かった! だから頼むから、それ以上俺の勘違いを抉らないでくれ!」 恥ずかしさに窒息しそうになりながら、上条は謝った。 だって、いくら動転しているからって、吹寄のおっぱいを、自分が吸うなんて。 吹寄も頬を染めてあちこちに視線を揺らしながら、必死に心を落ち着ける。 上条は現実的な解決策を考えていてくれたのだろう。 確かに、飲んでもらうなんて言い方をすればその相手は自分だと勘違いされても、おかしくなかった。 13 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 28 16.15 ID gKHRPC68o 「い、一応コメントしとくと。小さい子なんてこの辺りにはいないぞ」 「わ、わかってるわよ」 「それじゃ、どうするんだ?」 「えっと……」 選択肢は、母乳を下水に流すかティッシュに吸わせてゴミ箱に捨てるか、我慢してこのまま病院に行くか。 ……そして、冗談からうっかり出来上がってしまった、別の選択肢か。 「ネットで、さっき調べたんだけれど」 唐突に、吹寄が話題を変えた。 「ん?」 「まずは、味を見てみろって」 「まずって、どういう意味だ?」 「母乳が正常かとかって、味を見ればすぐわかるものらしいのよ。 で、抵抗はあるかもしれないけど、母乳の味見はちゃんとしなさいみたいな事が書いてあって」 「そ、そうなのか」 「でもさ、やっぱりどうしていいか分からなくて。コップにでも出せばいいのかもしれないけど、 この歳で保健室で一人そんなことをするって考えたら、やっぱり、ね。 それに体調がおかしいのが原因なら、私が自分で味を見ても、何も判らないかもしれないし。 だから、その――」 不安、なのだろう。いつもの気丈さが鳴りを潜めていた。 言いよどんだまま、吹寄がその先を告げなかった。 ぎゅ、と吹寄がシーツを握った音がした。かすかな衣擦れが聞こえる。 戸惑い、下着すら身につけられないまま、吹寄はどんな不安を感じているんだろう。 「吹寄」 「……」 「今から、馬鹿な事言うからな。おかしかったら、馬鹿にしてくれていい。 吹寄。俺が味見て、そのまま飲んじまえば良いとか、そういうこと考えてるか?」 「べ、別に! そんなこと考えているわけないでしょうが! なんで貴様に、その、飲んでもらうとか――――」 「そうか、ごめんな、吹寄。俺の勘違いだったら、もっと責めてくれていい」 「……」 再び、吹寄が黙り込んだ。 それはもう上条を相手にしないという意思表示だろうか、あるいは別の意図だろうか。 時計の秒針が一周するくらい、長い沈黙があった。 「上条」 「ああ」 「貴様は、嫌だとは思わないの?」 「正直言って、恥ずかしいけど。嫌なことはねえよ」 「そう」 14 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 29 44.34 ID gKHRPC68o また、沈黙。 どんな意味を持った沈黙か、上条ははかりかねた。 「上条。アンタじゃなくても、例えばあたしに彼氏がいたとして、その人にでも、飲ませるのって変かな」 そんな仮定の話を、不意に吹寄が振ってきた。 「ん、っと。やっぱり戸惑うとは、思う。彼氏でも」 「そうよね」 「でも彼氏としては、嫌なことはないと思う。 この歳でどうかは置いといて、彼氏彼女なら、別にそれくらい普通だろ」 「飲んでもらうのが?」 「いや、胸を、まあそのなんだ」 「……上条のこと、セクハラで訴えようかしら」 「止めてくれ。マジで。それで、どうする? この選択肢が無しなら、やっぱり無理にでもこのまま――」 「……うん、言いたい事は、わかってる。けどやっぱり、ちょっと。 上条にはわかんないわよね。今だって、胸の先から少しずつ出てて、濡れてるのよ。 手で押さえたり、仕方なくハンカチ当てたりしてるけど、もうベトベトなの。 もう一度このブラつけて、ってやっぱり気持ち悪くて。考えたくない」 「いやでも、仕方ないだろ」 「うん……」 煮え切らない返事で、また吹寄が黙った。 その間を、上条は根気良く待つ。急かしても好転しないような気がした。 やがて、またぽつりと吹寄が言葉をこぼした。 「上条」 「ん?」 「仮定の話、だけど。彼氏以外の男子に飲ませるって、変よね」 「……だな。そういうのって、少なくともちゃんと付き合ってる相手同士でやることだろ」 「そう、よね」 それはどういう意味の確認だろうか。 上条があれこれと考え、答えに至らないうちに、吹寄がさらに尋ねた。 「ここにいるのは、上条だけよね?」 「あ、ああ。見てのとおりだけど」 「上条は、付き合っている子、いるの?」 「いや、別にいないけど」 「そう。あの、さ……。あたしがお願いしたら」 吹寄が、言葉を区切った。 何かを迷い、躊躇っている感じだった。 カーテン越しの吹寄が、シーツを手繰り寄せた音がした。 やがて、意を決したように、吹寄が上条に尋ねた。 15 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 30 41.10 ID gKHRPC68o 「責任、とってくれる?」 「え?」 その言葉の意味を、上条は考える。 ここにいる男は上条で、もし上条に胸を吸わせることになれば。 上条の主張に従うと、上条は吹寄と付き合っていないといけない。 「え、ちょ、ちょっと待て吹寄。お前こそいいのかよ?」 「いい、って?」 「俺でいいのかよ、って意味だよ」 「貴様はどうなのよ」 吹寄のことは、嫌いじゃない。 放課後にキャッチボールして遊んだりと、実はなんだかんだで吹寄はクラスで一番仲のいい女子だ。 だけど、吹寄を彼女にするなんて、考えたことはなかった。 吹寄にとって、上条はどういう相手だっただろう。 大覇星祭の前なら、上条への評価は「好きでも嫌いでもない」だった。 だけど、あれからバカ騒ぎに付き合ったりと、それなりに親密になった。 「なあ吹寄。後にまでそんな影響のある選択肢は、選んじゃまずいだろ。 気持ち悪いかもしれないけど、他のを、考えろよ」 上条はそう提案した。それが一番、吹寄のためになると思うから。 だってそうだろう、一時の体調不良の時に、たまたま保健室で出会った男を彼氏にするというのは、 どう考えても吹寄のためにならない。 「やっぱり、嫌なんだ」 「嫌じゃねえよ。でも、そうじゃないだろ?」 「別に、上条なら、いいわよ。ここにいるのが貴様じゃなかったら、あたしはこんなこと言ってない」 「そ、そりゃクラスメイトとして光栄だけどさ――」 「貴様は、あたしのことどう思ってるのよ!」 「え?」 「あ……」 語気を荒げて、吹寄がそんなことを、尋ねた。 そして突然、戸惑ったように黙り込んだ。 カーテン越しだから、表情は見えない。だけど様子は、なんとなくわかった。 上条は自問する。責任を取らされるのは嫌なことだろうか。 そんなことはない。吹寄は一緒にいて、楽しい相手だ。 躊躇っているのは、それが吹寄のためにならない気がしているからだ。 でも、そうだろうか。 「吹寄」 「な、なに?」 「結構、お前のこと、好きだ」 「えっ……?」 「いや、正直に言って、付き合いたいとか、告白だとか、そんなことを考えるレベルじゃなかった。 他にそう言うことをしようと思う相手がいたわけじゃないんだけどさ。 でも、お前が嫌じゃないって言うんなら、責任は取る。今日だけじゃなくて、この後もお前のこと、大事にする」 16 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 31 42.95 ID gKHRPC68o 男女の関係なんて現金なものだ。好きと言われれば、惹かれてしまう。 だが、だからといってほいほいと態度を軟化させられないのもまた、男女の仲だった。 また、しばらくの沈黙があった。 「責任、取ってくれるんだ」 「ああ」 「嫌じゃないのよね?」 「嫌なことなんてない。吹寄こそ、どうなんだよ」 「私も別に。嫌なことは、ないわよ」 「軽い気持ちで相手を選んで、傷つくのはたぶん女子のほうだぞ。本当に、いいのかよ」 「……大丈夫。付き合う前の気持ちなんて、付き合ってからは大したことじゃないでしょ。 大事なのは、その後どうやって一緒にやっていくかなんだから」 動転しているからではなく、どうもそれは、吹寄の恋愛観らしかった。 一理あるのはあるだろう。たしかに付き合う前の熱が冷めてしまうカップルは長持ちしない。 ただ、それを上条は納得しきれるわけでもなかった。 「そうは言うけど、やっぱ自分で惚れて付き合ったって、そういう覚悟は大事じゃないか? 好きでもない相手と、こういうきっかけで付き合うのは、お前のためにならねえよ」 「……莫迦」 「え?」 「あたしも、貴様のことが。結構好きだから、提案してんのよ」 「吹寄さん? 今、なんて?」 「べ、別に貴様と同じよ。付き合うとか、考えたこともなかったけど、別に貴様以上に好きな相手がいるわけでもないってこと!」 「お、おお。なんというか、その、ありがとう」 「礼なんて言わないでよ……」 二人で、また黙り込んだ。もう何度目なのやら良くわからない。 動揺で浮つく自分の気持ちを持て余しながら、上条はこの状況を、必死に咀嚼する。 吹寄が、そこそこ自分のことを好きで、自分以上に好きな相手はいない。 自分もまあ、似たようなものだ。つまり付き合う障害は無くて、付き合う口実ならある。 カーテン越しに吹寄を見つめる。 姿は見えないけど、やっぱり自分の彼女になってくれるかもしれない女の子というのは、特別に見えた。 吹寄が、ため息をついた。それで、ハッと我に返る。 そうだ、今は、体調をおかしくしている吹寄にもっと優しくすべきだ。 「後悔、しないか?」 「……させる気?」 「そんなつもりは、ねえよ」 「じゃあ、別にいいわよ。……あのさ、やっぱり心配してくれる人がいると、安心できるから」 「判った。唐突だけど、それを言い訳にしたら駄目だよな。腹括る」 居住まいを、上条は正した。 カーテン越しに聞こえた衣擦れは、きっと吹寄も同じことをしたのだと思わせた。 17 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 02 33 48.40 ID gKHRPC68o 「今から、俺と付き合ってくれ、吹寄」 「うん……。こちらこそ、よろしく。ってなんかやっぱり実感湧かないわね」 「そりゃカーテン越しだしな」 ……これで、今この瞬間に、自分と吹寄は彼氏彼女になった。 だがこれっぽっちも、付き合いはじめた感慨が無い。 棚ぼた式で得てしまったからだろうか。 「ね、上条。こっち来て」 「……へ?」 「何を寝ぼけているの。そういう話から、始まってるんでしょうが」 「お。おう。そうだったな」 招かれたら、行くしかない。 とことこと、靴下で木のタイルの上を歩く音が部屋に響いた。 それに、吹寄が息を呑んだのが判る。 「吹寄、そっち行っていいんだな?」 「……いいって言ってるでしょ」 「わかった」 上条は、カーテンの端をそっと摘んで、ベッドサイドへの通路を開く。 そしてくぐるように抜けた先には、胸元を手で隠した吹寄が、ベッドに腰掛けていた。 「――――あ」 「な、何か言いなさいよ」 「悪い。その、見とれちまった」 「変なお世辞なんていらないわよ。さっきも見たでしょうが」 「そうだけどさ、綺麗なモンは、何度見たって綺麗だし」 「き、きれい、って――バカ!」 いつもみたいに、ムスッとした顔で吹寄が怒った。 だが違うところもあった。すっと頬が染まったのが判る。 それだけで、ずっと愛嬌良く、可愛らしく見えた。 もしかしたら、付き合うって話が出たからこその、色眼鏡なのかもしれない。 「吹寄。それじゃあ、その、吸えばいいのか」 何を、を言うのが恥ずかしくて、互いにぼかしてしまう。 吹寄とて、覚悟は決めているのだろう。コクリと頷いた。 上条は手始めに、吹寄のむき出しの肩に、手をかけた。 32 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 10 38 19.66 ID gKHRPC68o 「あっ!」 「わ、悪い」 吹寄が出したのは、怯えた声だった。 無理もないだろう。 「そうだよな。付き合おうって言っただけで不安がなくなるわけ、ないよな」 「ごめん。今の別になんでもない。その、触って。別に構わないわよ。彼氏彼女なんだし」 その言葉を受けて、もう一度肩に触れてみる。 怯えた声こそ上げなかったが、吹寄が警戒感を覚えているのは、丸わかりだった。 そりゃまあ、上半身裸でさっきまでただのクラスメイトだった男に触られるのに抵抗がなかったら、そのほうが嫌だ。 「吹寄、髪、撫でていいか」 「え?」 「やっぱ、物事には順番ってのが、有ると思う」 シーツを、肩からかけてやった。そして隣に、上条も腰掛けた。 近いほうの手で吹寄を抱き寄せて、髪に、優しく触れた。 「あ……」 「嫌か?」 「ううん。っていうか、別にさっきのも嫌って訳じゃ」 「無理すんなよ」 「無理してない!」 「そうか、悪い」 「……」 唇をつんと尖らせて、吹寄がそっぽを向いた。 そしてそのまま、上条のなすがままに、髪を撫でられる。 吹寄の視線が自分から外れたのをいいことに、上条は吹寄の胸元を見た。 体に巻きつけたシーツが、吹寄の体のラインを縁取っている。 鎖骨のあたりの複雑な陰影と、そしてシーツを体から引き離すように押し上げる、豊かな胸の膨らみ。 そして、二つの乳房の間にある谷間の部分がシーツをへこませていた。 その先は緩く体に触れていて体のラインは判らない。太もものラインが僅かに見えて、それにもドキドキさせられた。 「上条……」 「え?」 ハッとなると、ジト目で吹寄が見つめていた。 「付き合ったからって、露骨に見ないでよね」 「ごめん」 「別に綺麗なものでもないし、見られてあれこれ感想付けられるのは嫌なのよ」 「……」 人並みに、きっと吹寄も自分の体のことで悩みがあるのだろう。 そんな、劣等感めいたものを感じさせる仕草だった。 33 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 10 39 26.09 ID gKHRPC68o 「吹寄。感想付けられるのが嫌って言った傍からだけど、感想言っていいか」 「え?」 「……綺麗だよ。お前。すんごく」 「え、ちょ、ちょっと止めてよ上条! 付き合ったからって、そんな風にお世辞言われても嬉しくない!」 「お世辞じゃねえよ! 本心だっての」 「嘘!」 「何で嘘って決め付けるんだよ」 「だ、だって」 吹寄は、視線を落として自分のコンプレックスの塊に目をやった。 人並みよりずっと大きい、自分のバスト。 いつだってコレには悩まされてきたし、低俗な視線ばかり集めるし、 それに体のバランスが取れないくらい大きいから、自分でも嫌なのだ。 サイズのせいで、下着だって満足に選択肢がない。 それに、何の因果かまだ経験もしてないのに、母乳が出るなんて。 「仕方ないし受け入れてもいるけど。やっぱり、自分の体が変だって自覚はしているもの」 自信なさげに、吹寄が視線を落とした。 それを見て、上条も吹寄の懊悩を理解しようと、吹寄に心を寄せた。 男だからその悩みに共感は出来ないけれど、彼女なのだから慰めてやるべきだし、 慰めてやりたいと、素直に思った。同時に少し、苛立ちもあった。 「何度でも言うけど。お前の気にしてる胸だって、なんだって全部、綺麗だ」 「……嘘つき」 「だから何で嘘って」 「なんで貴様があたしの体の全部を知ってるのよ」 「そりゃ全部は知らないけどさ、いやでも、じゃあ何で今俺は、お前の体見てドキドキしてるんだよ」 「えっ? ちょ、ちょっとやめてよね。てか付き合って五分で体見て興奮するって言われて嬉しいわけないでしょうが」 「悪い。でも、正直な本音だし」 「余計に悪いわよ」 もう、とため息をついた吹寄が可愛くて、つい、上条は髪を撫でる手を頬に伸ばした。 その感触に驚いた吹寄が、顔を上げた。そして上条と、見詰め合う。 「あ……」 「好きだ、吹寄」 「え、あ……? そ、そういうことはもっと本気になってから言いなさいって、ほら」 「もう、充分本気だって。ほら」 「あっ!」 上条は、言葉では吹寄をリードできるよう取り繕っていたが、見えないところでは心臓がバクバク言っていた。 そりゃそうだ、女の子をこんな風に抱き寄せるなんて、したことがない。 上条は裸の吹寄の背中に触れた。そして、ぐっと自分のほうに引き寄せた。 戸惑う吹寄の体の、前に掛かったシーツがほどけて落ちるのと、上条の体にその胸が押し当てられるのがほぼ同時だった。 34 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 10 40 17.74 ID gKHRPC68o 「か、かみ、じょう……」 「やべぇ……吹寄、お前可愛いな」 「! ば、ばか……恥ずかしいのよ」 「もっと言ったほうがいいか?」 「駄目。落ち着かなくなるから」 吹寄を抱きしめた胸元から、いい匂いがする。女の子の匂いだった。 そしてとてつもなくやわらかくて、たわわな重み。 女の子を抱いているのだという強い実感に、上条は頭がクラクラとなった。 そっと、背中を撫でてやる。 むき出しの肩甲骨と、背骨の感触。それで吹寄の体の形を実感しながら、何よりびっくりするのは、その柔らかさ。 男と女では皮下脂肪の量が違うと聞くが、まさにそれだろう。 なんてことはない背中の肌なのに、もちもち、ふわふわとした感触で、撫でるだけで楽しかった。 「ん、ふ、ちょっと上条。くすぐったい」 「悪い。夢中になってた」 「……なんていうか、貴様はお世辞とかじゃなくて、本当に私の体で遊んでいるのね」 「う、そんな言い方ないだろ。遊んでるって」 「だってそうじゃない」 「まあ。……なあ、吹寄」 そろそろ、頃合いだろうか。 そんなつもりで声をかけると、吹寄も悟ったのだろう。小さく頷いた。 「うん。この体勢続けると、貴様の制服がもっと汚れてしまうし」 「え?」 「ごめん、上条。あたしも咄嗟に気づかなかったんだけれど、多分、あたしので、制服濡れてる」 吹寄が申し訳なさそうにそう言った。 だが、上条としては大した問題とも思わなかった。牛乳をこぼすよりはるかにマシな出来事だ。 「気にするなって。それより……いいんだな?」 「……うん。こんなこと、上条にしか頼めないし。ごめんね」 「謝るより、好きだって言ってくれたほうが嬉しいぞ」 「もう、催促するようなものじゃないでしょう」 嘆息して、吹寄が抱かれた胸元から顔を見上げた。 途端に顔を真っ赤にして、顔を上条の胸にうずめる。 なんだかやけに吹寄がうぶで、意外な感じさえした。 もう一度、チラリとだけ上条の顔を見て、吹寄が呟いた 「上条。気にかけてくれて、ありがと」 「おう」 「……あたしも、その、好きだよ」 それだけ言うともう吹寄は、目を合わせてくれなかった。 そっと、上条が体を離すのに、抗わなかった。 「あっ……」 ギリギリ掛かっていたシーツが、予兆も無くはらりと落ちた。 それで、今まで隠していた吹寄の胸元が、上条の目の前にさらされた。 61 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 23 11 13.59 ID gKHRPC68o 「すげえ……」 「そんな反応……やめてよね」 きゅっと吹寄が目を瞑って、耐えるように唇を横に引いた。 直に胸元を見ると、圧巻の一言だった。 手のひらに収まり切らないくらいたわわに実った二房。 僅かに血管が透けているが、不健康な印象はない。 胸の先には、ぷっくりとした少し大きめの輪っかと、つんと立った先端のぽっちが存在感を主張していた。 「ちょっと、出てるな」 「だ、だからやめてよ……そういうの、言わなくていいわよ」 「お、おう。悪い」 「その、前と違うのは……出ちゃうせいだから。色とか形とか、変だけど」 「そ、そうなのか? 悪い、変かどうかはわかんねえ」 「う。もういい上条。何も言わないで」 ものすごく、吹寄はショックだったのだ。 さっき鏡で確認して、心なしか乳首がいつもより黒ずんだ感じだし、 乳輪から先が肥大しているのに気づいたときは。 もちろん、男の上条からみたらはっきり判るほどのことではなかった。 人並みにアダルトコンテンツで女性の胸の審美眼を養ってきた上条にとって、 特に不満を感じるような色や形ではなかった。 なんというか、こう、下乳のラインが上条の好みだった。 乳首が少し上付きなせいか、ちゃんと乳首より下の部分に、丸いラインが出ている。 上条としてはそのバストにほとんど満点を付けたい気分だったのだが、 生憎吹寄は、もう何も聞きたくない、という感じだった。褒めるのも逆効果になりそうだった。 「そ、それじゃ、いくぞ?」 他にすることもないし、いい加減誘惑に抗えなくなってきたので、上条は吹寄にお伺いを立てた。 目を瞑ったままの吹寄が、コクンと頷く。 ……ほんの15分前には想像だにしなかったことに、事態はなっていた。 こんなに女の子のおっぱいを近距離で凝視したのは初めてで、そのリアリティにドキドキしているのに、 自分がモニタ越しではなく、直接それを見ているのだという実感がなんだか湧かなかった。 あと、乳首の先までほんの数センチのところで、その先っぽを上条は改めて眺める。 薄く、白い斑点があるのがわかる。それは乳腺から出た、母乳だった。 乳首の先端の、中央に一点あるわけではなかった。 それぞれ五点ずつぐらいだろうか、その突起の何箇所かから、母乳は出るらしかった。 ふるり、と乳首が震える。 「か、上条。早くしなさいよ……くすぐったいよ」 「い、いいんだな?」 「今更聞かないでよ、馬鹿」 上条は、吹寄の脇の下に腕を差し伸べ、背中に添えた。 今の体勢から吸いやすいのは、どちらかというと右の乳房。 吹寄をベッドに押し倒さないように支えながら、そっと、上条は吹寄の乳首に舌を触れさせた。 64 :VIPにかわりましてNIPPERがお送りします [sage]:2011/07/16(土) 23 32 39.87 ID OD6Ol/Xj0 下乳のラインが上条の好みだった なんでそんな冷静なんだよwwww 65 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 23 37 11.22 ID gKHRPC68o 「んっ……!」 ぬるり、とした感触に吹寄は思わず声を上げた。 そして自分の体が引き起こしたりアクションが恥ずかしくて、息が止まりそうになった。 だって、今のはまるで。感じてしまったみたいだ。 息の震えを気取られたりこれ以上の声を聞かれたくなくて、吹寄は手を自分の口元に当てて耐えた。 上条はそんな吹寄の反応はお構い無しに、人生で初の、女の子のおっぱいの感触に夢中になっていた。 吸い付いた唇全体をやわやわと押し返す、豊かな胸の感触。口の中で、舌に転がされて踊る乳首。 舌と唇の触覚で感じる全てが、何もかも印象深い。手でも、上条は触れたくなった。 左の乳房に、ほとんど無意識に手を伸ばした。 「あっ、か、上条? ちょ、ちょっと……」 吹寄はその行為に戸惑った。 だって、いまこの行為に及んでいるのは、母乳を上条に飲んでもらうためだ。 手で触られるのは、ある意味約束と違う。何より恥ずかしい。 「手で触るなんて、聞いてないわよ」 「……え?」 「え、じゃない! もう、なんでそんな気の抜けた顔なのよ。 吸ってはいいって言ったけど、勝手に触らないで」 「あ! わ、悪い」 怒られて、上条はなんだか悲しくなった。 いや、そりゃ勿論怒られても仕方ないと思うし、吹寄の言いたいことは分からないでもないのだが、 女の子の胸を吸っていると、充足感というか、なんだか変に落ち着いた気持ちになるのだった。 「そ、それで。味は?」 「味……?」 「ちょっと上条、ぼけっとしないでよ! 味は……母乳の味はどうかって、聞いているの」 だって、大事なことだから聞かないとしょうがない。 だが自分から上条にそれを尋ねるのは、酷く恥ずかしかった。顔が火照って仕方ない。 一方上条は、すっかり触感だけで夢中になっていたが、肝心なのは母乳の味見だったのを思い出した。 しかし、そう言われて上条は戸惑った。 だって、自分はもう乳首に吸い付いて舐め転がしたのに、母乳の味なんてほとんどしていない。 吹寄の肌の味というか、薄い塩味の印象しか無かった。 「な、なあ」 「何?」 「どうやって吸えば、母乳って出てくるんだ?」 「え?」 「今みたいに、舌で舐めても唇で吸っても、あんまり出ないんだけど」 「そ、そう……ごめん。あたしもわからないの」 「そっか。じゃあ、試行錯誤してみる。痛かったら、言ってくれ」 「うん……なるべく痛いのはやめてね」 「気をつける。歯を立てたら、まずいよな?」 「ちょ、ちょっとそれは……。怖いわよ」 確かに、デリケートなところを噛まれるというのは怖いだろう。 でもなんとなく、本能がそう言う風にすべきだといっているような気がするのだ。 上条は、自分の唇で乳首を包むようにし、その上から、歯を立てた。 これなら痛いのは上条の唇だから、吹寄に負担は掛からない。 67 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/16(土) 23 53 10.09 ID gKHRPC68o 「んっ……あ」 吹寄は、さっきより強い刺激に、思わずまた声を漏らした。 その反応に、どうしても困惑してしまう。 だって自分の意志と無関係に声が出るなんて、そんな経験、したことない。 「声、可愛いな」 「!! ば、馬鹿! 聞かないでよ」 「聞こえるんだから仕方ないだろ。あと、可愛いのも仕方ない」 「上条……もう、恥ずかしいよ」 噛む強さや角度を変えながら、上条は吹寄の乳首をあれこれとしごいて見る。 だが、なんとなく母乳が舌に乗ったかな、という感じはあっても、 味わえるだけの量が出ることは無かった。 なんで出ないんだ? 咥え方が悪いのか。出にくいんなら、吹寄が困る理由は無いんだし。 そう自問しながら、舌で突付いてみたりとアレンジを加えていく。 ぴくん、と時折震える吹寄のリアクションが可愛い。正直、母乳が出なくても充分上条は楽しかった。 そしてしばらくして、ふと気づいた。もっと、胸を深く吸うようにしたほうが、いい気がする。 乳首はいわば蛇口だろう。母乳を蓄えているのはたわわな果実の方だ。 そちらのほうから吸い上げるようにしたほうがいい気がする。 上条は、口を大きく開いた。そして、乳輪全体を口の中に収めるくらいたっぷり吸い付いて、 乳房のほうから母乳を押し出すように、甘噛みした。 「ん!」 「か、上条? その……出たの?」 「んー」 吸い付いたまま、上条が鼻声で返事をした。その振動が自分の体にも伝わって、吹寄はむずがゆかった。 口の中の、いくつかの方向に母乳が広がっているのを上条は実感していた。 あったかい。それが一番の感想だった。 口の中に、結構な勢いで広がっていく。舌の上で転がすと、さらさらとした触感の液体だが、たしかに牛乳に近い印象だった。 充分にたまったところで、コクリと飲み干す。 立ち上がった香気と味わいを確かめて、上条はその味を評価した。 「ど、どう? 変じゃない……?」 「んまい」 不安になって、吹寄は上条につい問いかけた。普通に美味しくないことは充分にあるだろうし、 もし病気か何かなら、変な味がするかもしれなかったから。 だが、上条の返事は、それだけだった。乳首から、口を離すこともしなかった。 もっと知りたくて、吹寄は上条のほうを見る。至近距離で、目が合った。自分の乳房に吸い付く上条と。 「……っ!! 馬鹿! こっち見るな!」 「ふ、ぇ? んんん、んぶ、ふ、ふきよせ、息が」 吹寄は、上条の表情が見たくなくて、その頭を抱いて思いっきり自分の胸元に抱き寄せた。 ――――乳房を抱いて溺死しろ、そう言わんばかりの振る舞いだった。 71 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/17(日) 00 55 09.46 ID F2SCVadmo 慌てて上条は、吹寄の背中をさする。もちろんギブアップの意味でもあるし、落ち着かせる意味もあった。 しばらくすると吹寄は暴れるのを止め、大人しくなった。 時折ちゅくりと上条の口元で鳴る水音だけが、二人の間に響き渡る。 「その……味、変じゃないよね」 「ん」 上条は、一旦乳首から口を離して、口の中に広がった母乳を嚥下した。 その味わいを振り返って、ほう、とため息をついた。 「吹寄、率直に言うと」 「う、うん」 「マジで美味い」 「えっ……?」 唇に残ったそれを舌で舐めとる上条の満足そうな顔を見て、吹寄はかあっと顔が赤くなったのを自覚した。 だって、まだ高校生の自分の母乳を、数分前に彼氏になった男に吸わせて、しかも満足そうに美味いといわれたら。 こんな時、どういう顔をしたらいいのか判らない。 「牛乳と比較すると、怒るかもしれないけどさ。一応思ったとおりのことを伝えておくと、 やっぱりあれが一番違い味だと思う。ただ、牛乳よりは薄いな。んでもって、結構甘みがあるんだよ 正直、人肌にあっためた飲み物として考えたら、牛乳より美味いくらいの味だと思う」 「あ……う」 「まあ人の好みってのはいろいろあるだろうから一般論はわかんねーけどさ、俺、結構薄味好きだし。 吹寄の、美味いと思う。少なくともこれから病気っぽい感じするかって聞かれたら、はっきりないって言うレベルだ」 「……」 吹寄は、どうして言いか判らずに、顔を下に向けるしかなかった。 だって、なんで。 ほっとしたというのは勿論ある。普通の味なら、それに越したことは無いわけだし。 だけど、なんで。 自分は、美味しかったといわれて、嬉しく思っていたりするのだろうか。 「吹寄……?」 「えっ?」 「いや、一応大丈夫そうだって、伝えたつもりなんだけど」 「そ、そうね。ありがと、ちょっと安心した」 「おう。それで、その。これどんくらい吸えばいい?」 「え?」 なんというか名残惜しそうな目で、上条が右の乳房を見ていた。 「吸ってたほうは結構勢い落ちてきた。多分、吸えばまだ出るけど、普通にしてれば勝手に出ることはない気がする。 だから、もし吹寄がこれ以上嫌なら、もうこっちは吸わいで大丈夫だと思う」 「そ、そう」 「とりあえず、もうかたっぽ、吸うな?」 「う、うん」 72 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/17(日) 00 56 01.00 ID F2SCVadmo 美味しいと言われたらだろうか。なぜか、上条が可愛く見えた。 もう一度、上条が背中に手を回してきて、今度は左の乳首に吸い付いた。 二度目は手馴れたもので、あっという間に上手に吸い付いて、吹寄の母乳を吸いだした。 その頭を抱き寄せて、撫でてやる。 「ん……」 上条が顔をほころばせたのがわかった。その無防備なリアクションに、なんだか吹寄も張っていた肩肘を緩めた。 ちゅ、ちゅ、と母乳を吸う音と、こくりと飲み込む音がする。 上条が背中を撫で始めた。吹寄は、自分と上条の間にあった警戒感が急激に薄れて、自然に触れ合えるようになったのに気づいた。 そして、上条が吸うのを止めるまでの数分間、吹寄はそっと上条の髪を撫で続けた。 「ぷは。こっちも、だいぶ減ってきた」 「そう。……どれくらい、飲んだの?」 「え? 両方あわせて、多分コップに軽く二杯はあったと思う」 「そんなに? 飽きないんだ」 「あ、ああ。何でかわかんないけど、全然平気だった。 まあ、小さい子はこれ食事にするわけだし、むしろ普通なんじゃないか?」 「そんなことはないと思うけど……」 ほう、と上条がため息をついた。 それでようやく、上条が同級生だったことを、吹寄は思い出した。 同年代の男の子に胸をさらして、まったく羞恥を感じていなかった自分を叱咤する。 「と、とにかくもう終わったのよね?」 「え、っと。多分もう下着つけても大丈夫だとは思うけど、まだ出るのは出る。 もうちょっと、吸ったほうがいいか?」 「い、いいわよ! これで病院までもつならそれで。上条、そ、そのありがとう。悪いけどあっち向いてて!」 「え? あ、ああ」 上条が露骨に残念そうな顔をしたのが、恥ずかしかった。 まだ胸を吸っていたときの心地のままなのだろうか。 一足先に我に帰った吹寄は、ぼんやりしている上条の様子はついさっきまでの自分の様子そのものなのだと自覚して、 ひたすら恥ずかしくなった。 上条が視線を外したのを確認して、吹寄はブラを拾い上げる。 「吹寄」 「な、何?」 「そこ、一応洗ったほうがいいだろ。俺の唾がついたまんまだ」 「あ、そうね……」 「ちょっと座ってろ」 「えっ?」 上条が、手馴れた手つきでティッシュを探し当て、水を含ませた。 そして新しいティッシュと消毒液も一緒に持って、ベッドサイドに戻ってくる。 「ありがと」 「ほら、手、どけろよ」 「いいわよ、自分でやるから」 「いや、汚したの俺だし、やるって」 「あっ……」 上条が、優しく吹寄の手を払って、水で濡らしたティッシュをそっと乳首にあてがった。 73 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/17(日) 00 57 43.89 ID F2SCVadmo 「んっ! あ、か、上条これは」 「あ、人にやられるとくすぐったいか?」 「そ、そう! だから自分でやるわよ」 「分かった。じゃあ、これ」 吹寄は無言でティッシュを自分の乳房にあてがって、無造作に拭いた。 だって優しい拭き方なんてすると、また声が出そうだったから。 そして続けて消毒液をティッシュにつけようとする上条を、吹寄は遮った。 「そんなのいいわよ」 「え? いやでも」 「別にいいでしょ……彼氏に吸われて消毒液って、どんな潔癖症の女なのよ」 「お、おう。そう思ってもらえるのは嬉しいけど」 なにせ付き合って10分のカップルだ。それくらいはされても、上条は文句を言う気はなかった。 だが吹寄は、それを必要だとは思わなかった。 本心として、もう、上条の唾液で体が濡れてしまったことを気持ち悪く思う気持ちがなくなっていたから。 色々順序がおかしいので、吹寄もなんだか自分の心情が良く分からなかった。 「吹寄、ブラ、つけるのか?」 「あ、ニップレスだけ、置いてある下着から借りようかなって」 「ニップレス?」 「貴様はそんなこと知らなくてもいいわよ。ほら、下着入れの引き出しあけるから、目を逸らしなさい」 「お、おう」 そこにあるのは吹寄以外の女の子もつける可能性のある下着だ。吹寄の以上に、見るべきではないだろう。 くるりと背を向ける。 吹寄はそれを見届けて、引き出しを開けた。サイズの近い適当な下着を摘み上げて、ニップレスだけを取り出した。 そして自分のブラの濡れたヤツを外し、付け替える。これでずいぶんとましだろう。 自分で胸を触っても、母乳が漏れることはもうなかった。 さっと、慣れた手つきでブラを肩に通す。ぱちんとホックを留めた。 「ん、いいわよ上条」 「おう。……それがニップレスって言うのか?」 「ちょ、ちょっと。見ないでよ」 「上条さんはそれよりもっとすごいものをさっき見たんですが」 「それとこれとは別!」 「ごめん」 吹寄は、床に置いた鞄からハンカチを取り出し、ニップレスを包んだ。 そして鞄の置くに隠し、ひとため息ついた。 「吹寄」 「え?」 「ブラひも、ねじれてるぞ」 「あ、ちょ、ちょっと」 上条が、そんなことを言って吹寄の背後に回った。 そして背中に触れて、それを直してくれた。 「ありがと……って言うべきなのかしら」 「吹寄」 「あっ! か、上条! ちょっと」 74 :nubewo ◆sQkYhVdKvM [saga]:2011/07/17(日) 00 59 04.61 ID F2SCVadmo そのまま、背後から抱きしめられた。 「好きだ、吹寄」 「そ、そんなこと急に言わないでよ」 「急じゃないだろ」 「急でしょうが。こんな、背中からいきなりなんて」 「じゃあ前からならいいんだな?」 「えっ?」 肩を抱いた上条が、吹寄の前に回った。 ぎゅっと、胸の中に抱きしめられる。 母乳を吸わせたときとは逆の構図だった。 「吹寄」 「ん……」 「好きだ」 「うん……。あたしも、好きだよ」 「マジで?」 「なんで嘘つくのよ」 「嬉しい。スゲー嬉しい」 「……上条の馬鹿」 「なんで馬鹿なんだ?」 「いろいろ、順番が変でしょうが」 吹寄が、上条を見上げた。それでようやく上条も悟った。 あんなことをしておきながら、キスがまだだったことに。 「もしかして、それずっと引っかかってたか?」 「ん……まあ、ね。でもあたしが頼んだことだったし」 「ごめんな」 「いいわよ」 「ごめん」 「そんな謝らないでいいって――あっ!」 上条は、吹寄の頬に手を添えて、そっとその唇を持ち上げた。 母乳から始まるラブストーリーというのを上条はついぞ聞いたことが無いが、 なんというか、それはそれで劇的な効果をもたらすものだというのを実感していた。 吹寄が可愛くて、いとおしくて、自分のものにしたくて、そういう気持ちがガンガン湧いてくるのだった。 付き合った時間の短さを余裕で補えるくらい、吹寄に惚れていた。 「ちょっと遅れちまったけど、ファーストキス、しようぜ」 「――――うん」 吹寄が、上条の制服の背中のたるみをきゅっと握り目を瞑った。 鼻と鼻がぶつからないように僅かに顔を傾けて、上条も目を瞑った。 「ん――」 鼻に掛かった甘い声で、吹寄が気持ちを表してくれた。 ちゅ、と唇と唇を触れ合わせる。それだけで幸せが何倍にも膨れ上がった。 普通の順番とはちょっと変わったことになりながら、 上条と吹寄は二人っきりの保健室で、恋人同士のキスを交わした。 戻る 次へ
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上条 当麻(かみじょう とうま) 『とある魔術の禁書目録』の主人公。 『とある科学の超電磁砲』では話によっては準主役として活躍する。 声優は「阿部 敦」 プロフィール ・性別、男性 ・年齢15歳 ・身長168cm ・出身地、神奈川県 「家族構成」 ・父-上条 刀夜 ・母-上条 詩菜 ・サイド、科学サイド ・所属、学園都市第7学区のとある高校 1年7組 ・職業、高校生 ・住居、第7学区 とある高校の男子学生寮 7階の一室。 ・レベル、無能力者(レベル0) ・能力「幻想殺し(イマジンブレイカー)」 ・容姿 ツンツンした短めの黒髪をしており、それ以外にはこれと言って特徴が無い平凡な容姿。 ちなみに考え込む時の表情は母親似らしい。 この髪型は天然ではなく整髪料を使っているらしいが、それほど身なりに気を使ってはいない。 体格は中肉中背だがやや筋肉質。 服装は基本的に学生服で、夏は半袖の制服の下にオレンジ色のTシャツを着ており、冬は詰襟の上着のボタンを開け下に赤系のシャツを着こんでいる。 靴は白地に赤ラインのプーマのスニーカーを愛用している。 交友関係 クラスメイトからは土御門元春、青髪ピアスと一まとめに「三バカ(デルタフォース)」扱いされている。 また彼はとてもおモテになり、そこらでフラグを乱立させている。 何かするたびに新たなフラグを立てる一級フラグ建築士。 そんな素敵イベントの該当者がインデックスの全裸を真正面から目撃。 御坂美琴にひざ枕してもらったり、御坂妹にパンチラやパイタッチなど。 存在自体がサービスシーンのような聖人先輩(神裂火織)の全裸を拝んでみたり、氷華のお着替え中や、オリアナ姉さんの胸に突っ込んだり、オルソラの全裸を目撃したり、五和の胸に突っ込んだり、吹寄さんのブラ&着替えを見られるなど、ほとんどのヒロインが彼にサービスシーンを提供している(うらやましいぞーーっ!!) ・ステイル=マグヌス 『首輪』破壊後は上条当麻の知り合いという立場を利用されて、たびたび学園都市などで対魔術師の対応にあたっている。 当麻とは犬猿の仲に近い。 ・カエル医者 上条当麻が何らかの事件で大怪我を負うたびに治療をし、お世話になっている人物。 頻繁に入院するので彼から「君はよっぽどこの病室が好きみたいだね」言われる。 設定 学園都市に住む少年。 どこにでもいるような平凡な高校生だが、その右手には生まれつき『幻想殺し(イマジンブレイカー)』という力が宿っている。 詳細は幻想殺し(イマジンブレイカー)にて。 作中で多用される自身の能力名に似た台詞「その幻想をぶち殺す」は、ゲーム版でも必殺技の掛け声となっている。 (ファンからは「そげぶ」と略されており『とある魔術の禁書目録たん4』でもこの略称が使われている) ちなみに打ち消せるのはあくまで「異能の力」だけであり、異能の力がない物理的な力に対しては何の効力も持たない。 実際、神裂火織、土御門元春、後方のアックアといった魔術に頼らない戦闘能力を持つ相手にはフルボッコにされている。 学園都市の能力検査機器「身体検査(システムスキャン)」では幻想殺しを測定出来ない為『何の能力も有していない』と判断され、超能力者としては最低レベルである「無能力者(レベル0)」の烙印を押されている。 幼少期には陰湿ないじめに遭い大人達からも疫病神と忌避され、命に関わるような出来事や見世物扱いされる事もあった。 それを危惧した父、刀夜により「迷信を信じない科学の街」である学園都市に送られた。 現在でも不幸ではあるが、むしろ不幸の避雷針として級友達から重宝されたり「不幸だからこそ、事件に巻き込まれてそこで苦しむ人を助ける機会に恵まれる」として自分の誇りとしている。 頭脳は進学レベルとしては凡庸な学校に通っており、そこでも赤点の常連となっていることからお世辞にも学力が高いとは言えないが、学園都市住民として平均的な科学知識は備えている。 とっさの際における判断力や機転には優れており、それまで全く知識のなかった魔術師に対しても戦う経験を積むに連れて相手の魔術を看破したり、工夫を凝らした戦術を編み出すに至っている。 自他共に認める不幸体質の持ち主。 自分の身をまったく省みない性格で満身創痍になりながらも敵に立ち向かう。 主人公らしく、科学サイドや魔術サイドの敵に幻想殺し(イマジンブレイカー)を宿した右手のみで立ち向かい、とある赤装束の魔道士や学園都市最強の能力者に殴り込みに行き勝利したり、イギリス清教の魔術師を止めに行ったり『神の右席』所属の聖人に立ち向かうなど、勇者のごとく奮闘する。 普段から路地裏でスキルアウトや能力者との戦いが絶えないこともあって、それなりに鍛えられた体つきをしており、大変喧嘩慣れしている。 敵と戦う際は、異常なタフネスでもって何度倒れても無尽蔵の体力を駆使して立ち上がり、敵の超能力または魔術を右手で打ち消し相手の戦意を奪いつつ、続けざまに戦意を挫く言葉の嵐(説教)を浴びせ、相手が怯んだ隙に右手から繰り出される拳だけでけで勝つという、科学と魔術が全く交差しない原始的な戦法を多用する。 以上のことから何かと無茶をやらかすため、大怪我が絶えず、各章のエピローグを病院のベッドの上で迎えるのは、インデックスの一件以降ほぼお約束のパターンと化している。 ただし忘れてはいけないのは彼自身、高校生というラインは作者的には死守されており「喧嘩慣れした不良が三人が相手なら即逃げる」というレベルの一般人なのである。 この辺は極最近の巻まで幾度と無く作者から示されている。 「相手によって強さと立ち位置が劇的に変わる主人公」と作者は定義しており、作品中の最大のバランスブレイカーであると言える。 当麻は劇中において強さのバロメータとは決して成り得ない、最大の不確定要素である。 戦力を異能に頼る相手には相性がいいが、鍛え上げた肉体で戦う相手などには滅法弱い。 宝島社によるこのライトノベルがすごい!2011年度「好きな男性キャラクター部門」において第1位を獲得した。 作中での行動 7月20日の夏休み初日、自宅のベランダに引っ掛かっていたインデックスと出会い、彼女をきっかけに魔術の存在を知り「必要悪の教会」の魔術師ステイル、神裂と彼女の処遇を巡る戦いを繰り広げ、インデックスの記憶消去の元凶であった「首輪」を破壊する(一巻の終盤) しかしインデックスを「首輪」から解放した際、彼女の「竜王の殺息」によって脳を負傷し記憶喪失になるが、インデックスの笑顔のために記憶喪失になったことを彼女には知らせず「今までの上条当麻」を演じることを決めた。 それ以降、彼女の同居人兼管理人、そして「首輪」の代わりとなる足枷の役目としてイギリス清教に協力している事や、自身の何らかの計画に利用しようとしているアレイスターの策略等から魔術サイドや学園都市の事件にも度々関わっていくようになる。 三沢塾の事件では「原石」の少女、姫神秋沙を救いだし、学園都市内で密かに行われていた御坂美琴のクローン「妹達」を利用した「絶対能力者進化実験」を阻止するため、学園都市最強の能力者、一方通行(アクセラレータ)に戦いを挑み激闘の末勝利する。 両親やインデックスと海に出かけた際に父、刀夜が自分に買ってきたおみやげが原因で偶然発動した大魔術「御使堕し」の解決に土御門と共に奔走。 8月31日には夏休みの宿題に追われる中で、アステカの魔術師エツァリ(海原光貴)やインデックスの魔道書を狙った闇咲逢魔と交戦し、9月1日の新学期初日には学園都市に侵入し、風斬やインデックスを狙ったシェリーと交戦した。 11巻、法の書事件では、ローマ正教から逃亡したシスター、オルソラを救出するため、単身で約250人のアニェーゼ部隊の元に乗り込み、インデックスらと協力してオルソラを救出する。 大覇星祭では「使徒十字」を使った学園都市侵攻を土御門やステイルと共に阻止し、イタリア・キオッジアでは「アドリア海の女王」の発動を阻止する。 しかし、これらローマ正教が起こした事件を幾度も阻止した事で「神の右席」から目を付けられてしまい、ローマ正教から抹殺指令が下される。 13巻(9月30日)で前方のヴェント襲撃されるも、何とか撃退する。 10月3日には、学園都市上層部の命令でスキルアウトから命を狙われた美琴の母親「御坂美鈴」を守るべく奮闘し、浜面仕上を撃破する。 14巻、世界各地で発生した科学サイドへの抗議デモを阻止すべく、土御門や五和と共にフランスのアビニョンに乗り込み、左方のテッラを撃破する。 左方のテッラとの会話を壊れた携帯(通話機能は壊れていない)で御坂美琴に話を聞かれ、記憶喪失のことを知られてしまう。 学園都市に戻りで平穏な生活を送っていたが、後方のアックアに強襲され、意識不明の重症を負うも、自分の為に戦い続ける仲間達のことを思い、満身創痍の状態ながらも戦場に復帰し、神裂や天草式と共闘しアックアを撃破する。 22巻、クーデター終結後、「神の右席」最後の一人右方のフィアンマが現れ右腕を切り落とされたが幻想殺しとは違うと思われる力で再生するもその力を本人の意志で退かせた。 そしてインデックスに自身の記憶喪失を告白「いつものとうまが帰ってきてくれたらなんでもいいよ」と言ってくれたインデックスに「必ず戻る」と誓い、暴走した大天使ミーシャ=クロイツェフと北極海で最後の戦いを繰り広げた。 その後は行方不明となるが、ロシアに潜伏していた魔術結社「明け色の陽射し」に救出される。 11月5日、学園都市に帰還し、たまたま出くわした「新入生」の一員、黒夜海鳥からフレメアの命を救い、その場にいた一方通行と浜面と合流し、インデックスとレイヴィニアの仲介のもと、魔術に関する情報を共有する。 11月10日、レイヴィニアらと共にハワイに向かい、魔術結社「グレムリン」と交戦し、構成員のサローニャ=A=イリヴィカを撃破する。 とある科学の超電磁砲 最初はサブキャラクターとして時折登場し、本編1巻での描写が美琴視点で描かれたり、1巻以前の美琴との邂逅や、虚空爆破(グラビトン)事件で人知れず窮地を救うなど、本編を補完する前日譚的な活躍が見られる。 本編3巻に当たる「絶対能力進化実験」編では、後半になるにつれて本編と同程度の頻度で登場し、一方通行戦においては殆ど主人公に近い活躍を果たしている。 ちなみにアニメ版では都市伝説の1つとして「幻想殺し」の存在が語られている。 アニメ版第19話で登場した際には、記憶を失ったことを示唆する描写があることから「竜王の殺息」によって脳を負傷し記憶喪失になった後だと思われる。
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当麻 ∧ / 〃 レ' ///,.イィ _ _ ト\| V / / / ノ \ヽ '´ ̄二ヽ、 ,.=ミ、 ≦ニ=- 、 _/ /_/_/  ̄二ア´ _> i ハ∧「fミ、 `ー‐彡' _フ iハレ'´ 示ミハ` | iハ _∠イ  ̄/ / 人 ∧!ヽ,._弋ソ Vハナナミ、 `ー<_ ∠ / ,公从 、 '´ 心jハ 下、 ̄ ´ ̄/ イ{ r' r'ヽ. ゞ'/ ヽ | `ー ∠ イ \` _,.--、 `´,' ト、 ハ! /_,.イ 八 ヒ二 ヽ\ ノ | ヽ / / |\ ヽr' ,.イ トト、! /< ̄! >r、 _,.. <二}ム、 _,.イヽ._ V_,. --ァ' ´ _,.ィ仁彡' ノ ハ / ト、/ / / / / //--、 __{ {{ V /// /二/ ..┏─当麻―───────────────┓ /´ ∧ V /// /ー―/ .│ だから俺は――その幻想を、ぶち殺す! i | / /// ////´_ . .┗───────────────────┛ | | /イ/ //// ̄ ̄´ i | _,.-┴  ̄ / / /// ____ ! |-‐  ̄// / / .//// ´ ` | |┏─ システム─────────────────────────────┓┣────────────────────────────────── 当麻 ♂ 『拳闘士』<?> 『騎士』<?> <スキル> 『攻撃』 『回避』 『防御』 『フットワーク』 『シールドチャージ』 『??』 <ユニーク> 『九鬼流 焔螺子』…???? 『????』…???? 【九鬼流】と【サンライトハート】の弟子 2人から引き継いだ力と意思で、冒険者として活躍する 『天然ボケ』も師匠譲りか?┗──────────────────────────────────┛ 戻る